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#4 デザインとアートの違い

こんにちは。sacaikumiです。

この「考える」マガジンは、私が関心を持ったトピックを幅広いテーマで自由に書いていく予定で作りました。今回は、私の本職であるデザインについてお話ししたいと思います。

実は、美術大学を出ていない私が違和感なくデザイナーを名乗れるようになるまでにはかなり長い年月を要しました。だいたい8年くらい悩み続けて、自分の中でのデザインの定義が完成したことが大きな転機となりました。

これから少しずつ、私が考えるデザインの役割についても記事にしていけたらと思っています。

今回はタイトルの通り、アートとデザインの違いについての考察です。アートとデザイン、このふたつの言葉は近しいシチュエーションで使用される場合が多いと感じます。そしてどちらも美術系の学校で学ぶことが多い分野です。

私自身、長年このふたつの違いをうまく言語化出来ていませんでした。

新米デザイナーの頃、当時勤めていた会社の上司から「デザイナーはアーティストじゃないから気を付けてね」と注意されたことが、私がデザインとアートの違いについて考え始めるきっかけとなりました。

ですが、デザインを学問として学ぶ前に仕事として始めてロジックをひたすら詰め込もうとしていた当時の私には、この助言の本当の意味は飲み込めていませんでした。なんとなく「お客さんのトーン&マナーが自分が作りたい物より優先される世界」とだけ考えることにしました。

当時の私にはその解釈でも必要十分に仕事が成り立ちましたが、年数を重ねていくうちにもっと深い理解が必要になっていきました。

例えば「アートディレクター」という仕事。この肩書を持っている世の中の人たちの仕事のやり方・アウトプットは千差万別。この職種に惹かれても、目指す道筋が明確になっていないことに何年も悩みました。デザインの総司令官のような方も、アーティストとしての作品をお客さんに沿って落とし込んでいく方もいらっしゃるからです。

だから、私がデザイナーとして自分の芯を持つにあたって、まず始めに定義しなければならなかったのが「アートとデザインの違い」でした。

そして現在では、デザインとアートは制作する目的が真逆だと考えています。私にとってのデザインとアートの違いのひとつは以下です。

デザインは見た人が余計なことを考えなくても理解出来るように施すもの。アートは見た人の感情や思考を動かすために作るもの。

もう少し詳しく説明します。

世の中の人工物のほとんど全てに施されているデザインは「機能的であること」「商材をしかるべき層に視覚的に届けられること」「説明がなくても使い方が感覚的にわかること」などの目的で施されています。

使う人に考えさせたら良いデザインとは言えない、と言われることが多いですよね。

悪い例ですが、セブン・イレブンのコーヒーマシンは数年前話題となりました。左側(Left)にレギュラーを表すRのボタンが、右側(Right)にラージを表すLのボタンがあったことで、ほとんどの店舗がカタカナで補足のラベルシールを貼ることになりました。これは「お客様が自分の考えないと使えないデザインだった」ことから、デザインの失敗といえるでしょう。

対するアートは、制作物と対峙することで普段考えることを忘れてしまう私たちの思考を呼び覚ましてくれる役割を持っていると考えます。「なんとなく惹かれる」からとただぼーっと絵の前に立っているだけでも、潜在的に頭は勝手に色んな出来事に思い巡らせてくれるものです。

例えば、この記事のカバーとして設定させていただいた写真は、私の最寄り駅にかかっていた小学生の絵のひとつです。多分、これはニワトリの絵だと思います。

私たちがもし今「ニワトリを描いてください!」と言われたら、どんな風に描くと思いますか?私だったら、何も考えず左向きに静止しているニワトリを描くと思います。

でも実際に目の前にニワトリを置いて絵を描き始めたとき、絶対にニワトリは静止しないですよね。置物だったらまた別の話ですが。

描いてる途中で元気に動き回るニワトリを観察して描いた時、このカバーの絵のようになるのが"見たまま"なんだろうと考えさせられました。私は元気に動き回る生き物の絵を紙の上に捉えようとする心を何年も忘れていたことを思い出させてくれました。

だから、私に考えと気付きをくれたこの絵は、アートということが出来るのです。子供の絵はアートだとよく聞きますが、私たちに沢山の気付きをくれるからなのかなと考えています。

アートとデザインの違いが私の中で明確になったことで、私は自分がデザイナーとしてすべき役割とその品質のボーダーラインを手に入れられたように思います。

デザインは毎回が挑戦で凄く楽しくて、未でもまだまだ成長と考察の余地が沢山あると感じられる職業です。だから飽きることなく8年も続いているのだと思います。

加えて最近はこの「考える」マガジンを通して、読んでくれた人と、何か考えるきっかけを共有していきたいと思うことも増えました。この言葉たちを、いつか視覚表現という形に昇華していくことも目標のひとつです。

そのために心も頭もどんどん柔らかくしていきたいです。

記事を読んでいただきありがとうございます。個人的な情報を含まない記事は全て無料で公開しているので、気に入って頂けたらサポートしてくれると大変励みになります:)