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230212 女ふたりヨーロッパ旅【vol.1 ローマ】


2023年2月1日〜10日のヨーロッパ旅行のことをここに残そうと思う。

実際の一日の終わりにはあまりにも忙しすぎて、そしてそれによって疲れすぎて、文字に起こすことが出来なかった。帰国してやっと一息ついた今、振り返ってnoteにしてみることとする。

ローマ3泊、バルセロナ2泊、パリ3泊。


まずはローマのこと。



2/2

一日目の夜にローマに着いたので、観光は二日目2/2(木)から始まった。

この日はフィレンツェを観光することになっていたので早朝4時に起きてItaloという特急に乗った。時差ボケなどする暇もなく駅を目指してまだ真っ暗なローマの道を歩くと、石畳の不安定さと目に入る慣れない言葉の並びに少しずつ異国の地に来たのだという実感が湧いてくる。特急で2時間ほど揺られている間、フリーWi-Fiの力を借りながら訪れる予定の美術館や鉄道のことを確認する。ネットが使えるというだけでどこか安心した。フリーWi-Fiありがとう。

ウッフィッツィ美術館やドゥオーモ、アカデミア美術館には、教科書で見た名作たちがあった。

ボッティチェリ「ヴィーナスの誕生」



これまでは机上の世界にあったはずのものがすぐ目の前にあって、自分が見上げているのだということ。手を伸ばせば触れてしまいそうなほど近くに、何年も何百年も前の人が命を削って描いたものがあるということ。

また、ヨーロッパの美術館に入ってまず感じたのは天井の高さとそこに描かれた絵の細かさ、丁寧さ、絵画の大きさ。空間の広さや作品の大きさは、実際にそこに行かなければ体感することはできない。ただ大きれば良いというものでもないが、大きいというだけで凄みを感じるのもまた事実である。

それぞれの作品については私の予備知識が赤ちゃんレベルなので多くは語れないが、そんな私でもいざ目の前にすると圧倒された。天窓から差し込む光に照らされたダビデ像のオーラには、生身の人間のそれを少し見た。

ミケランジェロ「ダビデ像」


ちなみに下調べではウッフィッツィ美術館は混雑するとのことだったが、朝一番だったのでゆっくりゆったり見ることが出来た。どこでもそうだとは思う思うが朝イチに行くのが吉。


フィレンツェの名所を観光したあとは、さらに特急に乗ってピサの斜塔へ。
これが大遅延オブ大遅延をしてくれたおかげで私たちは大汗をかいて斜塔に登ることになる。

不慣れな土地、不慣れな鉄道。
チケットの種類が分からず買い遅れ、一本後の列車に乗ることにしたが、特急という名に似つかわしくないゆっくり加減で不安になる。アナウンスのイタリア語が分からないので理由は不明だが、明らかに遅延している。郊外の自然を見て楽しむにはぴったりだが、斜塔の予約時間が迫っている私たちには焦りを加速させるだけである。向こうの駅に着いてからさらにバスに乗り継ぐ予定だったので調べ直したが、念のため候補にした複数のどのバスにも間に合わなそう。もうとりあえず乗って途中の停留所で降りて走るしかない。

やっとのことでピサセントラル駅に特急が到着し、バス乗り場を探す。Googleマップの案内に従っているのに全く見つからない。焦る。
結局近くにいた人に尋ね、バスに滑り込む。停留所で駆け降りてからの記憶はもうほぼ曖昧である。酸素が足りなかったらしい。

スパルタ学校でスパルタ教育を受け駅伝選手だった友人の後ろを必死について走る。元々長距離走が苦手な私にとって、あまりにも過酷な時間。もう足を止めてしまいたいが、斜塔の予約時間までは2分ほどしかない。チェックの前に荷物をクロークに預ける必要もあり、とにかく走るしかない。走り切るしかないのである。

息も絶え絶え、肩は上がり、額に汗を流しながら、なんとか斜塔へ。予約時間を1分過ぎてしまったが、受付のお姉さんに謝りながら予約コードを出すと、こちらの焦りとは裏腹に全然良いわよという顔で通してくれた。私たちが時間を気にする日本人らしさを発揮しすぎただけかもしれない。まあとにかく入れてくれるなら良かったと安心し、本来ならば足を踏み入れた瞬間にその斜めの床に感動すべき場所で、とりあえず休憩した。何よりもまず先に呼吸を整えなければとの一心であった。

何分かかったか分からないがやっと少し息が落ち着いてきたので斜塔を見学する。思っていたよりも傾いていた。階段を上がり、上方からイタリアの街を眺めることができた。しかし極度の高所恐怖症のため、正直感動どころではない。足はすくみ手のひらは汗ばんでいた。けれど逆に、走って疲れていたから恐怖感が少し薄れ、遠方は見ることができた。

ピサの斜塔


イタリアのシンボルの一つであるこの塔は、地盤の柔らかさによって南側が沈下しているらしい。本来は今よりも高い塔になるはずだったが、この不等沈下によって現在の高さに落ち着いたとのことである。私は割とビビりなので、このことを詳しく知るのが見学の後で良かったと思った。

さて、ここまで焦りと走りで力はほぼ尽きていたが、晴れ晴れとした夕景と斜塔の美しさはなんとも言い難い達成感をもたらしてくれた。あのとき足を止めなくて良かった。本当はもう少しピサの地にいたかったが特急の時間が決まっているので帰らなければならない。

またバスに乗りピサセントラル駅を目指すが、やはり海外のバスは難しい。そもそも乗る停留所が見つけられずあらゆる人に聞きまくり見つけることができた。しかしその後降りるべき駅名が聞き取れず困った困ったと思っていたら運転手さんが声をかけてくれ、乗り合わせたイケてるお姉さんが着いてきなと目線をくれた。一緒に降りて少し話しながら駅へ。正直時間が迫っていたので焦りながら、おしゃべりタイムを切り上げるのは惜しかったが友人の「Hurry up! Sorry! bye!」の勢いでお姉さんと別れ、ホームへと走る。こちらでは切符に打刻する必要があるが打刻機が見つからずチラチラと周りを見ながらホームを駆け抜けていると、視界の左端でまたイケてるおじさまがにこやかに前方を指差してくれた。打刻機はあっちにあるらしい。お礼の言葉を叫びながら走る。無事切符に打刻し列車へ飛び乗った。とにかく走り、とにかく人に助けられた。

帰りもItaloに乗りローマへ。フリーWi-Fiありがとう。Italoありがとう。

もうここからの記憶は途切れ途切れである。
早朝からフル稼働した二日目。
Googleマップの不明瞭さは現地の人に、特急の遅れは自分たちの足に。頼れるのは人の力だと実感しながらフィレンツェを大満喫した日であった。




2/3

ヨーロッパ旅行三日目、2/3(金)はローマ市内の観光。


ホテルでパンとコーヒーの朝ごはんを食べ、真実の口へ。混み合う前に入ったが、周りには日本含めアジア人の割合が多く感じた。あの口に手を突っ込むお馴染みのポーズで、なんともシュールな写真を撮った。


コロッセオはそこから歩いて行ける距離にある。

ローマは徒歩圏内に色々な歴史的名所が集まっていて、バスに乗っていても歩いていても突然目の前に現れる感じがした。古いものが古いまま残っていることの価値が、今を生きるイタリア人の生活とともにある。

円形闘技場であるコロッセオは今から約2000年も前に造られたのに、収容人数5万人という規模とその構造は、ローマの象徴として今もその力と不滅を表している。当時そこで行われていた娯楽の内容については思うところもあるが、今と比べて技術もない時代に人があれだけのものを作り上げたということに感動した。


コロッセオ



中を歩くとさまざまな史物が展示されているが、現代らしい鉄やガラスの展示枠と、紀元80年当時の素材とがバランスよく配置されているのが心地よかった。


午前の観光を終え、カルボナーラ発祥とされている有名店へ。
周囲のお客さんがほぼ日本人だったので、ここ渋谷かなと錯覚する感じは惜しかったが、観光客慣れした店員さんの振る舞いは不慣れな旅の前半にはちょうど良かったのかもしれない。味は美味しかった。カルボナーラ大好き。


午後はバチカンへ。
美術館と大聖堂は圧巻だった。

フィレンツェの時にも書いたが、やはり私は広い空間、高い天井が大好きである。日常ではあり得ない高さの天井に細かに描いてあるものを、ちょっと無理した首の角度で見上げるとき、自分には到底出来ないことを成し遂げた先人のエネルギーと執念と敬愛とを感じる。ただ目で見ているというよりは、自分の身体をそこに置いて深く息を吸うことで、同化しようとしているのかもしれない。

Wi-Fiがあるときに調べてスクショしておいた絵画の解説を、友人とお互いに読み合う。本来ならば旅行前にもっときちんと勉強しておきたかったがそこまでの余裕はなくバタバタと当日を迎えてしまったので、一夜漬けどころかカンニングである。しかし頭に全ての歴史を入れておくよりも、新鮮味を持ちながら目の前のものを隅々まで見ようと思えたのは良かった。アテネの学堂に描き込まれたラファエロともしっかり目を合わせておいた。

ラファエロ「アテネの学堂」
黒い帽子を被りこちらを見ているのがラファエロ。



夕方、サン・ピエトロ大聖堂を見学していると説教とパイプオルガンの音が聖堂内に響き始めた。キリスト教徒ではないがミッション系の大学に通う私たちは、大学での学びによってキリスト教の教えに触れた。物事、特に宗教などは、それをよく知らない時にはある種の恐れがつきまとう。けれど大学で教義を知り時に礼拝堂に行き、少しでも触れてきた私たちにとって、サン・ピエトロ大聖堂に響くパイプオルガンの音はとても神秘的で美しいものだった。中を歩きながら大学でのことを語り合った。これから進む道のこと、その道を選ぶにあたって影響した大学でのこと。この大学、この学部に来れて楽しかったと語り合う場所が、ここで良かったと思った。

外に出ると先ほどとは色が変わった空で、トーンの落ちたグラデーションの中に建つ聖堂を忘れまいとたくさん写真を撮った。


サン・ピエトロ大聖堂



明日の午前でローマ観光は終わり。名残惜しさを感じながら四日目に備えて眠りについた。




2/4

ローマ最終日。

早朝にホテルをチェックアウトし、本場のティラミスを食べに街へ出る。甘いものが大好きな私には至福の時間。甘いクリームとコーヒーの、なんと相性の良いことよ。早めのオープン時間に行ったけれど、現地の人も何組か来ていた。朝にカフェのカウンターでエスプレッソを飲むのが現地人流らしい。


トレヴィの泉に向かうと、また、街の中に突然現れる荘厳な造形物に驚く。私が見る非日常はここでは日常なのだ。

水があるところに人は集まると何かの講義で聞いたことがある。または街路のテラスがヨーロッパの特徴でもあるなど。講義で学んだことを現地で実感するのは、学生としての喜びである。特にフランスで強く感じたけれど、屋外のテラス席は街に賑わいをもたらす。公共空間のあり方はやはり国によって違う。

泉の近くで写真を撮っていると、後ろから拍手の音と喜ぶ声が聞こえた。振り返ると、どうやらカップルのプロポーズが成功したらしい。人生の節目、新たな幸せの始まり。赤の他人であってもそんなシーンに立ち会えるなど、こちらまで幸せな気分になった。

トレヴィの泉


スペイン広場に着く頃にはまだ周囲に人はおらず、あの階段を独り占めできた。ヨーロッパ旅行に来る前に観たい映画はいくつかあったが、時間がないこととNetflixの配信がないことでほとんど諦めてしまった。(「アメリ」だけ行きの機内で見た。またフランスに行くときには駅の写真機で撮るのが夢)

広場の近くで最後のジェラートを食べ、空港に向かう。寒い日に冷たいものを食べるのは動物としては間違っている気がするが、人間としては喜びなのでまあ良いだろう。

スペイン広場とジェラート



これにてイタリア・ローマの行程は終わり。

次の目的地、スペイン・バルセロナへ。

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