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小説感想

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#コーマック・マッカーシー

「社会に依拠せず、自分が世界とどう対峙するか」を語っているコーマック・マッカーシーの作品が大好きだ。

 黒原敏行がマッカーシーの作家性だけではなく、作品一冊ごとに話をしている。こ、これは贅沢すぎる。

 記事の終盤で黒原敏行がこう語っているように、マッカーシーの作品の特徴は、社会がほぼ機能していない、ゆえに自己がむき出しのまま世界と直で対峙する(せざるえない)ところにある。
 今の時代だと「自己を抑圧するもの」として捉えられることが多いけれど、社会は「脆弱な自己を守る鎧」でもある。
 共同体の内部

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コーマック・マッカーシーの文章を読むと、「物語において必要な情報への感覚」が変わる。

コーマック・マッカーシーの文章を読むと、「物語において必要な情報への感覚」が変わる。

 いま「ノー・カントリー・フォー・オールド・メン」(以下「ノーカントリー」)を読んでいる。
 めたくそ面白い。

 ハードボイルドのような余計なものを切り詰めた端的な文章が好きなので、マッカーシーの文章も好きだ。

「ノーカントリー」はマッカーシーの他の作品と比べても、「そこを削る」という感覚がなかった部分まで削られている。
「ここまで削るのか」と驚いた。

 例えば殺し屋のシガーが、ホテルで対立

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