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小説感想

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2023年10月の記事一覧

作者が作内人物の内心を理解していないことがあるのか?

作者が作内人物の内心を理解していないことがあるのか?

「作者が作内人物を理解していないこと」は自分はあると思っているが、「火山島」7巻でちょうどそういうことがありうるかどうかを考えさせられる例が出てきた。

 主人公・李芳根(イ・バングン)が幼馴染の柳達鉱(ユ・タルヒョン)の裏切りを確信して、船の上で弾劾する。
 二人が話しているところに、船員たちが乱入してきて、柳達鉱をリンチしてマストに吊り下げる。
 李芳根はリンチを止めようにも止められず、吊るさ

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「ヤンという機能」が「銀河英雄伝説」をこれほど長く愛される傑作にしている。

「ヤンという機能」が「銀河英雄伝説」をこれほど長く愛される傑作にしている。

 記事が読んでもらえているのをきっかけに、久しぶりに「銀英伝」のことを思い出した。
 前から自分が「ヤンをどう見ているか」を書きたいと思っていたので、いい機会なので書こうと思う。

*原作10巻まで及び他の田中芳樹の作品のネタバレが含まれます。

◆ヤンは「当事者としての選択とそれに伴う責任」を免除する機能。

 自分はヤンをキャラではなく「機能」として捉えている。
「銀河英雄伝説」の面白さと凄さ

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「重い問題を乗り越えようとする物語」について。

「重い問題を乗り越えようとする物語」について。

 前からちょくちょく書いているが、自分はカクヨムで美里さんというかたの作品が好きで、興味がありそうな話はフォローして読んでいる。
 先日、連載していた「青い夜」が完結した。

 この話は、この話単体としてみると(大変申し訳ないが)そこまで面白く感じなかった。
 ただ美里さんのこれまでの作品を読んできた自分には感動があった。
「話が前に進んだ!」と思ったのだ。

 美里さんの話は同じ元型から派生した

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ある作品を読むことで他の作品の理解が深まると、テンションが上がる。(「葬送のフリーレン」×「ノルウェイの森」)

ある作品を読むことで他の作品の理解が深まると、テンションが上がる。(「葬送のフリーレン」×「ノルウェイの森」)

「葬送のフリーレン」を読んでいて、「ノルウェイの森」の永沢のセリフを思い出した。

「君はよくわかってないようだけれど、人が誰かを理解するのはしかるべき時期が来たからであって、その誰かが相手に理解してほしいと望んだからではない」(「ノルウェイの森」(下)P116)

 このシーンの永沢は終始、邪悪と言っていい残酷さをハツミに向けている。このセリフはその悪意の極めつけと言っていい。

 主人公のワタ

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