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梅の木をエッチングで描く。drawとpaintの違い。

 個展を開催する方向が見えてきたので、やってきたドローイングを元に進んでみることにしました。
 自分が扱う素材の中で、四半世紀近く触ってきた銅版画という技法へドローイングの線を広げてみます。

 屋外に出て、ここ数年描いている梅の木を改めて銅版に描いてみました。一旦試しにマジックで描いてみてから腐食。
 TP.1はこの記事に。TP.とはTrial Proof(試し刷り)の意味です。

そこから加筆、というよりも前日の線に次の日の線を重ねていく感覚で描く。

 エッチング(腐食銅版画)で線を引いていると絵の具との違いがよく分かります。
 以前は、一度刻まれた自分の線を完全に消すことができないことに不快感を感じながら制作を行なっていました。「理想の自分の姿を、過去の自分の行いは無かったかのように見せたい」という願望があったのかもしれません。
 「線描」は過去に引いた線を消すことは出来ません。対して「塗る」という行為には最終的に見えている面だけを見てほしい、という作者の欲求があります。 
 paint的な美学でdrawするとチグハグな事になり、そのギャップが作者に抵抗感を抱かせたのかもしれません。

TP.2
過去の線と線が互いに重なり合う。
TP.1〜3

 銅版画はTP.があるので行為の足取りが痕跡として視覚的にも見せられます。

手漉きの古い雁皮紙に雁皮刷り。枯れた色の紙の表情が美しい。
インクはこの紙に合わせ、真っ黒ではなくややグレーにしています。

 次は一切の下絵無しで、全くのノープランで銅版画をやってみようと思いました。

 続く

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