2022年の東北ツーリングを振り返る⑩
4日目:2022年8月20日(土)
過去のレポートで書いたとおり、この旅ではすでに以下のトラブルに見舞われています。
ドライブレコーダーの後部カメラのステーが折れる
財布が雨でずぶ濡れになり、紙幣が水没状態に
田沢湖キャンプ場では、3回目のトラブルが発生しました。
そのトラブルとは…。
もったいつけておきながらしょーもない話なのですが、なんとジーンズの縫い目がほつれて穴が空きました。
有名ブランドのジーンズならこんなことはないのでしょうけど、僕が履いていたのは、まぁ何というか、安いものだったので…。
右腿のあたりの縫い糸が切れ、ちょうど「下着がギリギリ見えそう」なあたりに穴が空いてしまったのです。
これがもしスネのあたりだったら「まぁいいや」となってたと思いますが、下着の近くというのはさすがにマズい(羞恥心ではなく、周囲の人に不快感を与える意味で)。このままジワジワと穴が拡大していくと、確実に見えてしまいます。
ということで、コンビニでソーイングセットを購入し、安全ピンで応急処置をしました。
ひとまずこれで下着が見えてしまう事態は免れたので、旅を続けられます。いやはや、今回の旅では実にいろんなことが起こるものです…。
4日目は、東北自動車道を南下する予定。
とうとう旅路は「帰途」のフェーズに移り、この日は盛岡インターから福島西インターまで走ります。
距離としては約250kmほどなので、「1日目のイッキ走りに比べれば余裕」と言いたいところですが、とはいえ250kmとなるとそれなりの覚悟が必要。僕は初日と同じように、インターの手前でアクセルグリップにスロットルアシストを装着しました。
そして盛岡インターのゲートをくぐるとき、「それじゃあまた。いつか」と小さくつぶやいて、東北道を南下するルートをたどり始めました。
4日目のツーリングスポットは、福島県の「磐梯吾妻スカイライン」。
福島県を走るのなら必ず押さえておきたい絶景ロードです。
そもそもなぜ、4日目のスポットとしてここを選んだのか。
正直なところ、これには大きな理由があったわけではありませんでした。
岩手県から神奈川県まで一気に走り切るのはしんどいので、どこかで1泊したい。となると、福島あたりかなぁ…という感じでの選択だったのですが、磐梯吾妻スカイラインを走っていくと、この選択は大正解だったと思うばかり。
浄土平周辺の荒涼とした風景は、まるで別世界に来たかのような不思議な感動があるし、何よりワインディングロードが楽しいのです。
天気はあまり「良い」とは言えない日でしたが、浄土平の駐車場にはツーリングライダーの姿もチラホラありました。
本日の宿は、二本松市にある「あだたら高原野営場」。ありがたいことに無料のキャンプ場です。
4泊5日の旅の、4泊目。
言うまでもなく「この旅の最後の夜」です。
最後の夜は何か特別なものにしようかとも思ったのですが、買い出しをしているときにやっぱり「持ち帰るゴミ」が気になってしまい、いつもどおりのレトルトカレーにしてしまいました。
今回の旅では結局、大きなゴミが出ないレトルト食品ばっかり食べていたので少々食傷ぎみでしたが、なんたって旅の空の下。知らない景色を見ながらのメシは、何を食べてもうまいのです。
そして最後の晩飯を食べ終え、テントの中に入り「さて、寝るか」という状況になったとき…。ジーンズを脱ぐと「そういや、穴が空いたところ大丈夫かな」というのが気になりました。
安全ピンで留めたので穴が拡大するような事態にはなっておらず、これなら明日の高速道路走行も大丈夫でしょう。しかし…。
とくにやることもなかったこともあって、「せっかくソーイングセットを買ったんだから、縫ってみるか」という気がしてきました。
ジーンズを裏返して、ほつれた部分だけをまっすぐに縫うだけなら、ソーイングセットの針でもできそう。恥ずかしながら縫い物なんてめったにやらないので腕前はいっさい自信がありませんが、ジーンズの縫い目がガタガタになっていたところで、誰も気にはしないでしょう。
針に糸を通してからは、いろいろやり方を忘れていたため、スマホで調べながらの縫い物です。
「あれ、玉止めってどうやるんだっけ…」
などと、スマホの画面を見ながらたどたどしく針を動かします。
そういえば、村上春樹の小説に『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』という作品があります。
この中で主人公は、「最後の1日」にどういうわけかコインランドリーで洗濯をしなくてはならないシーンがあるのですが、それを思い出しました。
旅の最後の夜に、ジーンズを縫いながら過ごす。
なんだか妙で、おかしくて、そして忘れられない時間になりました。
(⑪へ続く)
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