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王位継承──ヨーロッパで何が議論されたのか

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ヨーロッパでは、20世紀後半から王位継承法が変わり、女王容認、絶対的長子相続への変更が進みました。これらの動きに呼応して、日本でも女性天皇容認、女系継承容認論が唱えられていますが…
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#イギリス王室

参考にならないヨーロッパの「女帝論議」──女王・女系継承容認の前提が異なる(「神社新報」平成18年12月18日号から)

参考にならないヨーロッパの「女帝論議」──女王・女系継承容認の前提が異なる(「神社新報」平成18年12月18日号から)

 スペイン王室は(平成18年)11月末、レティシア王太子妃が来春に出産する予定の第2子が「女子である」と発表しました。もし男子なら、「男子優先」を定める憲法の規定により、第1子のレオノール王女の王位継承権を「飛び越す」ことになるため、懐妊発表後から女帝論議が白熱化していた。そこで論議の加熱を防ぐため、誕生前の性別発表に踏み切った、と伝えられます。

 新聞報道によると、世界中で女帝容認論議が起きて

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パース協定──男子優先の王位継承を改めることに合意(2024年4月21日)

パース協定──男子優先の王位継承を改めることに合意(2024年4月21日)

国会図書館の河野太朗・主任調査員によれば、イギリスでは労働党のブレア政権以後、男女平等の王位継承を実現する法案が議員立法で、数度にわたり提出されたが、ブレア政権は改革を支持しなかった。実益が乏しいという判断からだった。

しかし、次のブラウン政権(労働党)になると、改革に必要な英連邦諸国との協議を開始することに積極的気運が生まれた。さらに、2011年4月にウイリアム王子が結婚すると、王位継承への関

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キャメロン首相の書簡──最高位の公職で男性優位は「異常」(2024年4月20日)

キャメロン首相の書簡──最高位の公職で男性優位は「異常」(2024年4月20日)

イギリスの2013年王位継承法は、ジェンダーによらない王位継承を定めている。以前は男子優先だったが、絶対的長子優先に変わった。

ルール変更の直接的契機となったのは、国会図書館調査及び立法考査局の主任調査員・河野太朗氏によると、デーヴィッド・キャメロン首相(保守党)が、英連邦諸国首脳に王位継承関係の法規範の変更を提案する書簡を、2011年9月末に送付したことだった。〈https://dl.ndl.

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2013年イギリス王位継承法を読む──国会図書館・河島太朗調査員の翻訳(2024年4月19日)

2013年イギリス王位継承法を読む──国会図書館・河島太朗調査員の翻訳(2024年4月19日)

イギリスは、従来、男子優先としてきた王位継承のルールを、性別によらない長子継承に改めた。すなわち、2013年王位継承法である。

イギリスは誤った選択をしたのではないかと私は思うのだが、結論をいう前に、まずは2013年王位継承法を読んでみたい。

幸い、国会図書館の主任調査官・河島太朗氏による翻訳が公開されているので、ここに紹介する。河島氏には心から感謝する。なお原文はイギリス政府のサイト〈leg

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大変革のときを迎えたイギリス王室──男女平等継承どころではない(2011年10月15日)

大変革のときを迎えたイギリス王室──男女平等継承どころではない(2011年10月15日)

 報道によると、イギリスのキャメロン首相は、イギリスの王位継承の制度を男子優先から長子優先に変更する手続きに着手したと伝えられます。
http://www.47news.jp/CN/201110/CN2011101301000073.html

 1701年制定の王位継承法は男子優先を定めていますが、これを改正するには、イギリス国会で改正を進めるだけでなく、イギリス国王を元首といただくイギリス連邦

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