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パース協定──男子優先の王位継承を改めることに合意(2024年4月21日)


国会図書館の河野太朗・主任調査員によれば、イギリスでは労働党のブレア政権以後、男女平等の王位継承を実現する法案が議員立法で、数度にわたり提出されたが、ブレア政権は改革を支持しなかった。実益が乏しいという判断からだった。

しかし、次のブラウン政権(労働党)になると、改革に必要な英連邦諸国との協議を開始することに積極的気運が生まれた。さらに、2011年4月にウイリアム王子が結婚すると、王位継承への関心が高まった。河野氏は言及していないが、挙式を前にして、キャメロン内閣クレッグ副首相(自由民主党)は、「政府は王位継承に関する法律の変更について英連邦諸国と協議中」とBBCに語った。〈https://www.bbc.com/news/uk-13103587〉

やがてキャメロン首相(保守党)は同年9月、英連邦諸国首脳に王位継承法の変更を提案する書簡を書き送った。

イギリス国王は同時に、英連邦諸国のうちの15か国の元首でもある。したがって、王位継承法の変更はこれら「領国(Realm)」でも、それぞれに法改正作業が必要になる。また一方で、王位継承のルール変更は、全自治領の議会の承認が必要だった(1931年ウエストミンスター法前文)。

書簡のひと月後、10月28日から3日間、オーストラリアのパースで、CHOGM(The Commonwealth Heads of Government Meeting。英連邦首脳会議)が開かれた。そして、全領国の首相が、①男子優先の王位継承を止めること、②ローマ・カトリック教徒と婚姻をした者に関する王位継承の欠格条項を撤廃することの2原則に合意した。パース協定(Perth Agreement)と呼ばれる。〈https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_8382748_po_02580003.pdf?contentNo=1〉

イギリス政府の発表(2011年10月28日)によると、キャメロン首相はギラード・オーストラリア首相との共同記者会見で、「王位継承の変更を発表」し、「わが国の憲法アプローチの大きな強みは、進化する能力である(the great strength of our constitutional approach is its ability to evolve)」と語ったという。〈https://www.gov.uk/government/news/prime-minister-unveils-changes-to-royal-succession〉

また、首相は次のようにも述べた。

「何世紀にもわたって考え方は根本的に変わり、継承ルールなどの時代遅れのルールの一部は、もはや私たちにとって意味をなしていない。(Attitudes have changed fundamentally over the centuries and some of the out-dated rules - like some of the rules of succession - just don’t make sense to us any more.)」

さらに、こうも語った。

「第一に、我々は男子の長子相続の規則を廃止し、将来的には継承順位が単に出生順によって決定されるようにし、ウェールズ皇太子のすべての子孫にこれを導入することに同意した。(Firstly, we will end the male primogeniture rule, so that in future the order of succession should be determined simply by order of birth, and we have agreed to introduce this for all descendants of the Prince of Wales.)」

「簡単に言えば、ケンブリッジ公爵夫妻に小さな女の子がいたら、その女の子はいつか私たちの女王になるでしょう(Put simply, if the Duke and Duchess of Cambridge have a little girl, that girl will one day be our queen.)。」

日本の女系継承容認派が聞いたら、泣いて喜びそうな内容だが、私が知りたいのは論拠である。キャメロン首相はいったい何をどう考えて、法改正を進めていたのだろうか。

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