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「子どもの最善の利益」とデジタル・リスク

子どものデジタルリスクとは?


子どもたちのインターネット利用の光と影

 インターネットにつながるデジタル機器は、子どもたちに「光」と「影」の影響をもたらしています。
 「光」の側面は、YouTubeなどの動画を観たり、ゲームなどがあげられるでしょう。
 「影」の側面も指摘されています。スマートフォンなどの使い過ぎが、やがてネット依存症を引き起こしてしまうのではないかという心配をされている方も多くいらっしゃることでしょう。

ネット依存症の科学的根拠と座位行動

 しかし、スマートフォンの使用と、いわゆる「ネット依存」との関係は未だ科学的に証明されている域には到達していません。
 世界保健機関(WHO)においても「ゲーム障害」については国際疾病分類第11版(ICD-11)に規定していますが、インターネット障害については規定されておりません。
 一方で、WHOは、デジタル機器の長時間利用による「座位行動」を問題視しています。余暇時間におけるスクリーンタイムを減らすことにより、子どもたちの肥満予防、体力と精神的健康を確保することを求めています。

デジタル機器の使用によるリスクと注意点

 デジタル機器の使用は、子どもたちのプライバシーが侵害されるというリスクももたらします。子どもの観点から特に注意する必要があるリスクとして、デジタル玩具があげられます。
 ドイツでは、2017年に盗聴の恐れがあるAI人形「カイラ」が販売禁止となりました。この人形はインターネットに接続可能であるにも関わらず、セキュリティ対策が十分に施されていませんでした。このため、第三者が外部から人形の音声機能にアクセスし、子どもとカイラとの会話を盗み取ることが可能でした。
 このように、デジタルが日常生活のあらゆるものに適用されることは、また新たなリスクを子どもたちにもたらすのです。

子どものデジタル環境整備の重要性

 このような子どもの生活環境の変化を受け、デジタル環境に生きる子どもたちのために、国際的な取り組みが講じられています。
 経済協力開発機構(OECD)では、2021年に「デジタル環境の子どもに関するOECD勧告」を発表しました。この勧告では、デジタル環境に発生する様々なリスクに対して子どもたちを保護するためのガイドラインとして、「年齢に応じた子どもの安全設計」を推奨しています。
 また、UNICEFでは、「子どもに関するAI政策ガイダンス」が策定されています。
 これらの政策には、共通の価値観が存在します。それは、国際連合の子どもの権利条約に定められた「子どもの最善の利益」を前提としていることです。
 日本においては、2023年に「子ども基本法」が施行されました。本法においても子どもの最善の利益を政策的柱に置き、子どもの権利と保護のバランスをとる子ども政策が目指されています。
 子どもの最善の利益の観点から、子どもたちのデジタル社会に参加する権利を十分に尊重した上で、的確な保護・指導を講じていくことが求められると言えるでしょう。

参照:齋藤長行(2023)「幼児教育・保育のデジタルリスク」『最新教育動向2024 必ず押さえておきたい時事ワード60&視点120』明治図書出版


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