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こんにちは、齋藤です。

今回は、「美味しんぼ」をご紹介させて頂きます。

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美味しんぼは、現在111巻まで出ているのですが、やはり海原雄山と和解する前(海原雄山を嫌がりながらも家に招いたあたり)までを推したいです。

料理をボロカスに言ったり、いきり立って店を出たりと尖っていたころの山岡さんが懐かしいです。

正直、連載初期のころのつくりが最も好きですので、そのあたりに絞ってご紹介させて頂きます。


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↑↑↑「これでわかったかい、おまえのスシのまずいわけが。おごりたかぶった心で握れば、シャリもガチガチに固まってしまうんだッ!! 心のこもっていないスシは、ただのシャリとネタの固まりだ!! スシじゃねえ! おまえのスシがそれなんだよ!!」(1巻 第3話 寿司の心)

銀座で一番とされる有名店のオヤジの寿司をこき下ろすシーンです。

過分な評価にあぐらをかいてお客を大切にしない店には必ず一発かますのがかつての山岡さんの流儀でした。


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↑↑↑吠える山岡さんその2です。

「こんな店では何も食べちゃいけない、うまいとか、まずいとかいう以前の問題だ!」「マスコミに取り上げられたくらいでいい気になって、客を粗末にするような人間の作る物は、食べる価値がないっ!!」(2巻 第1話 手間の価値)

ここで山岡さんがキレたきっかけは、店が取り皿を出そうとしなかったからでした。普通の人からするとそこまでキレなくても・・・と思ってしまいそうですが、山岡さんはしっかりかみつきます。

女性陣もうろたえています。山岡さんは女性と一緒だろうがお構いなしにキレます。

その前のページの「ゴマソースの物もチリソースの物も同じ皿で取れっていうのかっ!!」というキレ方がコミカルで好きなのですが、まさにタイトル「手間の価値」を象徴するような導入部で、このあと別の店に入り、あの名言「この豚バラ煮込みは出来そこないだ、食べられないよ。」のくだりへと続いていきます。


私が勝手に考える、美味しんぼの基本的な信条は、

① 料理は心

② ブランド物を無批判に有難がらず、自分の感覚で判断しろ

というものです。


①につきましては、上に挙げた二つのエピソードしかり、もてなす相手のことを考え、それを突き詰めることの重要性が山岡さんや海原雄山の言葉で繰り返し語られます。

②につきましては、かの名言「フォワ・グラよりうまい鮟鱇の肝だッ。」や、(マグロやフグなどではなく)「今まで食べた中では、サバの刺身が一番うまかった・・・」、生ガキにシャブリは合わないとの論説など、世間で一般的に言われている価値観に挑戦する姿勢がたびたび示されています。

世間で当たり前とされているからと言って、それに盲目的に従うのではなく、自身の感覚(舌)で判断しなければならず、有名店だとか、希少な食材だとか言って有難がるのはただのブランド信仰に過ぎない、というわけです。

初期の頃のエピソードはどれも示唆に富んでおり、読み返すたびにハッとさせられます。


なお、余談ですが、美味しんぼは、キャラの服装の描写も注目すべきポイントです。

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↑↑↑上のコマの谷村部長は、ヘリンボーンのスリーピースにボタンダウンシャツといういで立ちです。基本的に谷村部長はヘリンボーンのスリーピースなのですが、チェックのジャケットになったりと細かい書き込みがなされています。また、季節感を反映してキャラの装いがコロコロ変わります。


最後に、海原雄山のシーンにも触れておきたいところです。

物語が進むにつれて人格者へと変貌を遂げた海原雄山ですが、オールドファンとしては、もう一度お椀を投げつけるところが見たいものです。


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↑↑↑このシーンでは、吸い物がまずいということでキレています。

大原社主に招待してもらって赤坂の料亭に来ているのですが、奢ってもらっておいて吸い物がまずいと言って「だから私は食事に招ばれるのは嫌なんだッ」と怒っています。無茶苦茶です。

よくもまあ料理は心とか言ったもんだ・・・という感じなのですが、同時に雄山先生はこうでなくちゃ、というところでもあります。


最後に山岡さんが海原雄山を凹ませる希少なシーンで締めたいと思います↓↓↓。

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カモ料理を得意とするフランス料理店「ル・キャナル」のオープニングセレモニーに招待された山岡さんや海原雄山でしたが、カモ料理が供されると、海原雄山が、店が推奨するカモの血のソースではなく、自身が持参したワサビと醤油で食べるようと招待客に勧め、ワサビ醤油を配り始めます(あり得ない傍若無人さです)。

ワサビ醤油でカモを食べた招待客たちは、口々に、カモの血のソースではなくワサビ醤油のほうが美味しいと言い、海原雄山は得意満面となり、店のオーナーはウヌヌとなります。

そこで山岡さんが、「情けない連中だ、自分たちの慣れ親しんだ和食の味にしがみつき、血のソースの味を分かろうとせずに、日本文化をワッショイしようとするんだから」とやるわけです。

案の定海原雄山とモメる展開となり、海原雄山が供する料理で料理人の推奨する食べ方以外に美味しい食べ方ができるかどうか、という勝負をすることになります。

そこで、海原雄山はカツオの刺身を供するのですが、山岡さんは、醤油とマヨネーズでカツオの刺身を食べてみせ、他の招待客の賛同を得ます。

ここで飛び出すのが、海原雄山の名セリフ10選に入るであろう「カツオはショウガ醤油で食べる、それが、決まりなんだ!!」です。

本当に、カツオショウガ醤油<カツオ醤油マヨ なのかはさておき、ここで特筆すべきは、山岡さんが、カモをワサビ醤油で食べるのは、フランス料理というフランス文化を嘲笑する行為であり、「他者の文化を理解しようとせず嘲笑したり破壊しようとする人間は野蛮で下品だ」と喝破し、海原雄山を精神面・哲学面で圧倒するところです。

料理の品という各論のレベルで山岡さんが海原雄山を負かすシーンはその後も何度かあるのですが、総論・人生観のような大局的なものの見方について海原雄山を完膚なきまでに論破する貴重なシーンなのです。

↑↑↑ 1巻と最新刊111巻の表紙からも、キャラの書き方の変化がわかります。


美味しんぼについて書きたいことはまだまだあるのですが、このあたりで一旦筆を置くことにいたします。

こんな感じで、個人的ベストマンガをぼちぼちご紹介させて頂ければと思っております。

今後ともお付き合いのほど何卒よろしくお願い申し上げます。

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