背骨のアーチと筋トレ【2】~美しいスクワット~
背骨のアーチと筋トレ【1】 の続きになります。
前回同様に今回もバーベルのバックスクワットをイメージしていきましょう。
スクワットの昔からよくある文言の一つに「膝をツマサキより前に出さない」というものがありますが、これは膝の保護のために言われていることが多いと思います。
これへの賛否は置いておいて、ともかく膝は回数でも重量でも高負荷の動作でも、痛めやすい関節の一つであると昔から考えられているのでしょう。
膝はテクニカルかつ使い勝手の良い関節ともいえます。
勢いをいなしたり、バネのように使うことには長けていますが(このこと自体が表裏一体ですね)、ダイレクトに持続的な負荷をずっと受け止めるのに向く関節ではありません。
スクワット時にパワフルに使いたい関節は股関節です。
ですので、
「膝を前に出す = 膝関節角度の増大 = 膝の介入の増大」
よりも
「臀部を後ろに引く = 股関節角度の増大 = 股関節の介入の増大」
のほうが適しているといえます。
このスクワットと今回のタイトルとの関連性をシンプルにいうと、
「股関節の伸展屈曲をするためには、軸骨格である背骨のアーチが適正になっている必要がある」ということです。
これは背骨のアーチ、特に腰椎が前弯で安定していなければ股関節を止めておけないため、股関節の可動性に制限が生まれるからです。
かといって前弯が強すぎると足の裏に体重が乗らないので、重力下やウェイトトレーニング時に上手く股関節が使えなくなり、たいていの場合、代償動作として腰部へウェイトが乗っかってきます。
もちろんトレーニングのやり方や目的はケースバイケースですが、このやり方の常態化は、特に立位で行うスポーツへの基本的なアプローチとしてはあまり向いていないのかなと考えています。
背骨のアーチの「適正」というのは、よほど特異的なパターンでなければ、「本質的に」美しいスクワットができるくらいを適正としても良いのだろうと思います。
ではこの適正や本質的に美しいスクワットとはどのような状態が当てはまるでしょうか。
脊柱は通常24個の椎骨でできていて、その関節、椎間関節は左右にありますので48個の関節、後頭骨と頸椎1番、腰椎5番と仙骨の関節を入れれば52個の関節があります。
身体には個人差がありますし、強化目的事項は個々により違いますので一概には言えませんが、骨格筋は関節を動かすために跨いで付着していますので、
動作時の一つの目安として、
「椎間関節に関係する筋肉の一部分が、過剰に伸長も収縮してない状態 = 椎間関節の位置が適正」
とも考えられるかなと思います。
オステオパシーで考えられているフライエットの法則では、椎間関節同士が非接触の状態を中立位としています。
(詳細は、 脊椎の生理的運動 ~フライエットの法則~ や 病理的なフライエットの法則 などを参考にしていただければと思います。)
もし52個の関節の一部分が、神経筋の影響にしろ亜脱臼にしろ、接触して帰ってこられない状態である時、脊柱の動きに制限が生じ、どこかになんらかの代償動作が現れます。
これは前述した、一つの目安になるであろう、
「椎間関節に関係する筋肉の一部分が、過剰に伸長も収縮もしてない状態 = 椎間関節の位置が適正」
が障害され、脊柱の機能障害が生じている可能性を示唆させます。
本質的に美しいスクワットのためには、この52個の関節全体がうまく協調して胸骨の挙上が行われている必要があります。
そして胸骨が挙上しているということは、肋骨の関連性が生じてきます。
やや脱線気味な話ですが、こういった制限は、
脳が「こう動きたい!」と思っていても制限がかかって仕方なくする代償動作なのか、
その人がもともと持っている心体(あえてこの漢字を使います)の特徴や会得してきた動作が、いわゆる「型」の動きからそれているという意味での代償動作なのかは、
スパっと切り分けられるようなものではなくて、ストロングポイントなのかウィークポイントなのかは、その時の状態にもよってくるのだと思います。
しかしできるだけリリースされている状態の時、その人それぞれが持つ「心」と「体」の間に、その人の「技」が生まれるのではないかなと私は考えます。
それに気付かせる、生ませる、自信を持たせるのもオステオパスとしてもトレーナーとしても重要だろうなと思います。
(背骨のアーチと筋トレ【3】~身体に調和を持たせる筋トレ~)へ
染谷 清行
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