デジタル? トランスフォーメーション?

DX(デジタルトランスフォーメーション)

この言葉を聞かない職場はないだろう。かくいう学校現場でも
働き方改革の流れにこの言葉が合流してきた。

ベースとして働き方改革があるので、DXが進んでいるか
どうかはその業務にかけている時間がどれほど削減されて
いるかどうかが指標となる。

文部科学省が公開している『働き方改革事例集』の
巻頭もICTをベースとしたデジタルな改革案が提示されている。

とここまで、学校現場でDXが進められていることを所与として
話をしてきたが、実は学校現場で公に「DX」という言葉が使われる
ことはそれほど多くない。先ほどの『働き方改革事例集』にも
DXという単語は巧みに使われていない。(学校DX推進本部という
文科相の下に設置された機関があるが、この名前のほうが例外?)

DXは名前の通りD(デジタル)とX(トランスフォーメーション)が
融合した言葉だ。今、学校現場で取り組まれている多くが、
この内のD(デジタル)に重きを置いた変化のように感じる。

あえていうならDXではなく、デジタイゼーションデジタライゼーション
という領域ではないだろうか。本来、DXはX(トランスフォーメーション)
側に重きを置いた変革のはず。トランスフォーメーションとは、生産性の
向上を導くための価値観の変化も含むはず。しかし、現場ではコロナ禍に
よるGIGAスクール構想の加速化と学校現場のデジタルアレルギーへの対処
が相まって、「とりあえずデジタルにしてみましょう」が跋扈している。

欠席連絡を例として挙げよう。連絡帳の代わりにメールやフォームで
欠席連絡ができるようになった。連絡帳という媒体でのやり取りには
保護者とのやり取りは具体物を通して担任が直接すべきであるという
価値観があったはず。

この価値観の見直し(X)をせず、技術的な変化(D)だけを導入して
しまったので、欠席連絡はデジタルなのに、その他の校外学習の参加確認
や体温記録は紙媒体で行うという何ともキメラな環境ができあがって
しまった(すべてデジタル化している現場もある)。

逆にそのX(価値観)にしてしまっていいのか?!というDXもある。

一定の期間中に自分のクラスの保護者全員と面談をする期間が自分の
学校にはある。その予約をデジタル化しようと予約アプリを導入し始
めた。この予約アプリによって担任が希望日を紙媒体で集めて整理し
ていた業務から解き放たれる。確かに業務改善にはなる。しかし、
予約アプリの原則は早い者勝ちである。

たとえば夜間に働いている保護者などはどうしてもそうした通知を受け取る
タイミングが遅くなったり、時として返事を忘れてしまう。どう考えても
その時間(概ね午後5時まで)に来校するのが難しい保護者もいる。

そうした事情をもっていても、半強制的に予約の日時に合わせるしかないの
だ。しかも早い者勝ちで。もちろん学校も無限に要求を聞くわけにはいか
ない。しかし、各家庭の事情から、やっぱりここはこのタイミングにして
あげたいな、原則からは外れるけど特別対応した方がいいなというケースも
少なからずあるだろう。

はたして予約アプリを導入するときにこうしたXを無意識に進めて
しまえば、いつのまにか便利に流されて様々な弱点をもった家庭を
置きざりにするシステムが出来上がってしまう。

我々が目指すべき価値観を意識したDXを進めていかなければならないが、
果たしてどのように進めていけばいいのか。

手探りどころか五里霧中である。

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