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なぜHERPは、プライバシーポリシーのひな形を無償公開したのか。

HERPは、2023年5月22日に「オープン採用ポリシー」という、どなたでも無料でご利用いただけるプライバシーポリシー規定のひな形を公開しました。

このnoteは、HR・採用領域のSaaS企業であるHERPがなぜプライバシーポリシーのひな形を作り・公開したのかを、プロジェクトオーナーである私:西村(sai-sonと社内では呼ばれています!)から課題認識とともにお伝えしたいと思い、まとめたものです。

また、これからの採用に必要となるプライバシーポリシーの要素と、オープン採用ポリシーが備える特徴を合わせてご紹介します。

HERPがプライバシーポリシーのひな形を作った理由

私たちがプライバシーポリシーのひな形を公開したのは、採用活動の変化を日々目の当たりにする中で次のような課題感を抱いたためです。

  • 個人情報を漏洩しないことは意識しているが、利用目的の範囲は忘れられがち

  • 採用施策を変えるときプライバシーポリシーまで意識が向かず、後回しにしてしまっている

  • プライバシーポリシーが候補者目線で伝わるようにデザインされていない

採用活動におけるプライバシーポリシーに関する課題

以下、解説していきます。


個人情報を漏洩しないことは意識しているが、利用目的の範囲は忘れられがち

自社のプライバシーポリシーの内容、覚えていますか?

採用活動において、個人情報を取り扱わないことはないと思います。
採用候補者の情報は、個人情報保護法や職業安定法に基づき保護の対象となる個人情報に該当します。

個人情報を漏えいしてはならないと意識している人は多いと思いますが、個人情報の「利用目的」まで意識できているでしょうか。

個人情報は、その取得時に利用目的を通知・公表しなければならず、取得時に通知・公表した範囲でしか利用してはなりません。

個人情報の利用目的の通知・公表に使われるのが「プライバシーポリシー」です。(なお、利用目的が書かれている文書は「個人情報の取り扱いについて」や「プライバシーノーティス」など様々なタイトルでありますが、本稿では総称して「プライバシーポリシー」と言います。)


採用施策を変えるとき「プライバシーポリシー」まで意識が向かず、後回しにしてしまっている

新しい採用施策を考えるとき、使用するツールやチャネル、リソースマネジメントなど様々な検討を行うと思いますが、そのなかに「プライバシーポリシー」は含まれていますか?

求人企業は、候補者情報の取得時に通知・公表した利用目的の範囲を超えて候補者の個人情報を利用してはなりません。
たとえば、採用選考を利用目的と記載して連絡先を取得したにもかかわらず、自社サービスの紹介先として当該連絡先を利用するのはNGです。

利用目的はできるだけ具体的に書く必要があり、利用目的をそのままズバリ書くのが難しい場合でも、記載された利用目的の内容から合理的に想定しうる範囲でしか企業は個人情報を利用することはできません。

一方で、年々厳しさを増す採用活動においては企業の採用施策にも変化が求められてきます。このとき、これまでの採用施策を前提に定められていたプライバシーポリシーの利用目的のままでは、新しい採用施策において候補者の情報を利用できない可能性があります。

プライバシーポリシーに記載された利用目的の範囲を超えて候補者情報の利用を行うような採用施策を進めてしまえば、法令違反に陥るだけでなくレピュテーションの棄損にも繋がります。

企業によっては個人情報に対して「保護」という言葉のみが先行し、採用施策の変化とのバランスを取る(利用範囲を広げる)議論を人事部サイドから提案しにくい状態になっているかもしれません。

そもそも、採用施策の変更と法務への相談は結びついておらず、知らず知らずのうちに利用目的の範囲外の利用状態に陥ってしまう可能性があるのが現状だと思われます。今後、採用活動が人事から現場を中心とした施策に変わっていくことがあれば、「知らず知らずのうち」となる傾向はより強くなる可能性があります。
そのような状態が監査などで指摘され、結果として採用施策がストップする、ということにもなりかねません。


プライバシーポリシーが候補者目線で伝わるようにデザインされていない

視点がガラッと変わりますが、自社のプライバシーポリシーは候補者にとって認識しやすい内容になっていいますか?

企業と候補者の関係性は変化してきており、企業は候補者を選ぶ側から選ばれる側となり、今後採用施策を考えるときは両者の対等な関係を前提とする必要があります。

採用施策の変化に合わせて、プライバシーポリシーも見直す必要があるのは前述のとおりです。
このとき、法的にクリアすることだけを目指すのではなく、プライバシーポリシーも候補者との対等なコミュニケーションのツールとして、その内容が候補者に認識しやすいようにデザインすることが必要だと考えます。

しかしながら、多くのプライバシーポリシーは候補者目線で作られていないように見受けられます。具体的には、候補者が自分に必要な項目を見つけるのが難しかったり、自分の情報をどこまで利用されるのか具体的に認識することが難しいようなケースがあります。

新しい採用施策の検討を始めるまえに、今一度プライバシーポリシーの内容も確認してみてください。


私たちは、上記のような課題感から、新しい採用活動に沿った、候補者目線でデザインされたプライバシーポリシーのひな形が必要だと考えました。

私たちHERPは、「採用を変え、日本を強く。」をミッションに掲げて事業を行っています。また、「スクラム採用」という現場主導の採用活動についても提唱しています。
サービスの検討においては採用活動に欠かせない個人情報保護の観点も取り入れ、適切なプライバシーポリシーも一つのツールとしてとらえ、提案することで採用施策のスムーズな変化を後押しすることができると考えています。

そのために、HERPが無償公開したのが「オープン採用ポリシー」です。

個人情報保護法分野の第一人者である、ひかり総合法律事務所の板倉陽一郎弁護士に監修いただき作成しました。
(板倉弁護士をお招きしたイベントのご案内を末尾に記載しております)

以下、「オープン採用ポリシー」の特徴を、採用を変えていくために必要なプライバシーポリシーの変更ポイントに合わせてご紹介します。



「オープン採用ポリシー」3つの特徴

特徴1:「採用の変化に対応できる」最低限必要な規定

現在、転職求人倍率は高止まりを続けており、中でもIT分野における高度な専門人材は採用難易度が高まる一方であり、そもそも出会えないまま採用活動が長期化する傾向が強くなってきています。そのような状況のなか、企業による採用活動もその考え方・動き方を変化させていく必要があります。

採用活動の変化

採用活動が長期化する中では、候補者のキャリアチェンジやライフステージの節目にタイミングよく企業からアプローチできるかどうかが鍵となってきます。

そのタイミングを逃さないためには、いままで自社と接点があった人物を候補者として、その時は入社に至らなくとも、要件を満たす・満たしうる方と長期的に関係性を構築・維持する施策が必要です。

長期的な関係性構築の対象となる候補者の例

具体的な施策としては、一度でも接点を持った方に、キャリアに関するイベントについて案内する、募集ポストに関する案内をするなど、または定期的にご連絡をしてカジュアルに近況について情報交換するなどです。

なお、企業との「長期的な関係性構築」に対する印象について複数人にヒアリングしたところ、過去志望した経験のある企業であれば、もう一度直接連絡くるのは嬉しい、嫌な気持ちにはならない、案内も開くと思う、などポジティブなコメントが多くありました。

では、このような長期目線の施策における候補者情報の利用は、みなさんの企業のプライバシーポリシーに記載されている利用目的の範囲内と言えるでしょうか。

長期的な関係性構築を前提としたプライバシーポリシーを定めているケースも増えてきているとは思いますが、まだ多くの企業が、一時の選考のためにのみ利用すると読める内容になっているのではないでしょうか。

候補者と企業が長期的な関係性を構築するために必要な「利用目的」は次の表の青字で表現したものであり、これらは、そのまま企業の採用施策のリストとして見ることもできると思います。

プライバシーポリシーに定めるべき利用目的

「オープン採用ポリシー」では、すでに変化が始まっている長期的な関係性構築のために共通して変更すべき事項として上図と同じ「利用目的」を定めています。

上記を見てお気づきのかたもいらっしゃるかもしれませんが、利用目的・業務の目的の詳細として、候補者「ご本人のメリット」も記載しています。これは、長期的な関係性構築のために、候補者目線からの信頼感が必要と考えたためです。


特徴2:「候補者目線」でデザインする

みなさんのなかで、内容が記憶に残っているプライバシーポリシーはありますか?

そもそも、プライバシーポリシーをしっかり読んだことがあるという方はそう多くはないのではないでしょうか。私自身も、読まずに同意してしまうことがほとんどです。

また、サービス利用や応募プロセスのボトルネックにならないようにする意図かはわかりませんが、読むこと自体を辛く感じさせるような細かい表示のケースも今だ見受けられます。

転職経験のある方複数人に採用ページのデモを用意して応募完了まで操作してみていただいたところ、プライバシーポリシーのリンクを開いた方は1人だけでした。ただしその1人の方も、開かないと応募できない仕様と思ったから、ということで中身を読む目的ではありませんでした。

候補者のほとんどは、おそらく内容を見ないまま「選考に使われて終わりだろう」という想定のもと利用目的を確認することなく応募をしているものと思われます。

プライバシーポリシーを上記「特徴1」の表で示したような利用目的に変更するだけでは、候補者本人が中身を読み込んでくれる可能性は上がりません。この場合、企業が選考終了後に入社に至らなかった候補者に連絡を送ると、候補者本人は連絡が来ると想定していないため不審に思われる可能性があります。(法的には、取得時に利用目的を見えるようにしているため問題ないです。)

長期的な関係性構築において、信頼度を高めることも重要なポイントになってきます。

フェアなスタンスで、あえて読ませることを意識して作る。そのために候補者目線でどのようにデザインするか考える必要があります。

プライバシーポリシーを開いてスクロールしないと応募完了できない動線とするだけでなく、候補者自身にとって特別なことが書かれていると思ってもらえるようなデザインとする。
例えば、候補者本人の情報がどのように使われ、自身にどんなメリットがあるのかを具体的に記載し、そのことがパッと見てわかるように配置するなどです。

「オープン採用ポリシー」では、候補者本人に知っておいてほしい情報を中心に必要な情報を配置しました。

HERPが公開した「オープン採用ポリシー」

転職経験のある方複数人に通常のプライバシーポリシーと比較していただき、次のようなコメントをいただきました。

  • 通常のテキスト表示であれば他のプライバシーポリシーと内容が変わらないと感じてきちんと読まないが、このデザインなら読ませようとしていると感じてとりあえず見る。

  • 自分に関係ある箇所のみ読むことができる。

  • 読んだことで、キャリアについて考えてくれておりポジティブな印象を受ける

なお、HERPのホームページでは「オープン採用ポリシー」の要素を、次のリンク先「個人情報の取り扱いについて」の中に配置しています。


特徴3:「オープン」であり、自由に編集して利用することができる

各社が長期目線の採用施策を検討するにあたり、「オープン採用ポリシー」に記載している「利用目的・事業の目的」の中には、自社では実施しないものも出てくると思われます。

今回公開した「オープン採用ポリシー」は、各社の施策に合わせて編集のうえ、ホームページ等に実装していただくことが可能です。そのため、現状はパワーポイントとワードの2種類のファイルでダウンロードいただけます。(もちろん、パワーポイントの方が上記特徴2の趣旨に沿っており、おすすめです!)

なお、法律上「利用目的」は個人情報取得時に通知・公表すればよく同意が必要な事項ではありません。(取得した個人情報の利用目的を変える場合は同意が必要) また、第三者提供など、取得時にも同意が必要な事項は別途ありますのでご注意ください。

その他「オープン採用ポリシー」を実装いただくに際しての注意事項も記載させていただきます。

「オープン採用ポリシー」利用に際してご注意いただきたいポイント

💡 「オープン採用ポリシー」は、長期目線での採用活動を行うために必要な定めについて、事業者等が既に定めているプライバシーポリシー等を補完して利用されることを想定しているため、個人情報保護法及び職業安定法上の法定公表事項を網羅したものではありません。

💡 「オープン採用ポリシー」をご利用いただく事業者等は、取得する情報に関する個人情報保護法、職業安定法その他関連法令における法定公表事項については別途プライバシーポリシー等で遵守していることが想定されています。

💡 「オープン採用ポリシー」はその内容を通知、公表又は明示後に取得した情報のみを対象とすることを想定しています。通知、公表又は明示前に取得した情報であって、取得時にはオープン採用ポリシーに記載の利用目的・業務の目的を示していなかったものについて、オープン採用ポリシー記載の利用目的・業務の目的のために利用しようとする場合には、原則として当該情報の本人から個別に同意を得る必要があります。

💡 「オープン採用ポリシー」は、タイトルや内容を適宜修正してご利用いただけます。 HERPの社名及び監修弁護士名は削除してご使用ください。

💡 「オープン採用ポリシー」をご利用の際は、事前に専門性を有する弁護士にご確認いただくことをお勧めします。

「オープン採用ポリシー」ダウンロード資料より



おわりに

私は現在HERPで採用のサービス開発などに関わっていますが、キャリアのなかで最も長いポジションは企業法務(14年間)です。
実は、企業法務のなかでも個人情報保護法はちょっと苦手な分野でした。個人情報は大きなリスク要因であり、法律の運用にも工夫の余地はないように感じ、契約における個人情報に関する規定もできるだけ目に留まらないようにできないか、なんて考えたこともありました。

しかしながら、HERPに入社後、企業目線だけでなく候補者目線も取り入れた採用活動の変化、候補者・企業双方にとって意味のある関係を続けることの効果を目の当たりにしました。その実現のために、企業が個人情報を持ち続ける意味を候補者にとってもポジティブに認識された状態で、適切に個人情報を管理し続けられるようにするにはどうすればいいか、考える必要性を感じるようになりました。

ぜひ、自社と候補者双方の視点で最適な採用活動とはなにか、そのための個人情報の取り扱いとして自社のプライバシーポリシーで足りない部分があれば、「オープン採用ポリシー」を活用していただけますと幸いです!


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「オープン採用ポリシー」の公開を記念し、板倉陽一郎弁護士をお招きして「デジタル人材の採用を成功させる「個人情報」との付き合い方」についてお話しするオンラインセミナーを開催いたします!

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デジタル人材の採用を成功させる「個人情報」との付き合い方

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