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「見る」は目の専売特許なのか?


人が得る情報の8〜9割は視覚に由来しているという。

だとすると
視覚を持たない視覚障害者は健常者に比べ、1〜2割の情報しか得られないのか?
見える人から視覚を差し引くと見えない人になるのか?


伊藤亜紗さん著
『目の見えない人は世界をどう見ているのか?』
を読みました。

ここでぶわ〜〜〜〜〜っと蘇ってきたのは
暗闇が大好きな自分と、そのきっかけになったダイアログ・イン・ザ・ダーク(DID)での体験。DIDは本書の中にも出てきます。


暗闇に入った瞬間に「見える人」と「見えない人」が入れ替わり

その世界の中に生まれたばかりのわたしは
よちよち歩きの赤ちゃんから、徐々にそこにある感覚を楽しめるようになるまで少しずつ成長していく。

今までとは全く異なる神経・感覚の使い方は
成長というよりもむしろ「進化」する、という表現の方がふさわしいように思えた。


そもそも人間の感覚を五つに分けたり、「見る」を目の専売特許と見なしたりすること。
それ自体が間違っているのではないか?


例えば点字は「触る」ものと言うよりもむしろ「読む」ものである。

見えない人が使っている場所は指先など、明らかに目ではないけれど
読んでいるときには脳の視覚皮質野が発火しているのだそう!


わたしの体験でいうと

例えば直接身体に触れるマッサージや整体をしているとき
やはり同じく指先で筋肉や骨の状態を「見て」いる。

そして直接触れることのないmanaki(気功)を行っているときは
指だけでなく、全身で相手の状態を受け取り、認識する。

目は使っていない、むしろ閉じているときすらあるのだけど
「見て」いる感覚に限りなく近い。

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街中にいるときは、360度目を向けていないけれど、雑踏の中に聞こえる人の声や車の音、気配などを感じている。この時、耳は聞いているのと同時に周囲を「眺めて」いるとも言える。

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ある意味での感覚の境界線の曖昧さは、見ることだけに止まらなくて

耳で「見る」こと、目で「聞く」こと、鼻で「食べる」こと、口で「嗅ぐ」こと。
器官と能力の対応関係があべこべになってしまうこのような状況こそ、むしろ、感じる期間の秘めた能力が最大限に発揮された状況でしょう。

目は「見る」もの、耳は「聞く」もの
鼻は「嗅ぐ」もの、口は「食べる」もの

そう限定してしまうと、きっと身体も受け取っている曖昧な感覚に気づくことはなくて。自分で自分の限界を決めているようなもの。


事故や病気によって何らかの器官を失うことは、その人の体に「進化」にも似た根本的な作り直しを要求します。リハビリと進化は似ているのです。

事故や病気によって進化を迫られた場合はもちろん
必要に迫られなくとも、人間の身体にはもっと深いポテンシャルが眠っているという可能性を見つめるだけでも
身体の使い方や視点・感じ方が変わってくるのではないかと思う。


本の中では、感覚の分析を通して
見えない人の空間の捉えから、身体の動かし方、対話の仕方、ユーモアの捉え方など、様々な視点から分かりやすく書かれています。

ていうか、もんのすごく!!!
見えない感覚を言葉にする表現力が素晴らしすぎて〜〜〜!!!
弟子入りしたくなってしまったほど(笑)

ただの分析本ではなくて、自分の日常にふと意識が戻って
こういう視点になれば全然違うなぁ。そうなりたいなぁと思わせてくれる気づきが満載。


「思いどおりでなければダメ」「コントロールしよう」と言う気持ちさえなければ、楽しめる。

わたし自身がずっとずっと囚われてきて
そして少しずつ手放していった根本に他ならない。

どうせだったら悩むよりも楽しみたい。


見える人も

見えない人も

異なる感覚もあれば、同じ感覚もある

そんな違いや共通点を見つけながら、お互いに面白がればいいんじゃないか。

そんな著書の言葉にうんうんうんうん、何度も頷いた。


面白がると言うと「不謹慎な」と言う人もいるかもしれないけど
その言葉こそが両者の間に壁を作っているのだと思う。

障害を持たない人同士でも視点や感覚の違いは当たり前のようにあり
そこには正解がなく、だからこそ世界は面白い。


もっと言うと、視覚や聴覚を持たない人を「障害」と分類したのは人間で
本当は厳密な壁なんてなくて


見える人と見えない人

見える世界と見えない世界


全部、つながっている。

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この本を元に書かれたヨシタケシンスケさんの絵本
『みえるとか みえないとか』

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改めて読んでみたらさら〜に分かりやすい解説絵本みたいだった!
子供と一緒に読むんだ〜。


くろかわさいこ
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