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2023チェロ発表会本番(当日後編)

年に一度の、チェロの発表会を終えました。
振り返りをしたいと思います。

今回最終回です。
お読みくださり、ありがとうございます。

           ★

いよいよステージへ。
2拍分ピアノが入り、出だしのシの音を出す。

弾き始めて、私はあることに気づいた。

音が小さい?

出だしはp(弱く)だから小さくていいのだが、客席まで音が届いてないのではないか、と感じた。
f(フォルテ)を弾いても、小さい気がしてしまう。

「右腕に力を入れて弓を弦に押し付けてはいけない。却って音が出なくなる。
大きい音を出したいときは、腰をどっしりと落ち着けて、肩の力を抜く。
弓に腕の重さを乗せて、弓幅を大きく動かす。」

そう教わった。
それでも、聴こえない気がする…。

…などと考えていたら、ふと我に返ってしまった。
高音ポジション2小節分、落としてしまう。

しまった…。

つまずいたとたん弾けなくなってしまった、リハーサルの二の舞はゴメンだ。

素早く、次の小節に移った。

その後、一番苦労した16分音符の連続も、クリアに弾けた。

集中力を切らさず、最後まで弾ききった。
長い曲は大変だけど、どこかで回復できるのはいいな、と思った。

拍手をたくさんいただいた。

           ★

「あの2小節分!もったいない!
ほかは良かっただけに、もったいない!!」

舞台袖に下がると、先生はそう言って悔しがった。
スミマセンね…。

ピアノ伴奏のW先生から講評をいただいた。
「落とした2小節の後に直ぐに戻れたのは偉いですよ。しかも、調子を取り戻した感じでしたね。後半の方、とても良かったです。」

「落とした瞬間、W先生がピアノの音量を少し上げてカバーしてくださったので、戻ることができました。ありがとうございました。
また機会がありましたら、ぜひWさんに伴奏していただきたいです。」

「ええ、喜んで。」

その後、一緒に写真を撮ってもらった。
師匠も入ってもらおうと思ったが、いなくなったので「ま、いいか⭐︎」と、師匠とは撮らなかった。

           ★

時刻は15時を回ったところだった。
着替えを済ませて、師匠を捕まえた。

「センセ、私行きます。」

それだけで、師匠は分かったようだ。

「オケ練、行くのか。」
「はい。」

今日の発表会は、私が所属するアマチュアオーケストラの練習日と重なっていた。
そのことを、先週のレッスン日に師匠に話したところ「練習参加は諦めろ」と言われた。
師匠の言いつけを守って、発表会の準備中はオケ練参加を控えていた。
たとえ1時間だけでも、参加したい。

仕方がない、と師匠が言った。
「反省会は、次のレッスンな。」

それはそれでイヤだな…今は一旦忘れよう。

車でオケ練会場へ向かった。

           ★

皆さんが静かに指揮者の説明を聴いている中、後ろからそっと練習に加わった。

一番後ろで弾いていたAさんに、無言で挨拶する。
「今月欠席します」と連絡していたので、Aさんは驚いた表情をした。

身振りで「今どこを練習していますか?」と聴いたところ、Aさんは1楽章の270小節を弓で示した。
私は、うなずく。

オケの楽譜は練習していないに等しい。
弾ける部分だけ、弾いた。

          ★

練習指揮者が練習の終わりを告げたところで、私は前列に座るチェロのパートリーダーMさんに挨拶した。
「Mさん、ご無沙汰しておりました。」

Mさん、驚いた表情のまま、立ち上がった。

「夜さん!来てくれたんだ!」
「最後の40分だけですけれど。」
「短時間でも来てくれて、とっても嬉しいよ!」
Mさん、満面の笑みで歓迎してくださる。 

「よく来た、よく来た!」とRさん。
「会いたかったよー!」とKさん。
「短時間でも来るなんてエライッ。」とAさん。

オケの皆さんに会うのは、7月の定期演奏会後の打ち上げ以来だ。
私が皆さんに会いたかった。

「チェロの発表会、終わったの?」
Mさんには、発表会を終えたらオケに参加しますと話していた。
「先ほど本番でした。終わったので、こちらに駆けつけました。」
「さっき終わったばかりなの?!」
「これは、打ち上げしないと!」

そんなこんなで、4人でスタバへ移動。

オケを休んでいたのは、師匠言い付けが一番の理由だけれども、7月の定期演奏会の際
・一部の運営関係者との関係が悪くなった。
・コンマスとぶつかった。
・曲が自分のレベルより遥か上を行っていて、ついていくのが大変だった。
という事情もあった。

その一部始終を知っているのは、パートリーダーのMさんだ。
テーブルに落ち着いたところで、Mさんが言った。

「夜さんが一人で抱え込む必要はないんだよ。
後味が悪かったのは、ここにいるメンバーみんな同じ。
夜さんが来る少し前から運営がおかしかったの。
立て直しを考えてる。」

ほかの皆さんも、うんうんうなずいている。
そうだったのか。

「趣味の集まりなんだもの、楽しくやりましょう!お疲れ様!」

コーヒーで乾杯した。

師匠は「色々関わってオケが辛いなら、辞めてしまいなさい。」と言うけれど、オケの中の一人として弾くのは楽しいし、チェロのメンバーの皆さんも好き。

もう少し、がんばってみたい。

           ★

翌日。

私の演奏を聴きに来てくれた義母が感想をくれた。
「昨年よりもずっとキレイに音が出ていたよ。
ああ、チェロの音っていう感じだったわ。」

ちっとも成長しない、と思っていたけれど、ちょっとは進歩したのだろうか。

2小節分のミスには気付かなかったそう。
伴奏のW先生のおかげだ。

義母は少しだけ演奏を録音してくれていた。
聴いてみると、音は小さいどころか、f(フォルテ)はうるさいくらいだった。ピアノのfの音にも全然負けていなかった。

遠鳴り(耳元ではそれほど大きな音で聞こえていないのに、離れた場所では大きな音で聞こえる)だったのだろうか?
今度先生に聞いてみよう。

(おわり)