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2月チェロレッスン1回目:マスター・ヨーダの楽譜

「弦六なんだけれど。僕は2ndしかやったことなかったみたいで、2ndのパート譜しかなかったんだよ。」
と先生。

少し前に、ブラームス弦楽六重奏1楽章Vc1stのフィンガリングについて先生に相談していた。
特に 1stVn(ファーストヴァイオリン)とのソロの部分がわからない。
先生はいつも1st担当という訳ではないんだな。考えてみれば当たり前だけど。

「だから、ほら。」
先生が私に渡してくれたのは、T先生のサインが入った1stのパート譜!ひゃー‼︎

マスター・ヨーダの書き込み

「T先生が貸してくれたんですか!?」

先生、ニヤリとして
「夜が困ってるんなら、って。質問箇所のフィンガリング入れたから参考にしなさい。
それにしても、お前愛されてんなー。」

さすが、マスター・ヨーダ!

「うらやましいでしょ。」
「別に。」
先生鼻で笑う。
「あの人、孫弟子には甘いんだから。まったく。」
私が先生に対して抱いている不満(?)を、先生もまた先生に対して抱いているようだ。

★★★★

話は逸れるが、私のダンナ曰く、私のチェロ関係者の相関図は“スターウォーズ”に例えると、以下のようになるそうだ。

T先生;マスター・ヨーダ
 とあるプロオケのソリストだった。本物のヨーダと違い、身長190cmの巨漢。退団後は個人で精力的に活動している。齢70を超えているはずだが、20年前から全く変わっていない。200年以上前の名のある楽器を愛用(T先生はこの楽器を「ばあさん」と呼んでいる)。

先生;オビ・ワン
 孤児の私を拾った現役プロオケ首席奏者。T先生の弟子。過去にも数名の先生の弟子になっていたらしい。自身の室内楽団(みんなイケメン…)を持っている。ヨーダはオビ・ワンにとても厳しい。
 ステージでバラを背負っちゃう華やかさがあるのでご婦人方に人気があるが、中身はイジワルだと私は思っている。私をからかうことが趣味に違いない。

私;アナキン・スカイウォーカー
 全くのアマチュア。趣味の域を出ない。将来ダース・ベイダーになって、現在所属しているアマオケを乗っ取る(⁉︎)予定。計画は着々と進行中⁉︎

★★★★

昔、先生の都合で私のレッスンができない時期があった。その時私を教えてくれたのはT先生だった。

怖いもの知らずだった若い私は、T先生の主催するチェロアンサンブルのステージに、先生と一緒に二度ほど乗らせてもらったことがある。
今思うと、とても貴重で贅沢で、学びの多い時間だった。

★★★★

「もう、弦六はオケで合わせたの?」と先生。

「いいえ、明日が初合わせです。モツレクあるし、楽譜配布から二週間しかないから、1、2楽章だけになります。」

「本当にコレやるの?夜も弾いてわかったと思うけど、相当難しいよ。」

「ですね…。1st、とても大変です。」

「1stは特に難易度高いね。でも、2ndだって難しいよ。6人で演奏するならともかく、コレを弦楽団でやるのって、相当大変だと思うんだけど。大丈夫なの?」
先生、心配顔。

「私に聞かないでください。コンマスと代表とそれぞれのパートリーダー、パート首席で話し合って決めたはずです。出来ると思ったからなんじゃないですか。」

「ヴァイオリンはいいよ。プロオケOBが多いみたいだから。チェロはどうなの。
お前は僕とT先生で徹底的に教えるとして、ほかのメンバーは?1stチェロは首席とお前だけで十数人いる1stヴァイオリンと互角にセッションできるの?」
と、先生が厳しく畳み掛けてくる。

「だから、私に聞かないでください。トップ(首席)不在時に出来の悪い私がトップだなんてそんなパート、大丈夫な訳ないじゃないですか。」
先生がお説教モードで言ってくるので、私も思わず不貞腐れる。

先生ちょっと冷静になって「だよなぁ。」と言う。
「弦楽合奏版の楽譜を用意できないか、コンマスにかけあってみなさい。」
言われずとも、そうします。

★★★★

そのような訳で、今日は無伴奏5番はお預け。
明日合奏する予定のブラームスの難しいところを見てもらって終了。

「あ、そうだ。再来週工房へ行くんだって?」
と先生。
私は片付けの手を止めて、先生を振り返った。
「…なんで知ってんですか。」
「Tさんから連絡もらったから。」

工房のKさんTさんは、逐一私の行動を先生に連絡する。
最初、私のことを心配して連絡しているのか思っていたが、実は先生が私に関することは連絡するようKさんに言っていることがわかった…何それ?
いつまでも子離れできない親ですか?

「…楽器壊したんじゃないですよ。モツレクの本番前に弓の毛替えに行くんです。ついでに楽器も見てもらいます。」
「うん、それも聞いてた。」
…そんな細かいことまで聞き出してたんですか。
怖ッ‼︎

「…じゃあ、ありがとうございました。また再来週です。」
ドン引きしながら私は言った。
「うん。弦六、また分からないところがあったら連絡しなさい。」
こういうところは優しいのだけど。
先生に教わっていることがバレている私がオケでまともに弾けないと、先生が困るという裏事情もある。だから素直に喜べない。

「再来週は、オムライスの夕飯付きですよ。忘れないでくださいね。」
「はいはい。」
先生手をヒラヒラ振る。
ごはんをねだる私も良くないのか。

私はレッスン室を後にした。

明日は半日合奏だ。
家に帰って、さらにおさらいをしたら早々に眠くなってしまい、早めに就寝した。

(投稿が遅く、2日前の出来事でした。)






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