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チェロレッスン10月②:発表会後の初レッスン。

発表会を終えた後の初レッスン。

発表会後、先生の講評をもらう前に、私はオケ練習へ行ってしまった。

今日、発表会の演奏についてまたネチネチ言われるんだろうなぁと気を重くしたら、お腹を壊した。

家を出ようとしたとき、先生からLINEが入った。
「エレベーターが壊れた。5階まで階段で来て。」

           ★

レッスン室に入るなり、先生が言った。
「エレベーター内に閉じ込められて、参ったよ。」

エレベーターに乗っていたら、2階と3階の間で止まってしまったのだそう。

非常ボタンを押してエレベーター管理会社の人が来るまで、先生は20分ほど閉じ込められたらしい。
3階の扉を開けてもらい、先生は隙間から3階へよじ登ったそうだ。

聞いた私は思わずふふふと笑ってしまったが、閉所恐怖症の人だったら、もうパニックだろう。

「センセ、近頃何か悪いことをしたんじゃないですか?」
「…どうだろ?覚えないけど…。」
私はおちょくったのに、真面目に答える先生。

「チェロ担いで5階まで上がってくるの大変だったろう?お疲れ。」

職場でエレベーターが混んでいる時は、階段で6階まで駆け上がっているので大丈夫なんだけど。

意外に先生優しい…おちょくって、ごめんなさい。

          ★

さて、本題。
先日の発表会の演奏について、先生のジャッジは??

「あの2小節…もったいなかったなぁ。」
先生が心底残念そうにつぶやく。

本番で、私は途中2小節分落とした。先生はそのことを言った。

「最初のHを弾いた瞬間、音が響いてないって思って焦っちゃったんです。で、一瞬我に返っちゃった。」
「音量?ちゃんと出てたよ。ピアノにも負けてなかった。」

そっか…やっぱり私の勘違いだった。

「ピアノ伴奏のW先生から講評いただきました。
2小節落としたものの、その後の演奏は落ち着いてて良かったって。」

先生うなずく。
「うん。今までで最高にいい演奏だと思ったよ。
だからこそ、2小節分がもったいなかったんだ。」

「聴きに来ていた義母は、ミスに気づかなかったって。」
「誰も知らない曲だから、知らない人が聴いたらわからない程度に誤魔化せていたのか。」

先生、椅子から立ち上がった。
「あの難しい曲を、よく短期間であれだけ仕上げたよ。よくやった。お疲れさん。」

先生は、抱えたチェロのネックごと、私をハグした。

だって、先生の言い付けを守って、オケの曲練習全くしないでアダージョに集中したもの。

先生に褒めてもらえて、かなりホッとした。

           ★

発表会を終えたので、レッスンは課題に戻った。
バッハ無伴奏チェロ組曲5番プレリュード。

曲の展開部に入ったところで、一旦お休みになっていた。
おさらいに、習ったところまで弾いてみる。

先生、渋い表情。
「まぁ大体弾けてるけど。序奏のテンポがさぁ、自由すぎるよ。あと、EsとかBとかちゃんと下げてよ。音程高いよ。」

基礎中の基礎ができてないってことですね…。

音程がピッタリはまるまで、何度も何度も休みなく弾かされた。
次第に集中力が続かなくなってくる。

「おっと、疲れてきたか?」
ミスタッチが出て、先生ニヤニヤする。

悔しい…ええい、まだまだ!

「お、復活した。」
先生、感心する。

ぶっ続けで弾くこと30分。
「コレくらいでいいだろう。」
やっとお許しが出た。

「じゃあ、次。3ページ目。やってきた?」

もちろんです。
ここからは先生の前で初めて弾くので、テンポを落として、音程を正確に取るよう心がけた。

「運指、これでいいですか?」
3ページ目を丸々弾き終えて、私は聞いた。

先生、うなずく。
「それでいいよ。合ってる。
ここのページはこの曲の肝だよ。
ポジション移動が激しいのに完全五度で音を取っていくから、音が外れると気持ちが悪い。
楽譜を目で追っている暇はない。暗譜しなさい。」

音程が外れやすい部分を確認して、レッスン終了。

           ★

「5月の定期演奏会、2曲目はブラ3に決まりました。」

私の所属するアマオケの定期演奏会。
ブラ3は、ブラームス交響曲第3番のこと。
またブラームス...ウンザリだ。

「ブラ3?!厄介な曲になったな。ベートーヴェン皇帝より大変だと思うよ。」
と先生。

「私ずっとオケではヴィオラだったから、オケのチェロはこんなに大変だなんて、知りませんでした…。」

先生、ニヤリとする。
『僕の苦労がやっとわかったか?』とでも言いたそうだ。
「バッハ、モーツァルトはそうでもないんだけど。ベートーヴェン以降はチェロがたくさん前面に出てきて、活躍させるようになってきたんだ。」

なるほど。

「ブラ1は大学でやりました。」
「出身大学でブラ3はやらないだろ?」
「私が知っている限りは、ないですね。」
「だって、大変だもの。譜読みした?」
「まだです、皇帝で手一杯で。」
発表会が終わって、自己練習を始めたばかりだ。
「楽譜、ありますよ。」

私は、製本をしたばかりのブラ3の楽譜をピアノの上に広げた。
先生と一緒に覗き込む。
「3楽章はチェロから始まるよ。美しい旋律だけど、大変だよ。転調の嵐だ。4楽章なんて特に忙しい。」
高音ポジションばかりだ…。

私がどんよりとした表情をすると、先生が畳み掛けるように言う。

「Ges、Des、Asだから、楽な解放弦(弦をおさえない弾き方)は一切使えない。
効率の良い運指を考えないと、わけがわからなくなるよ。」

先生の声が弾んでいる…私が曲に対して嫌な気分になっていくのを、楽しんでいるようだ。

先生、間違いなくサディスティックでしょう?!
最初に優しいって思ったのは、撤回だ!

弾いている私です...






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