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化学のグラフの読解の基本①

共通テストでも思考力を問う問題が多く出題されています(2023年の感想はhttps://note.com/saionji_chem/n/n752f6115aec9)。

しかしながら, 「思考力を育成する」教材は少数ながらあっても, 「化学(科学)の思考回路が何か」を教えているような教材は果たしてどこにあるのだろうかという印象を受けます(生物の場合, 以下の本は受験生時代, 役に立ちました)。

そして, 私はただ口酸っぱく考えろと言うだけではなく, このような思考回路を高校生向けに言語化することは必要不可欠と考えています。ここで一個, 例を挙げたいと思います。

<問題> 2022共通テスト化学 改題 
ある金属元素Mが, その酸化物中でとる酸化数は一つである。この金属元素の単体Mと酸素O2から生成する金属酸化物MxOyの組成式を求めるため, 次の実験を行った。

実験 Mの物質量とO2の物質量の和を3.00×10^(−2) molに保ちながら, Mの物質量を0から3.00×10^(−2) molまで変化させ, それぞれにおいてMとO2を十分に反応させたのち, 生成したMxOyの質量を測定した。
 生成するMxOyの質量について, その最大の測定値を1と表し, 他の測定値を最大値に対する割合(相対値)として示した場合, 図1の結果が得られた。

(※グラフはリライトしていません)

このときのMxOyの組成式を答えよ。

グラフでは横軸, 縦軸が何かは必ず確認

今回は横軸がMの物質量, 縦軸がMxOyの質量です。

「絶対値」・「相対値」

数学の絶対値(符号を無視した数, あるいは原点からの距離)とは意味が違います。どちらかというと「絶対評価」・「相対評価」と意味が近いです。絶対値は一つのデータしか無くてもよく, 単位が付きます。一方, 相対値は他のデータ(基準)との比を表し, 単位はつきません。裏を返せば, 相対値が出てくるときは具体的な質量に関しては注目しておらず, その代わりに比に注目すればいいことを意味します。
実際, 今回話題の化学反応は化学反応式では, で表せるため,

★ ターニングポイントを探せ

というポイントを利用します。図1ではMの物質量が増えるにしたがって(図の右にいくにつれ), 最初のうちは縦軸の値が増加しています。ただ, 増えている途中は重要ではありません。横軸(Mの物質量)の値が0.50や1.00のときは考えなくて良いのです。この場合, 縦軸の値が減少に転じた, 横軸が2.00(×10^(−2) mol)のときが大切なのです。

注目するところ

このターニングポイントでの縦軸の値は1.0(相対値)であり, 問題文より生成する酸化物の質量が最大のときであることがわかります。横軸を見るとMの物質量は2.00×10^(−2) molなので, あとは問題文よりO2の物質量が3.00×10^(−2) [mol]−2.00×10^(−2) [mol]=1.00×10^(−2) [mol]であることを読み取ります。今回話題の化学反応は化学反応式では, xM+(y/2)O2 →MxOy
で表せますが, このターニングポイントで生成する酸化物の質量が最大となるので, この物質量比で過不足なく反応することがわかります。以上よりx:(y/2)=2:1 であるから, x=y=1, すなわち組成式はMOとなります。

この見方は汎用性が高く, 他の問題でも活かせます。難関大を受験する学力層にとっては容易かもしれませんが, たとえ化学を教科書でしっかりやった人でも「んっ?」てなる人はいるので, 化学の内容をわかりやすく教えるだけではこの辺の考え方を伝授していきたいと考えております。


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