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共通テスト化学・化学基礎 ~問題ピックアップ

今年度共通テスト受けた人は結果が良かった人も悪かった人も復習だけしたら過ぎたことは忘れましょう。以下は今年度共通テスト受けてない人向けです。問題・講評は以下のサイトを参考にしてください(なお, この先に述べることは趣味の範疇, 一個人の感想が多いです)。
https://sokuho.yozemi.ac.jp/kyotsu/

話が広げられそうな問題

化学基礎第2問

理系ならモール法(沈澱滴定)として知っておいてほしい話。ざっくり言うと, やりたいことは水溶液中での$${\rm Cl^-}$$の定量であるが, 元々水溶液にあった$${\rm Cl^-}$$がほぼ全てAgClの沈澱となったのち, $${\rm Ag_2CrO_4}$$暗赤色の沈澱ができるので, その暗赤色の沈澱ができたときを終点とすると, 目視で容易に終点を判断できることを利用している。AgClが先に沈澱し, $${\rm Ag_2CrO_4}$$が後で沈澱することは溶解度積から判断可能。また, $${\rm Ag_2CrO_4}$$の沈澱が生じ始めるときの$${\rm Cl^-}$$, $${\rm Ag^+}$$の濃度については小さいから無視する。厳密には$${\rm Ag_2CrO_4}$$が生じているため, $${\rm Ag^+}$$は$${\rm Ag_2CrO_4}$$の中にもあるが, 理想的にはなるべくこれができてすぐ止め, 終点=当量点とすることで, そのとき加えた$${\rm [Ag^+]= [Cl^-]}$$として考える($${\rm Ag_2CrO_4}$$が生じ始めた時点では$${\rm Ag_2CrO_4}$$の沈澱の量を0として考える)。この実験で強い酸性下で行わないのは問いにある通り$${\rm CrO_4^{2-}}$$から$${\rm Cr_2O_7^{2-}}$$になるから。また, 塩基性下で行われないのは, $${\rm Ag_2O}$$の沈澱が生じるから(AgOHは不安定)。
問2は答え自体は滴定だからビュレットと選べば良いだけだが, 褐色ビュレットを用いるのは硝酸銀も感光性を示すから。なお, 過マンガン酸カリウム滴定, CODも同様にして褐色ビュレットを用いる。

化学第2問問4

aの答え自体は$${\rm MnO_2}$$が触媒なので変化しない(酸化数も変化しない)という話がわかればいいのだが, この化学反応において触媒に使えるものは特定の物質に限らないこと(この反応の触媒としては$${\rm MnO_2}$$(不均一触媒)が有名だがカタラーゼでも$${\rm FeCl_3 aq}$$(均一触媒)でも良い)も注目に値すると思っている。触媒には反応選択性を有する場合もある。例えばギ酸の分解は通常高校範囲内では濃硫酸を触媒とし, 一酸化炭素と水に分解されるが, 貴金属触媒では二酸化炭素と水素に分解するという反応経路をとる。
またcもむしろ酵素の話で似たような話を見ることの方が多い気がする。

化学第4問問4

油脂の問題はやはりステアリン酸3分子とグリセリンがエステル化してできる油脂の分子量を890で覚えてしまう方が断然有利かな…基本的に油脂の問題で出てくる高級脂肪酸は限定されるので。
また, bは過マンガン酸カリウム酸化(C=C二重結合の開裂)を意味するのだが, これは手持ちの少し古めだと発展にのっていた内容なので, あまりピンと来なかった人もいるかもしれない…(もっとも両方が反応したので, 片方が飽和, もう片方が不飽和という線はないと判断可能)。

化学第5問問3

一番のニュースはこの問題かなと思う。ランベルト-ベール則を話題にした問題で, 私自身の元専門(?)が一応分析化学だったので馴染みはある。
受験生にとって馴染みはないし, ここまでで時間がもう一杯だと思うので手をつけていない人が多いとは思うが…。ただ, さすがに誰もこんなもの知らないだろうと考え, この問題はその場で問題文をよく読んで正しく計算する問題で知識がいらない, と考えればちょっとは気は楽になるのではないでしょうか。
ランベルト-ベール則 $${-\log_{10}{(\frac{I}{I_0})}=\epsilon cL}$$($${\epsilon}$$ は比例定数)は問題文から読み取れる情報。方眼紙は用意されているものの, 多分表のデータが$${\log_{10}{T}=-\frac{1}{30} c}$$ …(*)であることが分かれば, T=0.80のとき$${\log_{10}{T}=\log_{10}{(\frac{2^3}{10})}=3\log_{10}{2}-1=3\times 0.30-1=-0.1 }$$なので, (*)より答えが出せるのではないかと思う。また, L→2Lにすると, $${\log_{10}{T}}$$が2倍になるので, Tは$${T^2}$$になる, すなわち0.8は0.64になることがわかる。結局, 化学の問題はかなり数的処理能力が問われるので, そこを強化するのも化学の勉強, あるいは化学の先生の仕事かなとは思う…。実際, 高校数学程度は大学以降の化学ではある程度前提になっているのではと私自身は感じている。
ところで, この問題を解いてるとき, そういえば化学工学で反応器(CSTR)が直列に2倍に配置される設定の問題で反応率(残存率?)が1つ1つの槽の反応率の積になっているのを思い出し, 知識って繋がっているなということを実感した。

難しいかなと思った問題

上にあげた問題は除く。

化学第1問問3

初めの2問がするすると行くのに対し, 時間がかかる問題。しかも問題訂正もあり, 無駄にノイズがあるのが厄介。混合気体ではあるので, 構成する気体ごと・圧縮前後でそれぞれ状態方程式を作るのが定石。結局, 水蒸気のみを考えればOK。水全部のmolは圧縮前から計算可能。圧縮後の水蒸気(気体)の方のmolは圧力が6/5倍, 体積が1/3倍なので, 圧縮前の2/5倍。すなわち, 液体の方は全体から気体の分を引けば良い。というのが方針だがどうだろう, 焦ってると気体のmolを求めそうだし, 余計な全圧などの情報に惑わされそう。訂正の全圧3.0×10^5 Paは水蒸気のことを考慮していなさそう。

化学第3問問3

この問題は何か面倒だなと思った問題。ベリリウムが答えになることはないだろうな…とか余計なことを考えていたが, 1・2族について取り敢えずHCl, H2Oとの化学反応式を書き, 金属が未知なので原子量を取り敢えずX, Yとして計算してちょうど良いものを選ぶという問題。Na, Mgが間なのでそれを基準に計算してもいいと思う(実際に今回はそれが答えだし, 大きい/小さいとかだったらそうじゃない選択肢を選べばいいし)。グラフだけど使うのはそれぞれ1点で良い問題。
単純に時間がきつい(予備校講師だと30分くらい(生徒の半分の時間)で解けるなら理想的だがそうもなってないので…)ので, こうした問題も詰まったり時間かかりそうだったりしたら飛ばすのが吉。

大切だなと思った問題

化学第1問問4b

結晶の問題が終わった後にちゃんと単位・対象を考えているか見るのに適していると思った。

化学第2問問2

電気分解の問題の中では基礎的という印象。なぜなら「+と繋がっているのが陽極」「陰極からは水素が出やすい/陽極からは塩素・酸素が出やすい」こと, 「イオン化傾向が高いものの単体は水溶液のの電気分解によっては得られない」というポイントを利用するため。

化学第2問問3

平衡状態では平衡定数Kを考えよというポイント通り。

化学第3問問1・2

無機化学の基礎的な内容なので間違えた場合は要復習。

化学第4問問2

酸どうしが反応する/塩基どうしが反応する状況は稀であり, 芳香族ではよく酸・塩基がポイントになってくるという意味で, 今回あまり有機・高分子が多くはないが重要なところが問われている印象。

化学第5問問1

aは反応の分類/機構をちゃんと考えているかが鍵となっており, 弱酸遊離反応なのでは?と考えられれば硫酸ナトリウムではないことがわかる。化学反応式丸暗記派を撲滅する問題で良いと思う。
bは答えを選ぶのは基本的かも(ルシャトリエの原理)。平衡と反応速度の違いがわかっているかを試す選択肢③と平衡の定義的な選択肢④を配置しているのは良い。

化学第5問問2

ヨウ素滴定。半反応式は与えているが, 線分図を書いてまとめて, セオリー通り, (酸化剤の受け取る電子の総mol)=(還元剤の出す電子の総mol)を考えたかどうか。途中で電子と物質が混乱しなかったか。文章で1ヶ所ひっかけで4.80 mLと書いてあるが最終的に5.00 mL滴下したことに注意できたか, など受験生を陥れる箇所はまあまああるのであまり焦らず解くのが重要。

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