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ドスケベマン

23
ドスケベマンを分けました
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記事一覧

ドスケベマン(23)

前回のあらすじレジスタンス組織壊滅のため虐げられていた女性を保護するマリリン。
彼女の狙いは。

―――トラックが石を踏んで跳ね、まどろんでいたミオはびくりと体を震わせた。
トラックに乗せられてからどのくらい経っただろうか。
乾いた風に鉄のような海の匂いが混ざり始めていた。
海岸線を走るトラックの先に、白く四角い建造物がいくつも見えた。
「ねえ、これからどこいくんだろ」
「わかんない、でもあそこよ

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ドスケベマン(22)

前回のあらすじ南関東地区を治める美しき四天王マリリン。
レジスタンス解体を目論むマリリンの動向は。

―――張り付くような暑さと息苦しさでルミは目を覚ました。
窓に打ち付けた板の隙間から糸のように細い光がところどころ差し込み、部屋の中をうすぼんやりと照らしている。
ソファから身を起こし小さく頭を振った。今は何時くらいだろうか。
足の踏み場もない狭い部屋の中には自分が今まで身を横たえていたソファとマ

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ドスケベマン(21)

南関東地区。
ここは、かつて輸送の基地としてにぎわった港湾地帯の人工島を中心に、関東地区以外の地域との交易や交渉を行う商業地帯が広がっている。
メタリックな巨大建築物や大規模な施設はそのままドスケベアーミーの武器や装備、加工食品や衣類まで様々な工業製品の生産拠点となっていた。
その生産に携わる人々は皆希望に満ち溢れた顔をしており、ドスケベアーミーたちも活気が溢れていた。
ドスケベがなく明るく清潔な

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ドスケベマン(20)

「――あ、そ」
緊急の報を持ってきたドスケベアーミーから内容を聞くと、マリリンはつまらなさそうにあごをしゃくった。
「あのババアが、ね」
報告したドスケベアーミーはその無関心さに戸惑っていた。
「――マリリン様」
マリリンの横にずっとたたずんでいたドスケベアーミーがマリリンに声をかけると、面倒くさそうに報告した兵のほうを向く。
「援軍は、ドスケベキングに許可を得てから送るわ。それまでは現地基地を防

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ドスケベマン(19)

前回のあらすじ圧倒的な力でアーマード倫理観と戦うドスケベマン。
その最中、アーマード倫理観の暴力は矛先を変えてユウキに向かった。

―――血泡を吐きながら、巨体はユウキに突進する。
とっさに後ろにのけぞると、その突きだされる拳は風を切ってユウキをかすめた。
「殺して、やる」
振り下ろされた拳とは別の手がユウキの頭を掴んだ。
先ほど見た光景と、そしてユウキの母と、ハルカと同様にそのまま大地に頭を叩き

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ドスケベマン(18)

前回のあらすじ

逃げ道を封鎖され絶体絶命のコウタロウとユウキ。
タカシがそれを切り開いたと思ったのもつかの間、アーマード倫理観がそれを阻む。
ついに死を覚悟したその瞬間現れたのは、ドスケベマンであった。

―――

「な」
男の名乗りに空気が凍る。
アーマード倫理観は目を見開いた。
「お前、いい女だなあ」
ドスケベマンと名乗る覆面の男はマスクから見える目を細めた。
「あと10年……いや5年したら

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ドスケベマン(17)

前回のあらすじ封鎖され、万事休すかと思われたユウキとコウタロウ。
しかしそれをタカシが打破する。
未来のために、トンネルから脱出しようとした瞬間、アーマード倫理観が現れた。

―――「あ……」
黄昏の中、大きな巨体が見える。そして、その周りには何人かのドスケベアーミーもいた。
「――くそっ!」
タカシが走りながらドスケベアーミーを、アーマード倫理観を撃つ。
コウタロウは渾身の力で、銃弾から身を隠そ

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ドスケベマン(16)

前回のあらすじハルカを屠り、レジスタンスの皆殺しを命じるアーマード倫理観。
その企みに気付き走るタカシ。
島からの脱出のため、トンネルに向かうユウキとコウタロウ。
血の臭いに満ちた島に何があるのか。

―――茂みや木の陰、物陰に隠れながらユウキとコウタロウは走り続けた。
日の光は紫がかった色になり、夕闇がすぐそこまで押し寄せてきている。
夜になれば、敵にも見つかりにくくなるだろうが、海の音をかき消

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ドスケベマン(15)

前回のあらすじ生きるために逃げることを選ぶコウタロウ、迷うユウキ。
一方、ハルカはアーマード倫理観の圧倒的な暴力に打ちのめされていた。

―――ハルカの耳の奥で、頭蓋骨のみしみしときしむ音が聞こえる。
頭をつかまれ引き起こされ、上手くピントの合わない瞳に、アーマード倫理観のニタニタと笑う目が映った。
「……り……」
「は?」
アーマード倫理観がうめき声にも似たハルカのかすかな声に聞き返す。
「……

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ドスケベマン(14)

前回のあらすじついに八景島へ攻め込むドスケベアーミー。
交戦するドスケベ解放同盟、走り出すコウタロウとユウキ。

―――振動とともにバリケードがまるで綿のように千切れ飛ぶ。
辛うじてハルカのいる位置はまだ壁が残っているが、もう瓦礫のほうが多く思える。
「うあああああああああっ!!」
ハルカは吠え、最後の手榴弾をこちらへ走ってくるドスケベアーミーの真ん中へ投げる。
爆発とともにドスケベアーミーの塊の

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ドスケベマン(13)

前回のあらすじ生きる希望を得たユウキ。
それを見守りながら夢を語るハルカ。
始まったばかりの日常は、アーマード倫理観の声によって崩れ去った。

―――「敵は何人だ」
タカシは武器を手に駆け込んできた男に聞く。
「とにかくたくさんだ。少なくともこっちの4倍はいるな」
「武装は」
「全員ばっちり」
自分を落ち着けるためにタカシは息を吐く。
「全員持ち場に付け!」
外のノイズ交じりのがなり声はいまだ続い

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ドスケベマン(12)

前回のあらすじ

ドスケベ解放同盟に迎え入れられたユウキは、そこでタカシの思いを知る。
一方、アーマード倫理観は着々と南下していた。

―――

朝の光にゆっくりと目を開くと、そこは青い光に包まれていた。
「あれ、私……」
驚いて身を起こし、そこでようやく自分がドスケベ解放同盟のアジトにいることを思い出す。
透明の壁の上の方からゆらゆらと光が差し込み、それが青い壁に反射して室内を青く照らした。

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ドスケベマン(11)

前回のあらすじアーマード倫理観は村の人間を皆殺しにし、次の村に向かう。
すでにユウキの行く先を知っているかのようなアーマード倫理観。
一方ユウキは。

―――「服のサイズ、大丈夫?」
カーテンの中で着替えるユウキに女性が声をかけた。
「あ…えっと、これでいいですか?」
カーテンの中からユウキが出てくる。
上は肘くらいまでの袖のTシャツ、下は青い生地のショートパンツだ。
これがTシャツと呼ばれる衣服

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ドスケベマン(10)

前回のあらすじドスケベ解放同盟のコウタロウとタカシに出会ったユウキ。
3人はアジトのある八景島へ向かう。
一方、村ではアーマード倫理観がユウキの母を手に掛けていた。

―――ユウキの母だったものから赤い液体があふれ出る。
まるで水に飢えた民衆のように大地はその赤い液体を飲み干そうとするが、それでも溢れたものがゆっくりと円状に広がっていった。
強い鉄の臭いにおびえた子供が一人逃げ出そうと駆けだしたが

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