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【オーストリア】美術史博物館ほか

2020.02.25-29 訪問

せっかくの春休みということで、オーストリアに行ってきました!本場のミュージアムをこの目で見てきたので、見に行った中から3つ、ここで紹介したいと思います。

美術史博物館 Kunsthistorisches Museum Wien

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美術史博物館内部。天井近くの絵の一部はクリムトが手がけています。

オーストリアに来て一番最初に入ったミュージアムです。外装・内装共に宮殿と見紛うほどの豪華さで、おいおいこれ博物館かよマジかよすげえな、と「田舎者」思考丸出しの感想しか最初は出てきませんでした。そのあまりに豪華な室内にはハプスブルク家の歴代皇帝のコレクションが展示されています。開館直後くらいから5時間以上見ていたはずなのですが、しっかり観られたのはひとつのフロアの、しかも半分だけ。工芸品を中心とした展示エリアでした。時代と経緯ごとに大まかに部屋が分けられており、それぞれの部屋についてはもちろん、大体の展示品・展示ケースについてドイツ語と英語で解説がありました。英語がある程度読めるとはいってもネイティブではないので読むのには時間がかかるのですが、時間をかけてでも解説を読みたいと思えるような、興味深くて、しかも美しいモノが揃っていました。英語もさほど難解なものではなかったですし。

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ルドルフ2世のコレクションの一部。手前と中程のがオートマトン、奥が時計。

私のお気に入りはルドルフ2世のコレクション。時計やオートマトンなどが展示されていたのですが、どれも金銀宝石でただキラキラしているだけではなく、細部にまでこだわり抜かれた美しさがあって、ただ眺めているだけで胸が踊りました。工芸品エリアだけで小さな図録が作られている程度には充実した展示でした(日本語版があったので購入しました)。ただ、時間がかかりすぎて、絵画など、このミュージアムの他のコレクションがあまり見られなかったんですよね…次来たらリベンジしたい…。

レオポルド・ミュージアム Leopold Museum

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レオポルド・ミュージアムの外観。
Museum Quartier Wien (通称MQ) 内にあります。

レオポルド夫妻のコレクションを中心に展示したミュージアムです。美術史博物館とは違って、シンプルな外装と内装の、よく知る美術館のつくりになっていますが、個人名を冠してここまで大きなミュージアムを作ることができることにまず驚きました(地下1階5階建)。有名なのは、世界最大のエゴン・シーレの作品コレクションです。もちろんクリムトの作品などもあります。

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展示の一部。家具類。

今回訪れたのは、かつて国立新美術館でやっていた「ウィーン・モダン」展で観て惚れてしまった19世紀末のウィーンの絵画や家具類をもう一度観たい、という思いからでした。折良く「WIEN 1900」展をやっていましたし。日本で観たことのあるモノないモノいろいろ観られて嬉しかったし楽しかったし、やっぱりこの時期のウィーンの作品が好きだな、と再確認したのですが、何より一番嬉しかったのは、私が「ウィーン・モダン」展で一目惚れした作品である、ハンス・マカルトの『メッサリナの役に扮する女優シャーロット・ヴォルター』を観ることができたことです。

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ハンス・マカルト『メッサリナの役に扮する女優シャーロット・ヴォルター』  

白い衣装と人物、闇とその中の炎の揺らめきと、柔らかな筆致で描かれながらもその瞳からは女性らしい強さを感じるこの絵。これが観られたらウィーンに来た目的は半分達成したと言っても良い、でも保存の関係とかあるから難しいだろうなあ、と思っていたところでの再会だったので、出会えた喜びは一入でした…嬉しかったなあ…。この出会いも含め「WIEN 1900」展全体が楽しいと思えたので図録を購入しました。

公式サイトはこちら(なぜか埋め込みができない…)。

ベルヴェデーレ宮殿上宮 Oberes Belvedere

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ベルヴェデーレ宮殿上宮の外観。

宮殿ですがれっきとしたミュージアムです。外装・内装はもちろん庭も美しい。ここにはかの有名なクリムトの『接吻』があるということで、美術史博物館での教訓を活かし、真っ先にそれが置かれている場所に向かいました。

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グスタフ・クリムト『接吻』

その絵を目にしたとき、あまりの美しさにしばらく立ちつくしてしまいました。日本美術の影響を受けてか金箔が使われているのですが、全く派手ではなく、むしろ控えめな高貴さをこの絵に添えていました。どんな写真もレプリカもこの絵の気高さや美しさを表現できない、と思いました。写真は撮りましたが、確かに実物をその目で見たという記録を残す以上の役割は果たしていません。これはおそらく門外不出の作品でしょう(東京都美術館の「クリムト展」でも見ませんでした)。外に出して壊れるリスクをとる方が怖い、と考えるのもよくわかります。このミュージアムには、教科書にも出てくるナポレオンの絵画やフェルメールの作品などの著名な作品が多く並んでいて、確かにどれも素敵だったのですが、『接吻』を観たあとだとどれも霞んで見えました。

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『接吻』を触覚的に紹介するボード。
下の方に点字による説明ボードも収納されています。

あと、このミュージアムの素晴らしかった点として、主要作品について触覚的に紹介する視覚障がい者向けのボードがかなりしっかりしていたことが挙げられます。視覚がどうしても優位になるミュージアムで、視覚の機能が弱い人が展示を楽しむにはどうすれば良いか、という課題に対する回答の一つですが、日本では管見の限りここまでやっているのを見たことがないです。

私は今回初めてヨーロッパに行きました。もちろんヨーロッパのミュージアムに行くのも初めてだったのですが、日本では特別展を称してやってくる作品が、このように常設展で並んでいる様はなかなか衝撃的でした。しかし、日本人である私にとってはこれらの展示も結局「特別展」に過ぎません。このような絵画に常に触れているかの国の、ひいては欧米の人々は確かに文化の「中心」にいて、外から「特別展」を楽しむことしかできない私は永遠にそこに行くことはできないのだ、と思いました。だからこそ、日本美術は欧米の人々にとって衝撃的でエキサイティングなものであり、私は「中心」という考えから離れて欧米の人々が持ち得ないような視点で美術やミュージアムを考えていく必要があるのでしょう。この旅行では他にもいろんなものを見たし、どれをとってもとても楽しかったのですが、自分の今後の研究(と呼べるほど大したものではないかもしれませんが)を考える上で良い機会になりました。有意義な時間でした。  

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