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胡桃を噛んで泣く大人

高層階の窓際カウンター席で
ふわふわと踊る雪を眺めながら
わたしはカフェラテを飲んでいる

季節の変わり目にあらがうように
わたしをもっとみて!もっとみて!
と言わんばかりの雪が降っていた

猛烈に吹雪いてみせたり
隠れ損ねた真っ黒くろすけの様に
ふわりふわりとただよって
下から上へ
右から左へ
舞い踊ってみせる雪

なんてきれいで可愛いんだろう


今日のカフェラテの相棒には
ガトーショコラと迷ったけれど
ナッツとクリームチーズの蜂蜜なんちゃら
ブレッドを選んでみた

歯応えがあって甘じょっぱい
それでいて、わずかにふりかけられた
ブラックペッパーもピリッと効いている
見せかけだけのお洒落な食べ物じゃなくて
良かった
肌にも良さそうだし
血糖値はゆるやかに上がるはず

なんて半分冷静に食分析しつつ
胡桃を噛んでは
ぽろんぽろんと涙をこぼしていた

(カフェの片隅で泣いてたら怪しくない?
怪しくなくても心配じゃない?
大丈夫です、そのうち止まるんで…みたいな
反応シュミレーションもよくするんだけど
そういえば声をかけられたことなんて一度もないや)

落ち込んで何かを引きずっている訳でもなく
絶望に打ちひしがれているわけでもない
涙脆いだけである
数時間前に一度泣くと(泣いたんかい)
その日はもう箸が転げても涙をこぼせるのだ



つくづく繊細な生き物

わたしの魂の器は
不器用で愛おしい
もどかしくて可笑しい

自分の取扱説明書を読みながら
大事にしてあげる方法を考えながら
きょうも生きている

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