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リレーストーリー「どすこいスパイ大作戦#6」

第6話「暗号」

パチンパチチ、パチン、パチチ

“これは暗号だ!“

蒙古龍はハッとして、黒豹丸の目を見る。
黒豹丸の目が頷いている。

この暗号、「国際スパイ協定」を結んでいる国の間で定めた秘密の暗号言語。
これを知っているのはその国のトップクラスのスパイのみのはず。
ということは、黒豹丸は・・・。

パチッパンパンパチパチ

“君はもしかしてスパイ?“

蒙古龍は黒豹丸の胸に張り手をかます。

“そうだ、君もだろ“

黒豹丸が張り手で答える。

“なぜ分かったんだ“
“新宿のホテルに行っただろ“

ドキッ!
蒙古龍の心臓がビクついた。

まさか、あの爆破計画は黒豹丸が⁈
あの時聞こえてきたのはエチオピア語か⁈
それならば、会話が分からなかったのも納得がいく。
ん⁈待てよ、エチオピア語なんてのはあるのか?

しかし、なぜ自分があそこにいたのがバレたのか。
監視カメラは見当たらなかったが・・・。

“何故それを知っている?“

動揺を隠しながら張り手で聞く蒙古龍。

「おう、気合いが入っているな。伸び盛りの奴はやはり違う。お前たちも見習えよ」

パチパチパチパチと張り手の応酬を繰り広げる蒙古龍と黒豹丸。
その姿を見て蒙古龍の親方、かつて「土俵の鬼」と恐れられた富士乃湖親方が目を細めながら周りの弟子達に言う。

“香り。鬢づけ油の“

鬢づけ油―――
相撲取りがマゲを結うにあたり使う油として有名だが、最近はその香りを自分好みのものにするのが関取の中でちょっとしたブームなのだ。
御多分に洩れず蒙古龍も鬢づけ油の香りにはこだわりがあり、オリジナルブレンドの香料で自分ならではの香りを楽しんでいる。
ちなみに、こだわりポイントは「草原を感じる香り」だ。

なぜ自分があの新宿のホテルにいたことがバレたのか、理由は分かった。
だが、肝心なのはそこではない。
蒙古龍は核心に迫るために張り手をかます。

“ズバリ聞く、爆破を計画しているのか?“

黒豹丸の目がキラリと光る。
図星か。

“逆だ“
“逆⁈“
“俺は、あのテロ集団を追って日本に来たんだ“
“テロ集団⁈“
“そうだ、あいつらは国際的テロ組織だ。ついにあいつらのアジトを突き止めて、あの日踏み込んだんだが一足遅かった。俺が行った時は既にもぬけの殻だった“

あの新宿のホテルに黒豹丸が。

“そしてその廊下には微かな香りが残っていた。さっきあんたと組んだ時、その香りがしてな“
“そうだったのか。しかし、すごい嗅覚だな“
“まあな、ちなみに視力は8.0だぜ“
“それもすごいな。それはそうと、連中は『爆破計画は順調に進んでいる』と言っていたぞ“
“やはりそうか、なんとしても阻止せねば“
“ところで、爆破計画の場所はどこなんだ?“
“東京スカイツリー“
“スカイツリー⁈“
“奴らの計画は各国の象徴的タワーを次々と爆破していくこと。それによって市民の心と経済にダブルでダメージを与えていく作戦なのだ“
“象徴『首相』ではないんだな“
“日本の首相、あんなもん誰がやっても同じだろ“
“確かにな。で、どうするんだ?“
“日本にいる国際力士スパイの力を集結させる“
“他にもいるのか⁈“
“外国出身の力士、1人は必ずスパイだぞ“
“そうだったのか⁈“
“ああ、追ってまた連絡する“

張り手の応酬、いや暗号の応酬で真っ赤になった蒙古龍の胸板。
それを見て満足そうに頷く富士乃湖親方。

しかし、日本の危機は目の前に迫っているのだ。

(つづく)

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