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物語のタネ その壱『お留守番ヒーロー #4』

俺の名前は、滝沢さとし。
表の顔は、高齢者向け介護士だけど、もう一つの顔は

「お留守番ヒーロー」

ヒーローの留守を預かり、出現した怪獣、怪人をもてなすのが俺の役目。
ウルトラマンに仮面ライダー、そして前回はスペクトルマンにてご活躍された「宇宙人ゴリ」さんとの思い出をお話しさせてもらって。
本当に日本はヒーロー大国ですからね。
快傑ライオン丸、ミラーマン、キカイダーにゴレンジャーなどなど、まだまだいっぱいいらっしゃいます。
ということで怪人怪獣さんも沢山いらっしゃるのですが、今回は、やはりこの人との話をしたい、王道ウルトラマンに出ていらしたこの方、

「ジャミラ」さん

なかなかね、ジャミラさん、色々あってちょっと面倒く、いや、気を遣わないといけないお相手なんですよねー。

ジ「いないんでしょ、どうせ」
お「あー、もうすみません、いやあの、1日違い、ウルトラマンさん、昨日までは地球にいたんですけどね、今日からどうしてもM78星雲で外せない用事があるってことで」
ジ「ふーん」
お「あの、でも気にしてましたよ、そろそろなんじゃないかな〜、なんて。くれぐれもよろしくお伝えください、って言ってました」
ジ「いや、俺もわかっているよ、ウルトラマンが気を遣ってくれているのは」
お「ですよね〜」
ジ「ま、いいか。お前もいいぞ帰って、面白くもねえだろ俺といても」
お「何を言いますか、逆にチャンスって感じですよ」
ジ「えー、何が」
お「だって、ジャミラさん、ご本人がどう思われているかは分かりませんけど、ウルトラ怪獣メジャーランクグループの中でもかなりトップですよ。そんなジャミラさんと二人きりで話せる機会なんてそうそう無いですからね、ウルトラマンM 78星雲に帰ってくれてありがとう、の気分ですよ」
ジ「はいはい。しかし、いいよなウルトラマンは。故郷があってな」
お「いや、ジャミラさんも」
ジ「そうよ、地球よ。だって、俺、元地球人だもの」
お「ですよねー」
ジ「まあ、厳密に言えば、元でもないけどね、地球人よ、俺。でもさ、こんな容貌の地球人いないだろ」
お「いや、でも人間でも肌の黄色い人もいれば白い人や黒い人もいて、顔だってバラバラじゃないですか。それに、ほら、その肩と首の筋肉の盛り上がり、プロレスラーのダイナマイトキッドとかロードウォリアーズなんかとそっくりですよ」
ジ「なに一生懸命合わせてんだよ。じゃあ、聞くけどな、俺の肌、粘土質 なんだぜ。乾燥肌、脂性肌、ってのはあるが、粘土肌なんてあるか?粘土肌」
お「まあまあまあ、肌の悩みは人それぞれですから」
ジ「別に肌の悩みを聞いてもらってんじゃねえよ、生物としての分類の問題」
お「いや、なんて言うのかな、その唯一無二な感じ、俺なんか逆に憧れちゃうけどな」
ジ「よく言うよ」
お「いや、ホントですって。個性と言えば、なんと言ってもあの倒され方ですよ。もう、ウルトラ史上の名場面中の名場面ですよね」
ジ「あのウルトラ水流でやられたやつ?」
お「そうですよ、もうみんな号泣ですよ。勧善懲悪のヒーローものであんな人生の不条理?を考えさせられる悲劇を描けるなんてないですよ、さすがですよジャミラさん、いや、もうジャミさん、って呼ばせてもらっていいですか?」
ジ「ダメだよ、何調子乗ってんだよ」
お「あ、すみません、調子乗っちゃいました」
ジ「あのね、俺だって本当はスペシウム光線浴びてバーンと派手に散りたかったよ、やっぱ。でも、水だぜ、水。それが弱点だったからさ、弱点は自分で選べないからさ、仕方ないけど、水だぜ。ウルトラマンだって、きっと心の中では、えー、水かよ、って思ってたと思うよ。スペシウム光線を出すこのウルトラマン様の手から、水ですか?ってね」
お「まあ」
ジ「じゃあ、消防車でよかったじゃんってね。俺だって忙しいんだから、水だったら人間でなんとか対処しといてよー、って思ったと思うよウルトラマン」
お「いやいや、ウルトラマンさんにしてみても、新しい個性が出せて良かったと思いますよ」
ジ「個性ったって、それでなんかあるとしたって、正月の演芸番組にキャスティングされるくらいだろ。俺にしてもさ、バーンって一思いに終わんないからさ、苦しかったしねー」
お「そうですよね、苦しいですよね、甲殻アレルギーで蕁麻疹が出ちゃって痒くてしょうがない、って感じですものね」
ジ「アホか、そんなレベルじゃねえよ、蕎麦アレルギーだよ」
お「うわ、それは苦しい。下手すると死んじゃいますもんね」
ジ「だから、俺死んじゃったじゃねえか。まあ、なんとか生き返ったからよかったけど」
お「はい、ほんと良かったです。でも、そのリアリズムが、あの名シーンを作ったんだなって今、ガツーンと分かりました」
ジ「まあな」
お「繰り返しになりますけど、ジャミラさんはどう思われているかどうかは別にして、あの最後のシーンは本当に名シーンですから」
ジ「まあ」
お「だって命懸けじゃないですか。勿論、皆さん命懸けですけど、他の方々は、ジャミラさんみたいにあんな長時間に渡って死ぬような苦しみを見せつける、なんて事は出来ませんよ。バーンって死んじゃうなんて、こう言っちゃなんですが楽ですよ楽。あんなシーンはジャミラさんじゃなっきゃ出来なかったですよ。THEリアリズム、ウルトラ怪獣界のロバート・デ・ニーロですよ」
ジ「ま、まあ、俺もデ・ニーロは好きだけどな」
お「あー、やっぱり」
ジ「だからあのシーンもな、初めて話すけど、実は俺からウルトラマンに頼んだんだよ」
お「えー⁈」
ジ「ウルトラマン、大切なのはリアリティなんだよってな」
お「そうなんですか⁈」
ジ「最初は渋ったけどな、あいつも。えー、水かよって。あと、あいつにも相手を華々しく散らせてあげないと、という美学というか優しさがあってな。ジャミラ、本当にそれでいいのか⁈って何度も聞かれたよ」
お「まあ、そう思いますよねー」
ジ「三日三晩話したよ。で、俺は言ったのよ、時代はリアリティを求めてるんだ、そして人間の目は誤魔化せないよ、元地球人の俺が言うんだから間違いないって」
お「うん」
ジ「そうしたら、やっとわかってくれて。お互いね、成長したシーンだね」
お「そんなことがあったんですか。私、今、モーレツに感動していますよ、ジャミさん!」
ジ「なんだよ、ジャミさんって」
お「あ、すみません!」

いやー、ジャミラさん、本当のプロ、職人なんですよね。
勉強になりました。
でも、次会ったら、また緊張するなー。


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