猫の命を考える

 猫が好きだ。猫に限らず動物全般が好き。動物の仕草や生き方そのものを愛らしく思う。
犬と猫は人類史に深い関わりのある動物で、愛玩動物の代表格といっても過言ではない。
私の周りは猫を飼っている人が多かった。所謂猫派が多く、犬より猫と触れ合う機会が沢山あったから自然と猫派になった。
勿論犬も好きだけど、どちらかといえば猫派。

 犬を飼うのはなかなかハードルが高い。毎日散歩に行かねばならないし、吠えたり噛んだりという問題が出てくるから躾は必須。それから毎年、狂犬病の予防接種もある。
もっと細かくいえば、犬が遊べる程度に庭があった方がいいとか犬種によっては暑さ寒さへの注意の仕方も変わってくるとか、犬小屋を用いて外で飼うにしても鎖できちんと繋いでおかねばならないとか、設備を含む準備と知識が要る。
 一方、猫というのはやたらと飼うハードルが低い。猫には躾の概念が通用しないところがある。躾けるとしても最低限、トイレの位置ここです、あなたのご飯はこれに入れます、よろしく、みたいなニュアンス。
そして猫の予防接種は現在、法的義務がない。
決まった時間に散歩に連れ出すこともないし、庭や鎖がどうこうというのもなく、気軽に飼えてしまうところが否めない。

 私個人の考えとしては猫がロードキルされてしまうのも嫌だし、無関係の住人が糞尿被害で迷惑被るのも嫌だし、猫エイズの蔓延なども嫌だから飼うからには絶対に室内飼いがいいと思う。
何故か猫に関してはのびのびさせてやらないのは可哀想、出て行きたがるから仕方ない、近隣住民も可愛がっているから、昔からそうだったなどの理由で未だに外飼いがまかり通っているのが不思議で仕方ない。
そんなこと言ったら犬だってのびのび走り回りたいじゃん。犬が脱走したら仕方ないで放っておけるの?近隣住民全員に猫かわちだから糞尿被害気にしないよ〜て言質とったの?この世が放し飼いの野犬だらけでもいいんか?となる。
 犬猫は長い年月をかけて野生動物ではなく愛玩動物として地位を確立してきたのだし、残念ながら人間社会が高度に発達した(交通や土地などの)分、野生の習性を適用させられるような環境ではなくなっている。
今更中途半端に野性を持ち出す方がエゴに感じる。
人間だって元々は衣服など身に纏っていなかったんだよとか言われても困っちゃう。風邪ひくし怪我するし法的にアウトだし。

 生き物を飼うからには快適に、余計な苦労を知らず寿命を全うしてほしい。
過酷な暑さ寒さも、車に轢かれるリスクも、今日のエサと寝床を毎日探すことも、猫エイズに罹ってしまうことも、何にも知らないで幸せに生きてほしい。
家族、恋人、友達など親しいひとに思うのと同じである。
なんなら生まれを選べない親や兄弟とは違って、自分で迎え入れようと決めたこと、更にそれが自分よりも弱い存在であるなら子供をもうけるような責任が発生していると思う。
※だからといってこの子(ペット)は我が子!と他人に強要するのはトラブルのもとになるからあくまで命に対する責任の重さという点の話ね。

 室内で飼う場合も犬同様、設備はきちんと整えるべき。トイレ、爪研ぎ、寝床(ケージ)、それから安全に過ごせる空間。
登ったらダメなところを躾けるより、登れないようにしたり触れないように先回りする工夫が求められる。
これは乳幼児の誤飲や怪我を防ぐのと変わらない。
知恵があり、やられたら困る方が配慮する。それは当然のことなのだ。
 あとこの辺りは各々の価値観が大きく別れるところではあるが、避妊・去勢を施すことも重要だ。
子供を産ませ更にその子供も育てる予定があるなら別だけど、もしもペットの生涯で繁殖する予定がないのであればした方がいいと私は思う。
メスとオスとでそのメリットは多少異なるが、病気のリスクや発情期の声・マーキングの問題を減らすことが出来るし、万が一脱走した場合外の猫と接触して妊娠した・させたが起きることもなくなる。
手術であるからデメリットとリスクもあるのだが、上記の問題と天秤にかけた時に私は避妊・去勢の方を間違いなく選択する。
まあここは人それぞれ。きちんと責任を負う前提でどちらを選ぶかは飼い主次第。

 繰り返しになるが犬猫の人間との関わりには長い歴史があり、そのためか「昔ながらの飼い方」をやたらと持ち出す人が多い。
猫は六世紀頃には日本に渡って来たというし、そりゃもう大昔からかわいいかわいいされて来た。
あの清少納言さんも枕草子で「ネコチヤンいとかわち(超絶意訳)」と書いている。
 ネズミ捕獲部隊として大活躍(?)して、放し飼いで好きに行動し、日向でごろりと寝転がる。餌は人間の残した魚の頭や尻尾とそれから猫まんま。繁殖期にはそこらで子猫のミーミーいう鳴き声がして、やがてその子猫たちも大きくなり親と同じく生きていく……そんな時代は確かにあったんだろう。
 でもその時代って、言葉は悪いが人間も「淘汰」されて生きていた。
運悪く流行病に罹り亡くなる人、戦で命を落とすもの、天災、伴う飢饉、お産は文字通りの命懸け、盲腸でも虫歯でも簡単に死ぬ。
私のようなアレルギー体質は殆ど生き残れなかっただろう。
 ロードキルの心配は車が普及した近代に入ってからだが、野鳥が野良の子猫を襲う問題は今でもある。医療的アプローチも出来ないから寿命も短い。ノミやダニを媒介する・糞尿やマーキング行為による被害、アレルギー問題で人間側が迷惑被って捕獲して川にポイとか今よりずっと気軽に行われていた。今も毒餌撒いたりする人はいるけどさ。
 何が言いたいかというと、なんで猫だけ昔ながらでいいと思うのかわからんということ。じゃあお前も昔ながらでいいね?とされたら困るでしょ。
車の普及とともに道は整備された。それは人間が生活しやすいルールに基づいてだ。
でも猫や犬には交通ルールなんて知らないこと。他の野生動物もそうだけど。
水路も川も危ないから近寄っちゃダメだよ!気をつけてね!といくら注意喚起して教えても人間だって毎年事故る。
猫なら尚更わからん。危機回避の本能云々はさておき。
 ここからここまで私の正式な土地です、ここからは不正に立ち入られると法に抵触します、やめてねってルールもあくまで人間同士で決まったこと。猫には関係ない。
ちなみに人間であろうと不法侵入するし土地の権利で揉める。じゃあ猫にはわからんて。
 糞尿・マーキング被害。庭できちんと犬飼ってるのに猫が入って来て困る。猫アレルギー持ちだから不用意に接触すると困る……。
猫が好きだからこそ、そういう問題に対して寛容になれよとは言いたくない。
現代社会で生き物を飼うからにはそれ相応のルールに従わないとならない。
時代は変わったのだ。時代の変化により便利になったものを享受して生きているからには合わせていくことも必要だ。
自分は便利な現代生活を送りたいけど現代のルールは守りたくない、では道理が通らない。

 ちなみに野生動物や食肉や環境問題に一石投じるつもりは毛頭ない。私が言いたいのは自らの意思で猫を飼うと決めた同じ猫好きに対してだ。
だって猫好きじゃない人からしたら、赤の他猫の命なんてどうでもいいことだしね。それを責める気はない。
今猫の命を大事に出来るのは動物、特に猫が好きな人。猫を飼いたいって自分から思う人。
この世の全員で大事にするのを強制するより先に、まずは猫好きな人から猫を大事にしていこうねと思っている。
ただ、犬猫に対する価値観が今とは異なっていた時代に生まれ育ったお年寄りは、なかなかその価値観を変えていくのは難しいかもしれない。
若い世代から変えていけたらいいよね。ロードキルされる猫も、うっかり轢いてしまって嫌な思いをするドライバーも減って欲しい。
 当たり前に保護活動を行なっていたり、きちんと準備してから猫を迎え入れて存分に可愛がり責任を持って飼っていたりする人たちも沢山いるから、全員が全員大事にしてないわけじゃないのでそこはよろしく。

 ここからは偏見タイム。全て偏見。全て私の主観。
私はこれまで猫外飼い派の人と学校、会社、近所、親戚付き合い等で何人も関わったことがある。
年齢も居住地も職業もバラバラ。
「猫家にいれないの?」と聞いたことがあるけど「天気が悪い時は入れてる」「外の方がいいみたいで入って来ない」「昔からこうだったし近所の人も同じ飼い方してるから入れる気はない」「家の前で鳴いてたら入れる」などなど返答は様々であった。
 しかし。ただ一つ!たった一つ!恐ろしいほどに共通する点があったのだ!!
それは「子育てがくそほどだらしない家庭」という点である!!!!
歴代外飼い派Aさん(当時50代)は妊娠中の定期検診も片手で足りるほどしか通わないことから始まり、子供たちが放置子なことで近所で有名。なんなら糞尿被害でずっとご近所が迷惑していて誰かに毒餌を撒かれて何匹か死んでいるがそれでも外飼いを続けている。子供たちは無事、グレ倒したり実家に寄り付かなかったり。
外飼い派Bさん(当時30代)は8畳2間に子供10人、表向き母子家庭だが元旦那も一緒に暮らし絶賛不正受給しながら毎年のように子供を産んでいた。猫は去勢もせず、タイミングが合えばたまに餌をあげる程度で最早ほぼ野良。長子はその時高校生。地獄じゃん。
外飼い派Cさん(当時40代)も子供が放置子。躾こそ厳しいくらい行っていたが、子供が自我を持ち始めたら祖父母宅に預けっぱなしに。可愛がるけど世話はしたくないの典型で、避妊・去勢はせず歴代の猫たちはちゃんと看取ったことがないそうだ。
外飼い派の家庭のDちゃんは習い事をみっちり入れられていた。定期的に近所の祖父母宅に泊っていてシングルマザーの母親と過ごす時間は極わずか。子供ながらに忙しそうだ、大丈夫か?と思うほどであった。親は仕事、飲み、趣味と子育てから逃げるように飛び回り、Dちゃんがいじめの主犯格になっても学校からの連絡は無視し続けていた。
外飼い派家庭のEちゃんは農家だった。嫁姑問題に子供たちも巻き込まれ、ごりごりの男尊女卑で弟たちと差をつけられて育ちメンヘラ化。しかし母はごめんね我慢してねで泣くだけ。進学も許されず就職で実家を出てから地元には帰っていない。
 まだある。まだまだある。
これ読んで私は外飼い派だけど子育てちゃんとしてます!と反論したい人もいるかもしれないけど、外飼いの時点で私と価値観も常識も合わないので大丈夫だよ。
犬は散歩したり遊んだりと飼い主側から働きかける世話が必要になるが、猫はそこまで必要としない。さらに外飼いとなれば顔を合わせる時間も少ないだろう。
子育てにおいても同じ感覚で、まあ衣食住は提供してるから……でそれ以上どうこうすることもなく放っておきたいのかも?
 乳児時代で子育てはおしまい、自分で歩ける話せる食べられるならあとは勝手に育って巣立ってくれろという感覚なんだろうか。
人間の子育てというより、それはもう猫なんだよなぁ……猫が猫飼ってんのかしら。
闇が深いでござる。


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