約15年前に何故かパパ活させられたんだよ

 10代の頃、当時働いていた職場の先輩(10個上のシンママ)に「会ってほしい人がいる」と言われた。
その人は先輩の知り合いの男性(以下おじさんとする)で、独身、そこそこ稼いでおり、絶賛彼女募集中。
先輩に誰か女の子紹介して!としつこいらしい。
「付き合おうとか言われたら適当にはぐらかして。そしたらなんぼでも欲しいもの買ってくれるから!」と半ば強制的に連れ出された。

 入って間もない職場の10個上の先輩に逆らうのも気が引けたから嫌々ながら車に乗せられちょいお高めの焼肉屋さんに行った。
 待っていたおじさんは話し言葉にやや輩風味のあるまあ田舎によくいる素朴な顔のおじさん。
先輩により雑貨屋で働く女の子という設定にされた私は、焼肉を食べる間ずっとおじさんのイキった武勇伝を聞かされまくった。
当たり前に早く帰りてぇ〜〜!!と思っていたけど、接客モードで「わぁすごーい、おもしろーい」とにこにこしてたら気が大きくなったのか、おじさんが「この後イオン行こうぜ!」と言い出した。
先輩は待ってましたと言わんばかりに目を輝かせて「行こう行こう!」と乗り気。
来る前に言ってた『なんぼでも欲しいもの買ってくれる』のお時間が来たのかと察した。
もちろん焼き肉はおじさんの奢り。
一旦財布を出す仕草をする私に「いいって、心配すんな(?)」とおじさんが伝票を掻っ攫うお決まりのやり取りをしたあと、イオンに向かった。

 「なんか欲しいものある?」とおじさんに言われたが、10代のウブでかわちすぎた私からしたらいきなり知らない人に何かを買って貰うのは気が引けた。
返事に困っていたら先輩から「新しい香水欲しいって言ってたよね!」とアシストが入る。
香水は先輩が欲しかったんじゃん?でも面倒くさいからもう身を任せることにした。
今の香水が一番好きなんだけどなぁと思いつつ、香水売り場で適当に眺めてたら当時の推しの俳優が好きと言っていたエンジェルハートのことを思い出した。
エンジェルハートを手に取って見てたら隣にいたおじさんが「これか、待ってな(?)」と掻っ攫っていって買ってくれた。
ついでにレジ付近で待ち構えていた先輩が「これも〜!」と買わせていた。
 推しの俳優が好きといった香水をおじさんに買って貰うという虚無感になんだかじわじわと笑えてきて、これは絶対mixiの日記に書こうと決めたのをはっきり覚えている。

 先輩が次々あれは?これは?と促して化粧品、服、バッグ、日傘、アクセサリーなど(流石にプチプラ系)を買って貰った。
おじさんの気前の良さと先輩の図々しさにドン引きしつつ、表面上は接客モードで愛想よく「ありがとうございます」とやっていた。演技力には定評がある。
私というよりも先輩のお目当てのものを一通り買ったからその日は早めにお開き。
 帰り道先輩が「言った通りでしょ?昔からああやってなんでも買ってくれるんだよねぇ」とか「あれはりりぴちゃんのこと気に入ってたよ〜!」とか言っていた。
そして別れ際に「次もよろしくね!」と言われ、これっきりじゃないんだ……と絶望しつつ一応「今日はありがとうございました!」と明るく一礼してから帰宅した。

 おじさんと連絡先を交換したのかどうかは覚えていない。
してたとしても私はクソほど連絡不精だから大してやり取りしてなかったと思う。
とりあえずmixiには出来事を書いたはず。とんでもねぇことになったと。
友達もドン引きである。

 一週間くらい経ってから先輩に「おじさんが早く会いたいってうるさいんだよねー」と催促されたので予定を合わせてまたおじさんに会うことになった。
今度は先輩の妹まで登場し、みんなでちょいお高めの焼き肉(先輩のお気に入りの店だったらしい)を奢って貰ってイオンに行った。
田舎故、お出かけもワンパターンしかないのである。
 私には年の離れた妹がおり、その話をしたらおじさんが「じゃあ子供服もいるか?」と自ら志願して来た。
子供服売り場にゾロゾロと異様な四人組が向かい、よく知らないおじさんに妹の服を買って貰うという謎の行動と、やっぱりレジ付近で待ち構えていた先輩がこれ幸いと自分の子供の服を買わせていたこととで発生した虚無感に今回も絶対mixiに書かないとなと思った。
その日もそんな感じで終わった。
 これいつまで続くんだろう、私は一切おじさんと付き合うつもりはないけど先輩はどう始末をつけるんだろう、おじさんはどんどん乗り気になってるよな?と不安で仕方なかった。

 この嫌な予感は三度目に会ったとき的中する。
三度目はおじさんも完全にこの女いけると踏み込んでいたに違いない。
「最近仕事の機材の故障が相次いで出費が嵩んでるんだよ」と何度も口にしていた。
しかも前回前々回とは違って焼き肉を食べながら酒を飲んでいた。
ちなみに先輩はおじさんの『金ないアピール』を全て無視していた。あとこの日は先輩の子供とそれから先輩のお母さんも一緒に来ていた。いっそ清々しい。
 焼き肉後、微妙な空気が漂う中で先輩が「今日も行くでしょ?」と車をイオンまで走らせた。
おじさんはしきりに出費の話をしていたが、運転手である先輩には逆らえずイオンに着いた。

 前回前々回とは違い、おじさんは全く乗り気ではなかったためイオンの中であれこれ店を見たがる先輩たちから距離を置きかなり後方を歩いていた。
私は先輩たちに着いて行くべきか?と悩んでいたが、おじさんがクソほど話しかけてくるので相槌を打つ間に先を歩く先輩たちに置いていかれ気づけばおじさんと二人きりになってしまった。
挙句「今月厳しいけどりりぴちゃんには買ってあげるよ」というようなことを言われ、面倒くさいし気まずいしで愛想笑いしか出ない。
 そもそも私は服やらバッグやらはよく自分で買ってたし、特段これといって欲しいものもなかったから買い物よりもさっさと帰りたかった。
いや、その時も本当は喉から手が出るほど欲しいものはあった。推しの出る舞台のチケットである。
しかしおじさんの携帯から申し込んで貰うわけにもいかないので仕方なくあてのない買い物に付き合っていた。
 おじさんは「りりぴちゃんには買ってあげるよ」とは言っていたが、洋服売り場で足を止めることもなく、欲しいものを聞いてくるでもなかった。
出来るだけ金を出したくない感は痛いほど伝わって来る。
私も買い物とかいいから早く帰りたい。
先輩たちはどっか行った。
最悪である。

 きっかけは忘れたがおじさんと食品売り場に行って肉とか惣菜とかを買って貰うことになった。
服やアクセサリーよりは安上がりだったのもあり、おじさんは上機嫌で「これも食べる?これは好き?」と私に聞き、どんどんカゴに入れていた。
 買い物を終え先輩たちと合流しようと歩き出した時、おじさんが手を握って来た。
びっくりしたと同時に、なるほどおじさんはこの機会を伺ってたわけか……とか、酒を飲んでたのもこの言い訳に使うためだなとか、先輩はこの状況をどうしてくれるんだよとか一気に沢山のことが頭をよぎった。
今ならおいおいやめとけってと振り解くことも、3分一万円ですと更なる要求をすることも出来るけど、若かった私は自分の意思ではないにしても散々買って貰って振り解くわけにもいかんよな……と黙って耐える方を選んでしまったのである。
 おじさんも私が抵抗しないことで気を良くして饒舌になり「今度みんなでBBQしようって話しててさ、りりぴちゃんも来るよね?」「あいつ(先輩)は昔から本当だらしないから俺がこうして子供の分まで出してやってるわけよ」「俺のおかげで生活出来てんだよ」などなど聞かされた。
私は愛想笑いしながら適当に相槌を打ち、先輩早く見つからねぇかな、あー早く帰りたいな、これはmixiに書いたら友達から怒られるだろうな、舞台のチケット取れてるかな、推しの写真集クソみたいな出来だったな、とかどうでもいいことを考えていた。
 平日の夜のイオンってこんなに人がいないもんなのかとそこで初めて気付くくらい周りに人はおらず、しかも通路は延々と続いている。
友達と買い物しているときはそんなこと感じなかったのに、通路がただただ果てしなく感じてむかついた。
ようやく先輩と合流する頃におじさんは手を離した。
酔ってたからという言い訳は通用しないからな、と思った。

 物を買って貰えずやや不機嫌な先輩の運転でおじさんを家まで送り届けてから、やっと私はさっきあったことを話した。
こうなったのは先輩のせいでもあるし、おじさんの言ってたことまでありのままぶちまけた。
先輩は「はぁ!?なにそれ!」「BBQの話も聞いたことないんだけど!」とキレだし、手を繋がれたことを聞いて「もう潮時だね」と言った。
次いで「金も出し渋るしアイツは用無しだわ、もう会わなくていいからね」とのお言葉を頂き、ここに来て私は解放されることとなった。
おじさんに手を握られた嫌悪感よりももう会わなくて済むんだという安堵の方がまさっていた。

 その後は新しく入ってきた女の子(彼氏持ち)が私と同じように先輩に誘われ、断ったら「心配なら彼氏を兄ってことにして連れて来て二人分買ってもらえばいいじゃん(?)」と謎の提案で押し切られて彼氏まで一緒におじさんから焼き肉を奢って貰うという珍事に発展したらしい。
女の子から話を聞いて、あまりのめちゃくちゃさに笑ってしまった。

 私が急に会わなくなったことに対して先輩がどんな言い訳を使ったのか知らないが、その後どんなに他の女の子を連れ出して会わせても初回で終了するようになったようで先輩から「おじさんがりりぴちゃんがよかった、りりぴちゃんどうしてるの?ってずーっと言ってるんだけど」と迷惑そうに言われた。
どのお立場で迷惑そうにしてるの??つーか用無しじゃなかったんかい。
 自分でいうのもなんだけど若い頃はギリいけそうなブス具合と男性の求める愛想(外ヅラ)の良さ、あと表に出せる趣味特技が裁縫というのもあり勝手に私を家庭的な女、現実的に付き合えそうな女だと思い込む人はおじさん以外にもいた。
中身を知ってる身内からすれば、いいから早く目を覚ませよとおじさん+αたちに言いたくなるだろう。

 今になってみれば一連の騒動はパパ活みたいなもんだったなと思う。
当時はパパ活なんて言葉はなく、当てはめるのであれば援助交際だったけど。
巻き込まれた形とはいえ、今風にいえば一瞬だけパパ活女子だったのである。

 経験者(?)が何か語るとするなら、こういうのは正規のお店を通してあくまでそういうお時間を楽しむと互いの合意を正式に得た上で行う方がいいよね、ってこと。
今は盗撮も簡単に出来ちゃうから知らないところでパパと一緒にいる写真or動画をばら撒かれてるかもしれないし、個人情報をゲットされてるかもしれないし、こっちは付き合ってたつもりだったのに!と逆恨みされる可能性もあるし、貰う額が多いと贈与税が発生するから確定申告しないと脱税になるし、性行為も含める形であれば法にもひっかかるし。
とにかくリスキーでしかない。
人生においてこんなにリスクを背負ってまで欲しいものってなに?と考えてしまう。

 もし自分の身内、たとえば妹とか姪っ子がやってたらそこまでする理由を聞くし、身を案じてやめなとも言うし、周りに結果的に迷惑かける可能性高いからやめなとも言うと思う。
残念なことに私はスラム育ちなので、実際親は「よかったじゃーん」しか言わなかった。
 どうしてやってるの?と理由を聞いて一緒に考えながら、あなたが心配だからやめなさい、あとこういうリスクがあって私含め周りの誰かに迷惑がかかるよと説明し真剣に止めてくれる人がいないのは本当に悲しいことだ。
存在が軽んじられてるに等しく、関係性も希薄、無責任な人しか周りにいないということだし、そんな環境にいたら何かあった時に誰も助けてくれないから。

 当時も普通に二度とやりたくないし巻き込まれるのもごめんだと思ったので「紹介したい」「会うだけ会ってみてよ」などはいつ誰からの頼みであろうと断ることにした。
先輩からのおじさん絡みではない頼みも仕事の予定を盾にし(実際先輩より仕事を抱えてたので)断った。
粘られてもそのうち他の女の子に声をかけていたから最初から断ってもよかったんだな、と思った。

 人生何事も経験。とはいえ約15年前にパパ活(援助交際)に巻き込まれた経験はなくてもよかった気がする。
今現在、身内である妹たちはパパ活をやったことがない。
 現役パパ活女子さんは私の身内じゃないから心配する必要もないし、私に責任も生じないし、直接迷惑もかからんので批判するつもりはない。
ただ贈与税に関して確定申告しといたほうがいいと思う。脱税は犯罪だし、結果払う額増えちゃうからさ……。

※こと細かに私の体験を記した上でやりたいならやれば?など書いたら、ノウハウを書き勧誘・周斡したと受け取られる可能性があり、そうなると私が売春防止法に抵触するかもしれんので誤解しないでね。


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