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ゲームで学び、ゲームを学ぶ(13)-「3対3」のゲーム②オフェンスの課題

前回の記事(2024.8.30追記あり)では「3対3」のゲームの特徴として、「2対2」のゲームに比べて「選択肢」(返球までに要する組み合わせ)が多くなることに着目し、「選択肢」が増えると「判断」を伴うプレーが多くなるため、技能が低い段階では「難易度」が高まる要因になることを説明しました。

一方で「難易度」を下げるには「役割」(例えば、優先的に2本目をプレーする人)を決め、「選択肢」を意図的に減らすことによって、結果として「難易度」を下げようとする工夫があることに触れました。一般的には「ポジション」を決めること意味し、それ自体を指導者が与えるのではなく、ゲーム経験の中で選手自らが模索していくプロセスが育成年代で導入されると良いのではないかということを提案しました。

一方で、ある程度技能が高くなると「選択肢」をどのように活用していくかがプレーの「幅」に関係してきます。オフェンス側は攻撃参加の「選択肢」を出来る限り確保しつつ、一方で、ディフェンス側は相手の攻撃参加の「選択肢」を少なくすることが基本的な課題の1つになります。そこで、今回は「2対2」では実現できない「3対3」のゲームにおける課題をオフェンスの観点から説明していきます。

「3対3」の特徴

オフ・ザ・ボール・プレーヤーが2人

どんなにプレーヤーの人数が増えても、ボールが1つなので、オン・ザ・ボール・プレーヤーは必ず1人です。したがって、「2対2」であれば、残りの1人が常にオフ・ザ・ボール・プレーヤーとなり、それを交互に繰り返すだけなので、2本目・3本目をプレーする人は自動的に決まります。

一方、「3対3」以上になれば、常にオフ・ザ・ボール・プレーヤーが2人以上存在することになります。これは、2本目・3本目をプレーする人は、意図的に選択することができることを意味します。この違いこそが、「3対3」以上のゲームの特徴で、2本目以降の選択肢を活用できることが課題となります。

ボールゲームでは、1つのボールでゲームをするので、プレーヤーの人数が増えることは、単にオフ・ザ・ボール・プレーヤーの数が増えることを意味します。つまり、オフ・ザ・ボール・プレーヤーが2人以上になる「3対3」のゲームは「6対6」を見据えた場合において、バレーボールゲームの「ひな型」であり、最もシンプルに基本的な「戦術」(2対2では学べない部分)を学ぶことができる最少人数であると言えます。

だからこそ「2対2」と「3対3」では、単に人数が1人増えただけのゲームと捉えるのではなく、具体的にはどのようなことが学習できるようになるのか、つまり何が新たな課題になるのかを把握していく必要があります。

まず3本目から逆算していくと、3本目は必ず攻撃になりますが、そこで「2対2」と異なることは、攻撃参加人数が最大2人であるため、3本目の選択肢を「2つ」にできるかどうかが「3対3」のゲームの代表的な課題ということになります。そして、それを実現するために、1本目・2本目のプレーでどのようなことが具体的な課題となるかを説明していきます。

2本目のプレーに求められること

2本目は、3本目のプレーヤーを最大限生かすようなプレーに加えて、相手に読まれないために2本目のプレー直前のギリギリまで3本目のプレーヤーがどちらになるかわからないようにできるか、が課題になります(日本バレーボール協会,2017)。そのためには、1本目のプレーでどのような貢献ができるのかを説明していきます。

1本目のプレーで求められること

3本目のプレーで選択肢を2つにするには、まずは1本目のプレーをした後に自ら攻撃に参加できるか、に加えて、2本目ではないプレーヤーが攻撃参加できるかが課題になります。つまり、「2対2」と異なるのは、1本目の評価が自分だけではなく、もう1人の攻撃参加をお膳立てできるかになります。

また、3本目に攻撃参加が2人になったことを最大限活用するためには、2本目が十分に余裕を持った状況・状態でプレーできる環境をつくるお膳立ても課題になります。

すべてのプレーはつながっている

当然のことですが、前述してきた通り1本目は2本目のプレーに直接的に、3本目のプレーに間接的に影響を及ぼします。したがって、1本目のプレーでどのようなボールを繋げるかで、その後の2本目・3本目が求めるプレーの達成度に影響を及ぼすということです。

例えば、具体的な技術を当てはめていくと、1本目はレセプション(ディグ)で、2本目はセットで、3本目はアタックになります。実際に「3対3」のゲームで「2人攻撃」という代表的な課題がある場合「Reception(dig) for Setter」と「Reception(dig) for Attackers(myself or others)」の2つの観点から評価すること大切です。

特に、2つの観点を指導者・選手自身が持てるか、が大切だと思います。このような1本目の評価観点をチームで持つかによって、チームづくりに大きな影響を及ぼすことになるためです。そして、その観点を最少人数でシンプルに学習できるのが「3対3」のゲームであることが言えます。

では、1本目は具体的にはどのようなプレーを心がけると2本目・3本目の実現や達成度が高まるでしょうか。

「準備」するための「時間」を作る(Keep time for stanby)

サッカーやバスケットボールでは攻める状況が不十分な場合、一旦ボールを手や足でキープして「時間」を確保し、攻める「準備」を整えて、再度攻めようとします。しかし、バレーボールはボールを止めることが許されていません。十分な「準備」(スタンバイ)をしようと思えば、別の方法で「時間」を作る必要があります。

具体的には、1本目で「時間」を作ることができると、2本目のプレーヤーは余裕をもってボール落下点に入り、良い「準備」ができます。結果として2本目で実現したいプレーができる可能性が高くなるといえます。また、3本目に攻撃参加する2人にとっても、十分な「助走」をとり、攻撃参加するより良い「準備」ができ、結果として3本目で実現したいプレーができる可能性が高くなると言えます。つまり、1本目でいかに「時間」を確保して、いかに良い「準備」ができるどうかがプレーの質を高めるために大切なことと言えます。

「時間」を作るために「高さ」を作る(High ball for Keep time)

ボールを落としてはいけない競技特性上、「時間」を作る手段は1つしかありません。「ボール」をいかにして空中にキープできるかになります。1本目の「高さ」によって、2本目以降のプレーヤーが「準備」に活用できる「時間」が決まってきます。指導者はもちろん、プレーヤーがこのような地球上での物理的な事実を理解していくことが、2本目・3本目以降のプレーの幅に広がっていきます。

次回は「ディフェンス」(守り)の観点から、何が課題となるのかを解説していきたいと思います。


▶︎縄田亮太のプロフィール


バレーボールに関する記事を執筆しています。バレーボーラーにとって有益な情報を提供することをコンセプトにしています。