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トータルオフェンスを実現するためのオフェンスシステムについて考察する【2/8】

トータルオフェンスを実現するためのオフェンスシステムについて考察する【1/8
からの続きです。

ゲームモデルの骨格となるオフェンスシステム

さて、ここまでは新しい概念として登場したトータルオフェンスについて私なりの解釈で定義してみたわけだが、ここで今一度、本記事のテーマであるオフェンスシステムについて深堀りしておきたい。そこでまずはオフェンスシステムとは何かを改めて言語化してみよう。

オフェンス・システム:ゲームモデルのオフェンス局面におけるプレー原則を司るシステム。また、オフェンス局面におけるチームの中で共有された約束事。構造化されたルール。

例えて言うと分かりやすいのかもしれない。

ゲームモデルにおけるオフェンスシステムとは、人体における骨格と言えるものである。骨抜きにされた人体はもはやただの肉の塊で、機能しないのと同じように、オフェンスシステムという骨格なしにゲームモデルが機能することはないのである。

オフェンスシステムがあることによって、それぞれのプレーヤーの振る舞いが最適化され、チームとしてのプレー原則が出来上がってくるわけである。そして、そのプレー原則を拠り所にしてプレーヤーがそれぞれの個性や創造性を発揮し、パフォーマンスを最大化することによって、チームは一つの有機体(人体のように)として”そのチームらしさ”を見せながら機能するのである。

トータルオフェンスシステムを構築するための視点

では、ここからは私なりに定義し、私が一つの理想形だと考えているトータルオフェンスを実現するために、どのようなオフェンスシステムを構築していけばよいのかに考察していきたいと思う。

私自身の肌感覚にはなってしまうところもあるが、多くのチームでは目指すべきチームオフェンスシステムについて言語化・共有化が不十分であることが多いように思う。

実際のところ、各プレーヤーの経験や感覚的なものに頼って「なんとなく」オフェンスをやっていたり、「高速コンビバレー」といった抽象的で不明瞭なコンセプトだけを指針にしてオフェンスをやっていたりするチームが多いのではないだろうか。

そして、これらの原因としてオフェンスシステムを言語化・共有化するにあたって、どのような視点を持てばいいのかが分からないという点が一番に挙げられるのではないだろうかと私は考えている。

そこで、ここからは私の考えるオフェンスシステムを構築する、つまり言語化・共有化していく上での重要な視点についてまとめていきたいと思う。

1.レセプションアタック局面&トランジションアタック局面

オフェンスシステムについて考える視点として、まず最初に重要となるのが局面の整理だと思っている。

下記の図をご覧いただきたい。

まず、局面は「サービス」「ディフェンス」「オフェンス」の3つに大きく分けられる。そして、「オフェンス」局面をさらに細分化するのであれば、2つの局面に分けられる。そして、それは一般的に使われている用語で表現できる。レセプションアタック局面とトランジションアタック局面である。

レセプションアタック局面
まず、レセプションアタック局面である。この局面ではレフリーによるラリー開始を知らせる笛が鳴る前から相手サーバーがボールヒットするまで、比較的時間的余裕を持ってチームのオフェンスプランについてチーム内でコミュニケーションをとることが可能である。これは、オフェンス側にとっては有利な条件となる。

一方で、レセプション時にはローテーションによるイニシャルポジションの制約があるため、自身の得意である(専門である)ポジション(例:アウトサイドヒッターならレフトサイドなど)から攻撃することが難しいローテーションが出てくることも一つの特徴である。無論、サーブヒット後にはポジションチェンジすることも可能ではあるが、近年のサーブスピードの向上や戦術的なサーブの台頭を考えると、イニシャルポジションによってはそれが難しいこともあるだろう。

そのため、できる限り多くそれぞれのアタッカーが得意なポジションからレセプションアタックに参加できるよう、多くのチームではバック・オーダーが採用される傾向にある。

トランジションアタック局面
次に、トランジションアタック局面である。相手のオフェンスに対するディフェンス(ブロック&ディグ)の直後に起こる局面であるがゆえに攻撃参加するための準備が十分にとれなかったり、攻撃参加すらできないケースが頻繁に起こる。この点から言えば、トランジションアタック局面はレセプションアタック局面と比較するとオフェンスシステムを機能させることが難しい局面であると言わざるを得ないだろう。

フロントプレーヤーはブロックプレー直後にすぐさまオフェンスへの参加準備をしなければならないし、バックロープレーヤーはディグプレー直後に体勢が崩れていたとしてもオフェンスに参加しなければならないだろう。

また、セッターに返球されるボールの質はレセプションよりもディグのほうが悪くなる可能性が高いと言える(アタッカーがネット付近から思い切りジャンプして攻撃してくるのだから、どんな強力なビッグサーバーが打ってくるサーブよりもそれは相対的に返球が困難になるだろう)。

ただ、一方でレセプションアタック局面とは違い、最初から自身の専門化されたポジションでオフェンスに参加できるという点においては、アタッカーにとっての負担は少ないのかもしれない。

局面の整理と理解
このように、レセプションアタック局面とトランジションアタック局面それぞれの特徴をそれぞれ整理し、そこに対する理解を深めておくことはオフェンスシステムを考える上でとても重要になってくる。これはコーチのみならず、当然ながらプレーヤーについても同様である。


トータルオフェンスを実現するためのオフェンスシステムについて考察する【4/8
に続きます。

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