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フリオ・ベラスコの考える『ゲーム・モデル』と『創造力』(1/3)

フリオ・ベラスコ

誰もが知るバレーボール界の名将である。

以前にツイッターにアップされていた彼のインタビュー動画に強い感銘を受けたので、自分のための記録としても残しておきたいと思い、本記事を書くに至った。

では早速だが、インタビュー字幕をここに書き写して紹介したい。たった数分のインタビューでありながらも、彼のバレーボール・コーチとしての哲学が滲み出た内容となっている。楽しんでいただければ幸いだ。

インタビュア:世界最高の選手がいたとしてもチームコンセプトを持っていないといけないものでしょうか。

フリオ・ベラスコ:間違いない。

インタビュア:それは絶対欠かせないものですか?

フリオ・ベラスコ:欠かせないという意味ではない。チームが持っているシステム(ゲーム・モデル)というのは選手によって適応するんだ。もし世界最高の選手を持っているなら、その選手が世界最高のプレーをするためのシステムが必要なんだ。そうゆう問題なんだよ。システム(ゲーム・モデル)というのは絶対的なルールというような物ではないんだ。システム(ゲーム・モデル)は試合で発生するノーマルなシチュエーションを解決するものだ。

インタビュア:状況を解決する為にシステム(ゲーム・モデル)はあるということですか?

フリオ・ベラスコ:想定の範囲内の状況、スタンダードな状況を解決するものだ。もし相手がシステム(ゲーム・モデル)を壊してきたらそれを解決する個人の能力が必要になる。これは交通ルールと一緒だ。道路交通はシステム(ゲーム・モデル)のようなものだ。

インタビュア:道路交通はシステムですか?

フリオ・ベラスコ:そうだよ!どこで止まって、いつ止まるか又は止まらないかが決まっている。

インタビュア:そして?

フリオ・ベラスコ:もし交通ルールが無かったらとんでもないことになる。そして、もし自分の目の前の車が突然心臓発作を起こして車が急停車したらそれを避ければ助かるし避けられなければ終わりだ。

インタビュア:素晴らしいです。これ以上ない説明だと思います。つまり想定外の状況ではシステム(ゲーム・モデル)が解決するのではなく個人の能力で解決しなければいけないということですね。

フリオ・ベラスコ:そうゆうことだよ!例えば守備でシステム(ゲーム・モデル)があるのに味方が突然プレッシャーに出たら…

インタビュア:ではあなたはどちらを好みますか?フリオさん本当に素晴らしいです。敬意を示したいと思います。システム(ゲーム・モデル)が解決する事とタレントが解決するのとどちらを好みますか?

フリオ・ベラスコ:誰が?

インタビュア:あなたです。チームのリーダーとして。

フリオ・ベラスコ:自分にとって?両方です。私はシステム(ゲーム・モデル)で状況を解決できない時に選手に創造性を発揮することを強く求めます。ただチームとして試合でやることをトレーニングします。システム(ゲーム・モデル)は道路交通と共通する部分があります。それは重要じゃない事に頭を使ってはいけないということです。そうすれば創造性を発揮する為の脳のエネルギーを残すことが出来る。

さて、ここからは私の上記インタビューに対する解釈をまとめていきたいと思う。

『道路交通』と『ゲーム・モデル』はシステムである

彼の考えるシステム(ゲーム・モデル)とは一体何なのだろう。

インタビュー中で、彼はシステムの一例として「道路交通」を挙げている。では、道路交通とは一体何だろうか。私は次のように説明できると考えている。

道路交通とは、言わば自動車やバイク、自転車、歩行者などが安全に移動できるように設定された交通ルール・信号・標識等の総称である。私たちは、道路交通というシステムを学び、それに適応することによって、各々の交通移動者が安全かつ円滑に移動するという目的を達成しようとしている。

では、これをバレーボールのシステム、つまり「ゲーム・モデル」に置き換えて考えてみるとどうだろう。こんなふうに考えることはできないだろうか。

ゲーム・モデルとは言わばバレーボール・ゲームに勝つために設定されたチーム内における約束事(プレー原則)の集積である。チーム内のプレーヤーは、ゲーム・モデルを学び、それに適応することによって、チームがゲームに勝つという目的を達成しようとしている。

これらを踏まえて、私なりに「道路交通」と「ゲーム・モデル」をそれぞれを対比できるよう簡潔にまとめると次の通りである。

・道路交通:安全かつ円滑に移動するという目的を達成するための手段
・ゲーム・モデル:ゲームに勝利するという目的を達成するための手段

フリオ・ベラスコの考える『ゲーム・モデル』と『創造力』(2/3)に続きます。

バレーボールに関する記事を執筆しています。バレーボーラーにとって有益な情報を提供することをコンセプトにしています。