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トータルオフェンスを実現するためのオフェンスシステムについて考察する【8/8】

トータルオフェンスを実現するためのオフェンスシステムについて考察する【7/8】からの続きです。

システム思考でチームオフェンスを考える

バレーボールはチームスポーツである。

当たり前のことを最終章の冒頭で書いてみたわけであるが、案外この言葉はきちんと理解されていないのではないかと思う。

上記の言葉を聴いたときにまず皆さんの頭に浮かぶイメージはどちらからという下記のようなエモーショナルなものではないだろうか。

ディガーが必死に繋いでくれたボールをなんとかエースが最後に決める姿。コートのはるか遠くに飛んでいったボールを必死にチームで繋いで相手コートに返球する姿。苦しい場面で得点したプレーヤーにチームメンバーが駆け寄って抱き合う姿。

これらは間違いなくバレーボールというチームスポーツの魅力ではある。しかし、チームスポーツの魅力はこのようなエモーショナルなものだけではないはずだ。

全く違った個性を持つ6名が9m×9mという狭いコート上で、チーム内3回ヒットという厳しい制約のもと、まるで一つの生命体であるかのように瞬時にチーム内で連携をしながら、スペクタクルで素晴らしいプレーを繰り出すというのもバレーボールというチームスポーツの魅力だと言えはしないだろうか。私自身、一つの芸術作品に出会ったときのような感動と興奮を感じることがある。

そして、こうした一つの芸術作品とも言えるようなチームの即興的かつ創造的な連携プレーを生み出すためには少し以外かもしれないがシステム思考を持つことが必須である。システム思考とは簡単に言えば、対象とする事象をシステムとして捉えることで全体像を把握し、最適解を考えるアプローチのことを言う。

世界で最も素晴らしいプレーをする世界トップのプレーヤー6名をコート上に集め、何のシステム(ゲームモデル・プレー原則)も設定されない中で、各々がただ好きなようにプレーをしている姿を想像してみてほしい。

そこに一つの芸術作品に出会ったときのような感動や興奮が生まれるだろうか。いや生まれることは決してないだろう。むしろその姿は滑稽にさえも見えてくるのではないだろうか。

鳥肌が立つような素晴らしいプレーを何度も何度も見せてくれるチームには必ずチームで共有されたシステムが存在しているに違いないと私は思っている。そして、そのシステムはチーム内での度重なる試行錯誤を通じて最適化され、研磨されていくのである。そして、システムが至高の域に達した時には創造的なプレーヤーたちの潜在能力はより引き出され、チームプレーが最高の高みへと到達するのだろう。

一つの芸術作品を創り出すための原理・原則が存在しているように、バレーボールにおいても素晴らしい芸術的なチームプレーを生み出すためには、システム(ゲームモデル・プレー原則)が必要なのだ。



バレーボールに関する記事を執筆しています。バレーボーラーにとって有益な情報を提供することをコンセプトにしています。