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【小説】二十歳、父からの手紙

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父親から20歳になった息子への手紙。息子がまだ生まれる前に書かれた手紙。家族に起きたある出来事について、死生観を交えながら綴られている。
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2018年9月の記事一覧

1. 20歳の生誕の日が幸福であるように

1. 20歳の生誕の日が幸福であるように

《1》

私の息子、20歳の誕生日おめでとう。あなたの父は、あなたに向けて手紙を書いている。その理由は、通常の生活の中では、伝えるのが難しい事柄を話したいと思ったからだ。

飲み会のテーブルで私は、「若い頃にはこういうことがあったんだ」と語りかけるかもしれない。だが私がそのようなことをしたとき、おそらく翌朝、私は何も覚えていない。

私はそんな不誠実なやり方で人生の中核について話すことを好ま

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2. 死はいつもあなたのそばにいる

あなたは死ぬことを望んだことはあるか?

私にはある。

いつから、「私は死にたい」とつぶやくのか習慣になった。家に帰ってテレビを見ていても、突然、ガラスからあふれた水のように「死にたい」という言葉がもれた。

私は実際のところ死にたくはなかった。しかし、この世界に生きることの難しさは感じていた。

逃げることができるならこの世を脱出したい。だが私はそれをすることができない。だから私は、私の心の叫

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3. もしあなたが死を選ぼうとしているとしたら

3. もしあなたが死を選ぼうとしているとしたら

この手紙で書かれていることについて。

「苦難の中で生き続けることもあるだろうが、いつかすばらしいことがある」

そんな説教のようなことを、私は書いていない。

私の人生にはこんな人がいた。誰彼はこのように亡くなった。あなたと私もそうなるかもしれないことを確認している。

誰もがまともでなくなる可能性があり、特に私たちの場合、まともでない人が家族の中にいた。それをあなたの心に留めてほしい。

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4. 彼は偶像崇拝によって生を見出す

4. 彼は偶像崇拝によって生を見出す

「この世には頼るべき人がいない。そう感じた時、ヒーニャルナの像を見て、あなたの心を落ち着かせるのだ」

オオツカは私にその像を見せてくれた。

「私の悩みは、端正な女性を見ることでは解決しない」と私はごく自然な反応を示した。

「結局のところ、あなたがすべきことは、人間の問題を解決するか、問題を忘れて進むかということだ」

「それは確かにそうかもしれない」と私はうなずいた。

ヒーニャルナの顔を見

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