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長崎市滞在-2022/12/08

朝、仕事のラフ納品を終えた後、バスに乗って「丸善団地」へ。
長崎へ来たのは、この丸善団地の風景を見るためである。SNSでいわゆる「エモい風景」として度々目にしていて、ずっと行ってみたかった。
ここ数日で何がどこにあるかという把握も進んできたので、そろそろ今回の旅の目的地に向かう。

バスは泊まっているホテルからすぐのイオンから発車しているようだが、停留所が沢山あり不安だったため、バスチケット売り場のスタッフさんに教えてもらう。思っていた場所と全然違い、聞いてよかったと胸を撫で下ろす。程なくしてバスが来た。8系統、三川町行き。これに乗って、「本原教会前 停留所」で降りる。

バスは観光地を抜け、JR長崎駅前を通り過ぎて山の方へ走っていく。JR長崎駅前は長崎空港からのバスで降りた場所で、今思えばそんなにホテルから距離がないのだが、なにせ街のことを知らないので山の方は未知の場所でドキドキした。バスと路面電車が並走しているので、車両を観察する。彼らはバスに比べて車輪が小さく、低い金属音の混じったゴトン…ガシャン…という音を立て、のろのろ進む。路上のど真ん中にある小さなホームで何種類もの行き先が交差していて、間髪入れずに電車が来る。バスのルートと重なっているところも多いが、路面電車の方が安いし浪漫があるので、"長崎"を味わいたい方は路面電車をおすすめする。ちなみに、写真の電車は王道レトロなデザインだが、他に、角ばった形や普通のバスのような車体もある。

丸善団地へ向かうバスは段々坂を上り始め、曲がりくねった住宅街の道を縫って走る。当時、医療事故のニュースで話題になっていた長崎大病院前を通り過ぎた。バスの行き先表示を見るに、平和公園も近いらしい。目的の停留所の到着時間を過ぎても全然着かないので、乗り過ごしてしまったかと不安になってスマホで停留所を検索したら、まだ着いていなかった。揺れるバスの中で画面を見たので少ししんどい。朝からみかん二つしか食べていないので、空腹のせいもあるだろう。

7分遅れで停留所へ到着。これも今思えば大した遅れではないのだが、着くかどうかハラハラしていたのでホッとした。

バスを降りてすぐ、周りを見渡す。街中より高い位置に居るので、少し気温が低い気がする。時々車が通る以外は、しんとした場所だ。長崎特有のすり鉢状の地形が良く見え、お椀の壁に沿うように住宅がびっしり建っていて、円形の街が見下ろせる。クレーターの端に立っているような感じだ。バス停から見上げたラフォーレ三原台という集合住宅が真っ白でとても美しかった。

とりあえずこの場所に心身を馴染ませるため、どこかでごはんを食べようと歩いていたところ「みはらマルシェ」というこぢんまりした食事処を見つけた。しかし扉に近づいてみると、流行病の影響でデリバリーのみ営業、との張り紙が。しゅんとしていると、あまりに残念な顔でたたずんでいたのか中から店員の女性が出てきて、近くの飲食店をいくつか教えてくださった。初日の観光案内所の方に続き、長崎で喋った人が二人に増えて嬉しい。「丸善団地を見に来た」というと、気さくに行き方を教えてくださった。

のどかで静かな道を歩き、良いところだな、ここから丸善団地って近いのかな、と思って振り返ると、丸善団地の自治会案内図があった。ここだ!と嬉しくなる。ずっと来てみたかった場所が目の前にあった。

丸善団地は、まっすぐで長い坂道が平行に何本も走っていて、比較的新しい住宅が多く、ヨーロッパ風のモダンな家も多い。

想像よりも狭く長い坂道だ。急な斜面が一度も曲がることなく、遥か向こうまで延々と続いている。平日の昼間だからか人の往来も少なく、スケッチブックを持ってくれば良かったと思う。静かなので、スマホのシャッター音が住民の皆様に不快感を与えないか気になる。一眼も持ってきたが、スマホの広角レンズの方が広い範囲の詳細を拾うことができるので便利だ。ぐるぐる歩きながら見物していると、同じ範囲を配達でまわっている郵便局員さんと頻繁にでくわして気まずい。

家のベランダに柿が吊るしてある。何かの塔が立っている広場を見つけた。冬だが、晴れていて陽があたたかい。道中、アトリエ松田という表札を見つけたものの、建物の前に妙な彫刻が複数転がっていたので近寄らないことにする。

お腹が空いた。テイクアウトでいいので何か食べたい。食料を探しに行こうと足を進めたところで、「十字架山➡︎」という看板が目に入り、興味をそそられた。道なりに行けばすぐ、円形の小さい広場が現れる。

山というほどの高さは無く、小さな広場のような場所にたくさんの十字架が並んでいた。植木を挟んですぐ向こうは一軒家に囲まれていて、ベランダに洗濯物が揺れている。イエスの処刑されたゴルゴダの丘に似ているためここに十字架が立てられたらしいが、これを毎日見ている住民はどういう気持ちなんだ…?と思った。広場の説明を読むとわたしにはあまり馴染みのないエピソードが多かったので(私の両親はプロテスタントである)、恐らくカトリックの場所だろう。

再度、食料を探す旅に出る。先ほどみはらマルシェの女性に教えてもらったお洒落なレストラン「三原庭園」に行こうとしたが、ネット検索ではメニューの値段が分からず怖かったのと、道が複雑だったので、もう一つのおすすめである「サテンドール」に行った。

長崎グルメのトルコライスが食べられるお店らしい。

ローカルな喫茶店という雰囲気で、案内されたソファの右側には天井まである漫画の本棚、すぐ横の壁にはおかずクラブとルー大柴さんのサイン色紙が貼ってある。テーブルは昔の麻雀台だ。

揚げ物やハンバーグといった、大人のお子様ランチのようなメニュー内容に瞳をキラキラさせながら、エビピラフのトンカツトルコライスを注文した。とその時、店員さんに「並ではなく、小サイズにしておきますか?その方が良いと思います」と確認され、雲行きが怪しくなる。

しばらくして、お待たせしました、と運ばれてきたのはこれでもかと盛られたトンカツ、ナポリタン、ウィンナー、ポテトサラダ、目玉焼き、その他諸々。その下一面にぎっしりと引かれているエビピラフ。トンカツの上に、お肉がゴロゴロ入ったカレーのルーがかかっている。小学生男子が考えたんかと言うぐらい、むちゃくちゃなメニューだ。

私は胃が小さくすぐ満腹になる上、食べるのが遅いので、脳が満腹を感じる前に少しでも胃に入れなければいけない。野菜は後回し、水を飲むのをひかえ、とりあえず重たいジャンルの食べ物から減らしていく。小休止をはさみながら勢いよく頑張った。米がパラパラのピラフだったので食べられたものの、白飯だったらもっと大変だっただろう。お腹はパンパンだが、意外と気持ち悪くならずになんとか完食した。料理自体はとても美味しいのだ。量がすごいだけで。

膨れたお腹を引きずるようにして、ヨロヨロと丸善団地に戻る。

ここは本当に普通の住宅街で、勝手に風景を描いて絵を売って良いのかわからないので、街の誰かの了承のようなものが欲しい。

道に点在している自治体掲示板を見ると、地域イベントの案内で公民館の場所が載っていたので行ってみた。ちょうど下校ラッシュで道に小学生が溢れてきたので、なるべく不審者にならないよう忍びながら歩く。こういう時に、警戒されにくい若い女という生き物で良かったと思う。

結局公民館には小学生しかおらず、すぐ横の家で布団を取り込んでいたお母さんに聞いてみると、ここにはスタッフが常駐していないとのことで、意を決して掲示板の案内チラシに載っていたイベント代表の方へ電話をかけた。気さくなおばちゃまがご対応くださり、自治会長などの電話番号をご紹介いただく。しかし「ここをモデルに絵を描く…?よくわからないけど皆さん勝手になさっているのでは…?」といった反応で、お互いピンとこない感じではあった。

歩いているうちに、夕暮れ時になる。丸善団地はSNSで夜の写真を何回か見た事があり、せっかくなので夜景も観て帰ろうかと思ったが、坂の上で三脚とカメラをもった自意識の高そうな青年(偏見)が立っているのを見つけた。陽が落ちるのを待っている様子で、同担拒否のオタクのような心境になる。わたしは自治会長の連絡先を知ってるんだぞ、と心の中で謎のマウント。一緒に待つのも気まずいので、帰ることにした。

ホテル近くのファミリーマートで、ビールとおにぎりとサラダを買って帰宅。着くなりすぐにお風呂に入り、乾杯。就寝。

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