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長崎市滞在-2022/12/05 (前半 初日)

個人制作のため、長崎市に9日間行くことにした。

前から気になっていた丸善団地というところが目当てだ。長い坂道が特徴的な住宅街で、この場所の魅力的な写真を目にする機会が多くあり、良い画が採れるだろうと確信していた。
旅行会社のパックで行くので、初めて一人で飛行機に乗る。飛行機は怖くてできれば乗りたくないのだが、大阪からだと長崎まで一番スムーズに行けるし、全国旅行支援制度で安くなっていたこともあり、挑戦することにした。

朝9:00に伊丹空港発の飛行機で、サイトで調べると2時間前には空港に着いていた方が良いということだったので、その通りにする。前日にオンラインチェックを済ませ、予習した通り自動預け機でスーツケースを預け、周りの人に倣って保安検査場を通過した。意外とすぐに終わり、1時間以上前に長崎行きのゲートに着く。

乗り込むと飛行機はあっという間に離陸した。鉄の塊が空を飛ぶという恐怖と、このとんでもない乗り物を開発した人々の失敗と成功の数々に勝手に思いを馳せ、情緒がぐちゃぐちゃになる。席を一つ挟んで隣に座っていたスマートなスーツのおじさまが、玄人の雰囲気で堂々としていたので少し落ち着いた。気流の関係で常にシートベルトをしているような天候で、フワフワするのが怖くて目を瞑ると、あっという間に寝てしまう。途中で目覚めた時、自分のドリンクをいただき損ねたことに気づいたが、そのまま眠った。飛行機からみた街は、山が規則正しく拓かれている印象だ。1時間半ほどで長崎空港に着き、回転寿司のように流れてきたスーツケースを受け取って、JR長崎駅へ向かうバスの切符を買った。雨が降っており、空が暗くて寒いので、知り合いが一人もいない街で殊更心が荒んだ。

ニッポン放送の中川家のラジオをよく聴いていて、長崎市はそのパートナーである東島アナの故郷なので、しみじみしながらバスの外を見る。雨のせいか九州だからか海が荒れており(私は瀬戸内海しか知らない)、細かい白波が立っていた。

車窓から見えたJR新大村駅の建築が、故郷の千里阪急に似ている。これは、両方の建物を知っている人でないとピンとこないかもしれない。

天候の悪さで建物のすべてがうすら古く見え、期待より不安が勝った。長崎空港から新地中華街行きのバスに乗ればホテルまで直行だったのだが、そちらが混んでいてJR長崎駅行きのバスに乗ったため、路面電車に乗り換えて新地中華街へ向かう。駅から徒歩すぐで、宿泊先である「長崎バスターミナルホテル」に着いた。

ホテルで大きな荷物を預かってもらい、チェックインの時間まで周辺を歩いてみた。丸善団地以外知らずに来たので、何が有名でどんな場所なのか、歩くことでヒントが欲しかった。あとでわかることだが、今いる新地中華街は、グラバー園や出島や港に歩いて行けるほど近い、長崎の観光地ど真ん中の場所だった。丸善団地はここからバスで40分ほどかかる。

雨が降っていて、少し寒い。新地中華街は飲食店や土産物屋がたくさんあり、修学旅行生がわんさか居る。知らない街で、元気な中高生に挟まれてすっかり萎縮した私は、お土産屋さんを一軒のみ物色した後、街の静かな方へ足を向けた。中華街を出てすぐに、大きな門のようなものが現れる。「唐人屋敷跡」という、鎖国政策によって設置された中国人住居地区の跡だ。お堂がいくつか残っていて、パネル展示で当時の唐人と日本人の交流の歴史を学ぶことができた。唐人屋敷の二の門の中へ入れる日本人が遊女だけだったという記述を見て、私が遊女ならスパイの副業をするなと思った。

坂を上がった土神堂に案内センターがあったので、入って展示を見ていたところ、スタッフのおばさまに声をかけられた。人見知りなので声をかけてもらったことにホッとしながら、少しだけ質問をしたりしてご案内いただく。長崎市がすり鉢状の地形で山に囲まれており、この辺りが埋立地であることを初めて知った。丸善団地に行くために大阪から8日間長崎市へ来たことを話すと、「おもしろいねぇ(変な人だねの意)」と返される。前述の通り、こここそが長崎の観光地ど真ん中なのであるが、全く分かっていなかった。おばさまに、観光案内の地図にある主要な場所に赤ペンで印をつけてもらい、後日改めてまわろうと、地図を一旦直して再び坂を上る。歩くだけでポイントが貯まるコカコーラのアプリCoke ONでドリンク無料チケットが残っていたので、途中の自販機で一番高いプレミアムファンタを買った。

坂の上は完全に住宅街だ。観光客は別の場所にいるらしく、あてどなく歩いているのは私だけである。住民の皆様に怪しまれないかドキドキしながら歩を進めた。何しろ知識がひとつもないので、街に対しても人見知りをしており、人の家に勝手に上がっているような感覚がして全然写真が撮れない。

今日は散歩に徹することにして適当に坂を下っていくと、案内センターのおばさまが地図に印をつけてくれた「丸山公園」があらわれた。昔遊郭だったという場所で、現在はちょっとした遊具とトイレのある公園になっていて、坂本龍馬像が立っている。おばあさん3人組がベンチに猫を座らせ餌をやっていて、自身らは立ってタバコを吸いながら談笑しており、独特の雰囲気があった。

観光地ではなく住宅街を歩いているので、住民の皆様の「見ねえ顔だな」をひしひし感じる。長崎は親戚もいなければ旅行で来たこともない。小さい頃から馴染みのあった尾道に比べて、とっつきにくい印象だった。ギャラリーがないか事前に調べたが、ほとんどなさそうだ。丸善団地のみでなく長崎市の風景をピックアップするのもいいなぁと思い始める。個人制作は、主要な観光地でなく、何気ない生活の風景を描けるのが良いところだが、あまりに伝手がないと"観光地"のネームバリューに頼ることも必要だ。まだ丸善団地に行ってもいないのに、心が守りに入る。

歩いているうちにローカルなスーパーが現れた。みかんが128円と安すぎるので買う。ごつ盛り焼きそばも一緒に買った。レジで何か話しかけてもらったが、声が小さいのか方言か、何も聞き取れず申し訳ない。

再び適当に街を歩いていたところ、目の前に「思案橋」という文字が現れた。思いがけず、先程おばさまにご案内いただいた地図の場所をまるっと周ったようだ。道路沿いに走る路面電車の駅で場所を確認し、ホテルにチェックインしに向かう。

道中、若いお母さんがベビーカーでぐずる子供に「さぁせん、もうしぁけない、すいませんっす」と話しかけながら早足で歩いていて面白かった。

帰る途中に大きな商店街があったので、しばらく寄り道してショッピング。ここは「浜市アーケード」という場所らしい。案内センターのおばさまが「雨を凌げるアーケードのある道を通ると良いですよ」と教えてくれたのだが、ここのことだったようだ。

地図も見ず適当に歩いたものの、偶然見どころを見られたようでびっくりした。無事にホテルでチェックイン。預けていた激重の荷物を部屋に運んでくれていてありがたい。全国旅行支援制度で支給される地域限定クーポン「ながさきで“心呼吸”の旅キャンペーン」も受け取った。商品券のような形で、1000円単位で使えるとのこと。一日につき 3000円支給されるので、とても助かる。

部屋に入って速攻で荷物をほどき、携帯を充電しつつお湯を沸かしてごつ盛り焼きそばをかっくらった。食後、絵の仕事の作業をしている途中で寝てしまい、そのまま21時まで爆睡。起きだしてすぐ近くのファミマへ買い出しに行ったが、適当にカゴに入れたため合計1700円で、地域限定クーポンの足が出る。今後はちゃんと計算しようと思う。

変な寝方をしたので頭が痛い。着替えは後日コインランドリーでまとめて洗おうと思っていたが、部屋が乾燥していて加湿したかったので、下着だけ洗って干した。

0:30くらいに就寝。

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