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メンバーがつい"整う"目標を設定する会「腹落ち会」とは?(実践編)

前回は、「腹落ち会」を始めるに至った背景についてお話ししたのですが、今回は、具体的にどんなことをやっているのか? そして、どんな効果があったのか?についてお話ししていきます。

(事前準備)①チームからの期待をマネジメントチームで擦り合わせる

「腹落ち会」では、本人の内発的動機だけでなく、「チームからの期待」も伝えた上で、両者が重なる目標を立てられるようサポートしていきます。そのため、事前にマネージャーやメンターといったマネジメントチーム内でも、「この半期はどのメンバーに、どんな期待をかけていくのか」を話し合っておきます。

具体的には、案件数や売上目標もあれば、メンバーの定性的な成長目標(「半年後には、こういう姿になっていてほしい」など)のようなものもあります。これをメンバー一人一人に対して話し合っておき、それを腹落ち会で伝えられるようにしておきます。 

(事前準備)②開催のアナウンスとツールの見直し

目標設定シーズンになると、メンバーに「腹落ち会」を開催する旨をアナウンスします。目的や、スケジュールの設定の仕方などを、チーム内に周知します。また、メンバーに記入してもらう「目標設定用シート」も、同じ内容でいいのか? 修正したほうがいいところはないか? を見直し、必要があればアップデートをかけておきます。

当日

① 目的や背景の説明

「腹落ち会」は、目標設定面談とは別で1人につき1時間半、さらにそれに本人のメンターも加えて実施するので、忙しい日常業務の中では大きくて貴重な時間を設けてもらうことになります。それゆえ、「なぜ、それだけ時間をとるのか?」「どんな背景からこの会が生まれたのか?」を丁寧にメンバーには伝えます。

背景については、こちらでお伝えした通りなのですが、「なぜ、目標を設定するのか」ということについては、このように伝えています。

(1)頑張る方向を見失わないようにするための道しるべを立てるため
(2)自分がチャレンジしたいことを表明しチャンスや周囲からのサポートを得やすくするため
(3)個人とチームの成長のドライバーにするため

(1)について。目の前のプロジェクトに真摯にコミットしてくれるメンバーばかりなので、それはとても素晴らしいことである一方で、あまりにも目の前のことに一生懸命になりすぎると、ふと立ち止まった時に自分の居場所がわからなくなっていることがあります。そこで「目標」という何か立ち帰れるものがあると、本来自分が大切にしていたことや、目指していたことを再認識でき、またその視点で新たなプロジェクトに取り組むことができるようになります。

(2)について。案件やプロジェクトは有限なので、誰にどんなお仕事をお願いするかを考える際の参考にしたりしています。そこで、「こんなことをやってみたい!」と表明しておくと、チャレンジしがいのある案件のアサインがされたり、周囲からも相談されやすくなったり、情報が集まりやすくなったりします。

(3)について。もちろん、目標自体やその達成度合いが一切評価に影響しないわけではありません。当然参考にはされるのですが、「評価をされるために」目標を立てるわけではなく、「自分自身が心地よくストレッチをしながら成果を出せること。結果としてチーム全体でできることが広がりチームの成長につながること。」を促すための存在が目標である、と話しています。

このあたりはまだまだ社内でも議論の余地があり、これからさらに目標制度や評価制度を見直していく必要はあるのですが、現時点では「成果と成長を両ドリするためのドライバー」という見方をしています。

②前期の目標を振り返る

前段を伝え終えたら、いよいよ目標の設定に入っていきます。
まずは前回立てた目標を再度確認し、実際にこの半期はどうだったのかを振り返ります。

「おお、こんなこと書いてた書いてた。」
「これは、あの案件で意識してやってたね。」
「やってみたけど、〜〜な発見があった。」
「思っていたより、自分にとって大切なことではなかったなぁ。」

などなど、具体的なプロジェクトベースで振り返りを行って自分が獲得したことや発見したことを言葉にしていったり、「いや、いろいろあったけど、今結局何がしたいのかわからなくなってるかも…」みたいな普段は気づかないふりをしていたような悩みを口にしてみたり

この半年間を振り返ることで、「現在地」をそれぞれ認識していきます

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③次の目標を立てる

「現在地」が見えてきたところで、少し先の未来について触れていきます。今後やってみたいことやなりたい姿、個人ミッションや大切にしたいことなど、あえて「遠く」に思いをはせてもらいます。 明確なイメージがなくても大丈夫。無いならないで、「何が見つかると1歩進んだと感じられるのか」を考えれば、それが直近の目標になったりします。

少し先のことを想像したり、言葉にしてみたりした後で、いよいよ「この半期で目標にしたいこと」を考えていきます。

ここまでは、個人視点での話題が中心だったので、ここで事前にマネジメントチームですり合わせておいた「チームからの期待」についてもお伝えします。

過去から現在、そして少し遠くの未来を見据え、チームからの期待も受け取った上で、「じゃあ、この半年間は何が実現できるといい?」を話していきます。 

「将来的に、〜〜みたいなことをやりたいから、この半年は〜〜ができるようになりたい!(〜〜を意識して取り組む!)」
「〜〜〜を自分の好きな〜〜のやり方でやれると、自分にとってもチームにとっても良さそう!」
「今はまだ、〜〜が見えていないから、それを発見できるような半年にしたい!」

などなど。出てきたキーワードは付箋に書き留めておき、最後には本人に渡します。そして、メンバーは「腹落ち会」後に下のような「目標シート」に自分の言葉でまとめて記入し、上長との目標設定面談に持ち込みます。

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「腹落ち会」の効果

① 忘れかけていた情熱を取り戻す
「なぜ目標設定を大切にするのか」でもお話ししたのですが、日々目の前のプロジェクトに一生懸命になったり、壁にぶつかって心折れそうになったりしていると、「もともとどんなことにワクワクしてこの仕事をしようと思ったのか」や「どういう自分自身が好きだったのか」が見えにくくなることがあります。 

そんな時、「腹落ち会」で丁寧に本人と対話をしていくことで、どこかに置いてきてしまった情熱を再発見できることがあり、「そうだった!このワクワク感だった!なんだか行けそう!」というエネルギーが満たされた「整った」状態になることがあります。

② 自分の中で閉ざしていた"何か"に気づき向き合う
また、①のケースが少しこじれてしまった場合、実は「悩んでいる」ことを「忙しさ」で蓋をして、"見ないふり"を選択していることもあります。その正体を明らかにして、「コントロールできる状態」にまで解像度を高められれば、怖がらずに向き合える「整った」状態になります。

③ メンター/メンティー間の相互理解
「腹落ち会」は、メンター達にも同席してもらい、適宜質問を投げかけてもらったり、「こう見えているよ」というフィードバックをもらったりします。普段の1on1などでは話しきれない、本人の内発的動機やパーソナリティにも触れていくので、「たくさんコミュニケーションは取ってたけど、そんなのはじめて聞いた・・・!」みたいな新しい発見があったりして、両者の関係性も深まり「整った」状態になっています。

「半期に一度」がちょうどいい

腹落ち会は、「目標設定のため」というのは建前で、「半期に一回のメンテナンス」のようなものかもしれません。半年間、がむしゃらに走ってきて、いろんなところにガタがきていたり、大切なものを失いかけていたり、そろそろアップデートが必要だったり・・・。

状態はそれぞれですが、半年に一度じっくり誰かと話をすることで、自分自身のコンディションが、すっと「整う」。そして、また走り出せるモードになる。そういう時間にしてもらえるよう、「腹落ち会」も私もさらにパワーアップしていきたいと思います。

(ちなみに、この腹落ち後のメンバーの「スッキリ」とした表情と「よーしやったるぞ!」モードに入っている様子を見るのが、この上ない幸せなんですよねぇ。)

以上、目標設定前の面談「腹落ち会」についてのご紹介でした。

基本的なコーチングプロセスに近いのですが、何か特別なスキルややり方が必要、というわけではなく、本人と直接レポートラインにいない第三者が日常とは違う時間を設けて話をしてみるということが肝なのかなぁと思うので、ぜひ「ナナメ1on1」などでも試してみていただくといいのではないかと思います。

その際は、ぜひ感想なども教えてくださいね! 

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