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【読書】『ないものねだり』に学ぶ、女優 中谷美紀さんの”ある一人の女性の生き方”

 Kindle Unlimitedでたまたまオススメに上がって来た本書。

『ないものねだり』(著:中谷美紀)

 中谷美紀さんのエッセイや日常で感じたことをまとめて一冊でありながら、読み進めるほどに中谷美紀さんから発せられる語彙(ごい)の美しさや文体の美しさに魅せられました。

 中谷美紀さんをご存知の方も、存じ上げない方も本書を読むことで”ある一人の女性の生き方”を垣間見ることができるのではないかと思います。

 それでは早速、ご紹介します。

 ※今回の記事では実際に書かれていた文章から引用し、それに対する私の考察を入れるため読みづらい部分もあると思いますが予めご了承ください。

<終わりと別れ>

「ひとつの作品の別れは、ひとつの価値観との別れを意味する。」
「ひとつの作品に携わることはまるで一人の人を愛するかのように愛しく、切ない。 この先、いくつの作品に出会い、分かれるのだろう。」

 女優業ならではの感性と感じつつ、本も同じように出会いと別れを繰り返すのだと感じました。

 作者の価値観に触れ、作者と対話するように本を読めば本を愛し読み終えた時の切なさと読了感を深く味わうことができるのではないかと思います。

<柳に雪折れなし>

「(店主)美紀ちゃん、柳に雪折れなしって言ってねえ、頑固に突っ立ってる大木より、ゆらゆら揺れている柳の方が本当は強いんだよ。」
「真の美しい振る舞いとは同じ女性をも魅了することだということを身にしみて感じてからは、もっぱら女性らしさの研究中である。」

 中谷美紀さんがある店主から言われた言葉です。

 また、美しさについて同性を魅了するの美しさと語れれていますが一言で表すとするならば

”真の美しさ(強さ)とは、『堅』ではなく『柔』”

 人の身体、心の持ちよう、相手への接し方など柳のように柔らかく、しなやかに感情をいなし、自然に逆らわず生きることが大切なことに気づきました。

<白珪尚可磨(はっけいなおみがくべし)>

「『一点の汚れもない白い球であろうと、さらに磨くべし』ということらしい。」

 ある茶道に中谷美紀さんが行かれた際に掲げられていた言葉。

人生は常に「学び」と「探究心」。

 自身が心を磨くのは自身の生涯に渡る努めなのかもしれません。

 わたし自身も「丁寧に生活する」ことから、まだ真っ黒な自分を少しずつ磨き上げて行きたいと思います。

<逆説的な証明>

「女は毎日「綺麗だ」とか「愛している」と言われ続けると綺麗になるのだということを逆説的に証明したようだ。」

 役柄によっては汚い言葉でなじられることも多く、その時は言葉の通りブスになっていたそうです。

 女性を美しくしたいのであれば、美しい言葉をかけることが大切なのだと逆説的に証明されています。

女性へ言葉を発する際は綺麗な言葉で「綺麗ですね。」と素直に伝え、互いの心が綺麗で平穏に過ごせる方が素敵な気がします。

<ないものねだり>

「私の職業は季節労働なので、ひとたび撮影が始まると朝から晩まで、いや、時には朝から朝まで『何が哀しくてこんな辛い仕事をしているのだろうか?』と自ら哀れに思うほど働き続けているのだけれど、終わってしまえば失業者同然。」
「失業してしまったらどうしよう?というのは切実な心配事であるのと同時に今度こそ、地に足を着いた暮らしをしたいという、”ないものねだり”の憧れである。」

 女優業や俳優業に関して全く見識(けんしき)が無いですが、この文面からその一端を垣間見たような気分でした。

 一見、華やいで見えますが裏では体調管理、体型の維持、作品への理解、監督の要望、長期に渡る撮影を乗り切る体力と気力など一般人よりもあらゆることに気を配らないといけないことが伝わって来ます。

 しかし、オーディションやオファーが無ければ、立ち所に”失業者”となってしまう厳しい世界。

絶え間ぬ努力と不安の狭間(はざま)の中で逞(たくま)しく、美しく生きることが、女優なのかもしれないなと浅はかながら感じました。

<おわり>

 本書を読み終えてから中谷美紀さんのクールビューティーな外見的印象だけでなく内面の美しさ、聡明さ、優しさと意外なお茶目さなど見ることができ「あー。私たちと同じ人なんだ。」と親近感が湧いて来ました。

 ただ一つ、異なるなと感じるのは言葉の端々から伝わる日本語の美しさと凛とした姿勢は一般の方に比べると別格なのだと気づかされました。

 私も日常に使う言葉を見直し、美しい日本語を改めて学び日本人のアイデンティティを大事にして行きたいと思います。

 本書が気になる方は以下からご確認できます。とても良い良書ですのでお茶を淹れながら読まれてみては如何でしょうか。


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