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あんた、ホンマにブッサイクやな(劣悪遺伝子排除法)

私の母、澄子はとてもおしゃれさんな人だった。

おしゃれなだけでなく、本人も相当な美人で、社会に出てからブイブイいわせた結果、大きく道を踏み外した。

まぁ、それはいい。
その詳細は「大空真弓と恋のバカンス」でごらんください。

さて、前回のお話で母の洗脳により見事に

私はおやゆび姫

となった、えっちゃんこと私。

あの会話の中に

「えっちゃんはね、実は『おやゆび姫』なんよ。お母さん、かわいいかわいい女の子が欲しくて神様にお願いしたんよ。
そしたらチューリップから、えっちゃんが生まれてきてん!」

こんな話があったのですが、今回はここが重要なポイントになる。

お母さん、かわいいかわいい女の子が欲しくて神様にお願いしたんよ。

ここ、大事なことなのでもう一度

お母さん、かわいいかわいい女の子が欲しくて神様にお願いしたんよ。

そう、間違いなくそういった。
何せ洗脳されたわけだから、忘れるわけもない。

かわいいかわいい女の子が欲しくて神様にお願いした

そして、私がチューリップから生まれてきたと強制的に信じ込まされた。

私はチューリップから生まれたんやから、お父さんがいないのは当然だわね♪
と夢見るえっちゃんは、おやゆび姫の絵本を大切に自分の宝物にしていた。

だがしかし、かわいい女の子に生まれたはずのえっちゃんは、実母の澄子から顔を見る度に、以下のことを毎回言われて続けていた。

「あんた、ホンマにブッサイクやなぁ・・・」

聞きました?奥さん。
これ、いかがなものか。

ここから先、何をどう書けばいいのか自分でも困るのだが、顔を見る度にいわれるのだから、どうしようもない。
母は、美しく可愛いものが大好物なのである。

幼心に、この人言うてることがメチャクチャやなと思っていた。
多分。
おかしいでしょ、神様にお願いしてかわいい女の子がチューリップから生まれたはずなのに、なぜ顔を見ると

「ブッサイク」

不細工ではない「ブッサイク」と「ッ」ちっちゃい「ッ」が入るほど勢いよくと言ってくるのか。
実の親に言われた子としては、元も子もない。

さすがのおやゆび姫のえっちゃんだって、堪忍袋の緒が切れるってもんだ。

お母さん、なんでそんなブッサイクブッサイクいうんよ!

いくら子供とは言え、そんなこと親から言われたらそりゃ泣くでしょ。
実は、泣いた記憶ないけど。


だって、忠は男前やったやん


実はこの怨念のようなこの「ブッサイク」という呪文。

晩年になって、ようやく
成人式の直前まで「ブッサイク」と言い続けたのか
本当の理由を明かしてくれた。
※ ちなみに私の振袖姿を見た母は「見れんことはないな」と言い放った。

私の実の兄、忠は超絶美形の玉のようにおふつくしい美男子だった。

母が道を踏み外し出来た子供でありながら、あまりの可愛さに親族一同がメロメロになった程である。
しかも初孫ときたもんだから、目に入れても痛くないほどの溺愛ぶりだったそうだ。

だが、この兄は6年で短い生涯を閉じた。
「てんかん」のせいで。

生まれつきとても病弱だった兄が生まれた後、私を妊娠した母は、本気で神様にお願いをしたらしい

「神様、顔が不細工でもへチャでも構いません。どうか、どうか身体だけは健康に、丈夫な子が生まれてくるように。お願いします。お願いします。」

兄の闘病生活で、健康のありがたさを一番理解したのは母だと思う。
これは間違いない。
子が自分より先に旅立つなんて、想像したくもない事実。
それと、当時の母は闘っていたのである。
この願いも当然といえば当然だろう。

そして、この話をしんみりとした後に、澄子は言った

「せやから、あんたは『ブッサイク』に生まれてん。ええやろ?」

何がええねん。
ええわけないやろ。
不細工に生んでくれてありがとうなんて、誰が言うねん。
アホちゃうか。

この母の祈念は、その後、またしても道を踏み外し、駆け落ちすることになった相手の子にも呪詛のように施され、見事、姉弟そろってブッサイクだけど健康に育つ羽目になった。

ありがとう、お母さん。
あの呪詛は、貴方なりの「劣悪遺伝子排除法」だったのですね。

とでも言うと思ったか。

あなたはもう天国で、忠と会っているだろう。
美男子の息子に数十年ぶりに会えて、抱きしめ頬ずりをしていることだろう。

だがな、残された、かわいいおやゆび姫と洗脳されたえっちゃんと、
かわいいなーかわいいなーと意味もなく言い続けられ洗脳された弟は、
この顔面を持ってまだメンタル強く生きていかねばならんのだ。

しかし、このブッサイクな顔のおかげで、姉弟揃って自分の顔コンプレックスを別の面で克服したことは事実である。

私は、学業と読書とUKミュージックに情熱を燃やし
弟はそのコンプレックスをひたすら学業に向けた。

そして奴は、今では日本でも知らない人はいない大企業の本社で役員付きの業務をするまでのし上がった。鳶が鷹を生んだとはこのことだ。

その上、姉弟二人共、結婚相手は、他の方々が羨むほどの美男美女とゴールインした。
ないものねだりの究極を叶えたのである。
自分を整形するのではなく結婚相手の美貌で

お陰様で、自分の子供はこれまた他人が羨むほどの美人に生まれてきてくれた。
本当にありがとう。
相方にそっくりに生まれてきてくれてありがとう。

お母さん、貴方のおかげで、私たち姉弟、団結力を強く、生き続けることが出来る良い子になりました。

そこだけは、感謝の意を評します。

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