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カーボンニュートラルの担い手ソーラーシェアリング

「森林伐採してまでやる必要はない。」仙台茂庭地区の民有林100ヘクタールを伐採してメガソーラーを建設する計画に対し市民団体から反対の声が上がっている。

(河北新報)

近年、太陽光発電に対する悪評があとを絶ちません。

3.11、東京電力福島第一原子力発電所の事故を契機に、化石燃料や原子力発電に依存しない再生可能エネルギー産業の育成が叫ばれ、2012年から国により電力固定価格買取制度(FIT)が施工されました。
ひとくちに再エネといっても水力、地熱、風力、バイオマス、太陽光発電等いろいろありますが、中でも、太陽光発電は、規模の大小を問わず設置できることや、工期が短く、事前調査や許認可手続きも簡便なことから、再エネ=太陽光発電と言われるくらい日本全土で一気に普及してきました。
ただ、最近は、太陽光発電設置に伴う安全上の問題や景観上の問題がクローズアップされ、住民の強い批判の声を受けて規制条例をつくる自治体も増えています。

一方、人為的な温暖化による地球環境悪化の危機感から世界ベースで地球温暖化防止問題が取り上げられ、COP21(国連の気候変動枠組条約締結国会議/パリ協定)では、2050年までにカーボンニュートラルを達成して気温上昇を1.5℃以内に押さえることを目指し、当面2030年までに温室効果ガスの46%削減が義務づけられました。
日本も条約締結国の一員として13年比で46%の削減を約束しました。そのためには更なる再エネの拡大が不可欠で、国はエネルギー基本計画で2030年の再エネ比率を36~38%にすることを決めました。
ただ、これを達成するにはクリアしなければならない問題が多々あり前途多難です。
以下、主要な問題点について触れておきましょう。

1.風力発電
世界的にみると太陽光と並んで突出した建設実績があるのが風力発電ですが、日本では適地も少なく環境問題も大きいことが原因で、今までわずかな実績しかありません。四囲を海に囲まれた日本ですから、今後は本格的に海洋での発電を考えていくことが必要と言われていますが、安全上の問題や漁業への影響、コストパフォーマンスなどの問題があり一筋縄ではいかないでしょう。
2.バイオマス発電
間伐材等の不要な木材などを燃焼して発電するのがバイオマス発電ですが、継続的に原料を確保するだけでも大変で、原材料の不足を輸入に頼るなど本末転倒なことが起きています。
3.小水力発電
一定の水量が年間を通して継続的に確保できれば非常に効率的ですが、水利権等の問題があり、なかなか適地を確保するのが困難で足踏み状態が続いています。
4.太陽光発電
今後も再エネ開発の本命だと思いますが、適地が少なくなっている中で、前述したような諸問題をかかえ、いかに健全な形で開発するかが大きな課題です。 

さて、こんな風に考えてきたとき、現在私たちが取り組んでいるソーラーシェアリングはどうなのか、少し掘り下げて考えてみたいと思います。
 
都市部においては、東京都も新築住宅にはソーラー発電設置の義務化を決定しましたが、戸建てだけでなく日本全国に大量に存在する集合住宅の屋根上発電についても本気で考えていく必要があるでしょう。今まで設置のネックになっていた住人の合意形成問題こそ国や自治体が乗り出して設置を可能にする法律や条例でバックアップしてほしいものです。
老朽化が進む建物でも、軽量安価で移動可能なパネルが開発されれば一気に普及するはずです。
野立ての太陽光発電設備については、いまや作れるところはほとんど作ってしまって、もはやまとまった適地がないと言われています。そこで目を付けられたのが荒廃農地と呼ばれ耕作放棄されている遊休農地です。農水省の調査によると全国には19.2万haの荒廃農地があり、仮にそこを全部野立ての太陽光発電設備にすれば100GWの発電が可能と踏んでおり、国のエネルギー基本計画では4.1GWをここから捻出すると試算しています。

問題は、 “歴史は繰り返す”ということになってはダメだということでしょう。再エネを増やしたい、そのために規制を緩和する、その結果緑地がなくなり景観が破壊される、そんな悪循環に歯止めをかけながらめざす目的を達成する手立てを考えなければなりません。
 
そこで登場するのがソーラーシェアリング。畑を潰すわけでなく、下でしっかり作物の栽培をしつつ上部で発電するハイブリッドな方式です。野立ての太陽光発電設備より面積当たりの発電量は減りますが、放置された農地を農地として復活させ、環境に配慮しつつ再エネ発電事業も行うことができます。これならあり、ではないでしょうか。
 
私たちが建設したさがみこベリーガーデンはそんな難題へのひとつの回答だと言えます。
百聞は一見に如かず。皆さんぜひご来園ください。
 
2023.1.14
山川 陽一

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