高齢者にとって危険なうつ
私が地域包括支援センターで保健師として働いていた時、毎日たくさんの高齢者に出会いました。
その中で感じたのは、高齢になればなるほど身体の元気度合いの差が大きくなっていくという事です。
80歳にもならずに、要介護になる人もいれば、90歳を過ぎても元気に一人暮らしをしている人もいます。
実はこれは身体的な病気のためだけではありません。
一番問題となるのは、意欲の低下なのです。
若い人が「うつ」になって自宅に閉じこもっても、そう簡単に寝たきりにまではなりませんが、高齢者が自身の健康を放置すると、数ヶ月であっという間に要介護になります。
高齢者の意欲低下にはいろんな原因があります。
例えば、親しい人の死別や経済的な問題、自身の病気や今後の生活に対する不安などによって「うつ」状態になったり、認知症による脳細胞の活動低下など。
これまで元気に過ごしていたのに、なんとなく全てが面倒になってきたら、要注意。
まず食事をきちんと取らなくなります。
自分で調理してたけれど、面倒でご飯やパンなどの主食だけとか、惣菜やインスタントのものばかりに。
栄養バランスが崩れると、心身にも悪い影響が出てきます。
さらにすすむと、病院の定期受診をしなくなったり、薬を飲まなくなったりするように。
これらは家族が近くにいて、食事や受診、服薬管理の支援があれば、しばらくは問題なく過ごせます。
でも一人暮らしの場合は、この意欲低下はかなり大変です。
介護サービスを受けるにも、意欲低下だけで体が元気だと介護度は軽くなりがち。
そうなると食事や服薬管理、家事などをお願いしたくても、週に1-2回しか介護サービスを利用できないということも。
また、1番の問題は本人です。
本人の介護サービス拒否があると、これまた一筋縄ではいかなくなります。
本人は生きる意欲を失っていますので、家の掃除や食事、服薬なんてどうでも良いのです。
施設に入所しているなら、常に介護士などの職員がいるので何かあれば都度対応してくれますが、一人暮らしではそうはいきません。
掃除や入浴なら週に1回でも良いかもしれませんが、服薬、食事などは毎日のことですから自分がやらなくてはなりません。
実際に意欲低下によって、あっという間に要介護になった人もいますし、施設に入所した方もいます。
高齢者の「うつ」は要介護に直結するため、もっと世の中で関心を持たれても良いと思うのですが、実際に精神科や心療内科でうつの治療を受けている人はほとんどいませんでした。
たいては、かかりつけの内科から処方される安定剤や睡眠薬です。
うつの診断がつかなくても、意欲低下は加齢によって少なからず起きてくるのだとは思います。
新型コロナによる影響で外出を控えた結果、体力も気力も低下している人がたくさんいます。
高齢者の意欲低下を予防して、早期受診するなど、出来るだけ健康寿命を伸ばしていってもらいたいと思う今日この頃です。
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