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タバコと流星④

このエピソードを終えなくてはいけない

彼女は誰の許しもなく39才でこの世を離れた

病院に呼び出された私の顔を見るなり
タバコやめときや
寝巻の襟を広げて見せた
鎖骨の下に悪性生物が今にも肌を突き破りそうに
背中にもあった
触ってみ
ビー玉のように硬かった


通夜の夜…弔問客が去った深夜
美しく若々しい彼女の顔、目に焼き付けた
子供たちがみんな巣立ったら
キャンプしたり推しのコンサート行ったり
遊ぼうな
葬儀場の外でタバコを吸って
残った箱とライターを捨てた
星空は澄んでいた

もう星空を見て不安になることはなくなった



その半年前、

ハロウィンに3姉妹と遊びにきた
近所のハロウィン飾りの家を
ちびっこたちは大騒ぎで
トリックオアトリートを連呼しながら走り回る
追いかける親の身になれよー
彼女は少し困った顔で、
長女が彼氏とつきあうのに反対していてと言った
母親の恋愛…
思春期にはきつかろう(汗)
どうりで、仮装もせずうちで留守番をすると言うはずだ

打ち上げで焼き肉を食べに行った
(ハロウィンに打ち上げ?)
食べ放題なのに
彼女はキュウリの漬物ばかり食べていた
帰り道、夜空を見ながら
体調が悪いけど職場が変わったばかりで休みづらい
と言った

その1ヵ月後グリーンの封筒が届いた
3枚の便せんには医者に告げられた余命と
これからも子供たちを守る決意がびっしり書かれていた
私は証人であると
カエルのシールが笑う

その日から私は星空を見ると
震えが止まらなくて
タバコを吸っても深呼吸ができなくなった
鬱は治ったのに…
流れ星を見てしまったら
ありえなかった
願い事は一つ
奇跡のおこし方をただ知りたかった



姉妹とは交流を続けている
もう皆成人した
長女は結婚して子供も生まれた
彼女はいつも見守っている


詩のように紡いだこの「タバコと流星」には
私が親友とのこの世で交わした最後の約束までを
タバコと流星をキーワードにして書いた
noteに置かせてもらおう

パート切りで保育士失業万歳
50にして天命を知るために
立ち止まってみた

まだまだ拾い集めたくて
これからも書こうと思う

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