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宗教法人法「質問権」条文と専門家会議(宗教法人制度の運用等に関する調査研究協力者会議)

*写真は文部科学省サイトの記事「宗教法人制度の運用等に関する調査研究協力者会議(第1回)開催」より。

宗教法人法「質問権」専門家会議 正式名称

報道では「宗教法人法に基づく『報告徴収・質問権』を行使するための基準などを話し合う専門家会議」(東京新聞)などとされているが、正式な会議名称は「宗教法人制度の運用等に関する調査研究協力者会議」。

文部科学省サイトには「(2022年)10月25日、宗教法人法第78条の2に定める報告徴収及び質問に係る権限の行使について、一般的な基準を検討するため、文部科学省において『宗教法人制度の運用等に関する調査研究協力者会議』の第1回会議が対面(一部オンライン参加)で開催されました」と記載されている。

宗教法人法「質問権」専門家会議 初会合

NHK NEWS WEBSは「旧統一教会に対して宗教法人法に基づく『質問権』を行使するため、文部科学省は専門家による会議を開き、行使するにあたっての基準などについて検討を始めました」(2022年10月25日配信)と報じた。

旧統一教会をめぐる高額な献金や、いわゆる「霊感商法」の問題について、岸田総理大臣から「質問権」の行使による調査の指示を受けた文部科学省は、25日午前、初めての専門家会議を開きました。

「質問権」とは、宗教法人の活動で解散命令に該当する疑いがある場合などに、文部科学省や都道府県が運営実態などについて報告を求めたり質問したりできるものですが、実際に行使された例はありません。

専門家会議は、25日を含めて数回開かれる見通しで、宗教団体の幹部や大学教授など10人余りが「質問権」を行使する条件や範囲などについて議論するとみられます。

文部科学省は専門家会議の議論を踏まえて、年内にも旧統一教会に対し宗教法人法に基づく「質問権」の行使による調査を実施し、解散命令に該当しうる事実関係を把握した場合には、裁判所への請求を検討する方針です。

会議は、冒頭のあいさつ以外は非公開で行われ、文化庁の合田哲雄次長が、「質問権の一般的な基準を定めるため本件の重大性、緊急性を踏まえ、さまざまな角度から議論しいただき、次回の会議で一定の方向性を示したい」と述べました。

宗教法人「質問権」専門家会議 メンバー

東京新聞は「文化庁は、宗教法人法に基づく『報告徴収・質問権』を行使するための基準などを話し合う専門家会議を25日に開く。政府は世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に対し、年内にも行使したい考えで、会議はそれに向けた手続きの第一歩となる。会議は『宗教法人制度の運用等に関する調査研究協力者会議』という名称で、専門家ら19人で構成。質問権を行使した事例がないため、制度の運用について議論する」(2022年10月25日配信)と報じていた。

運用方針が固まった後、文部科学相は質問権行使に先立ち、宗教法人審議会に諮問し、意見を聞く必要がある。同審議会委員は、25日の専門家会議と同じメンバーという。

一連の手続きを経て、文科相は旧統一教会に解散命令に該当する疑いがあると判断すれば、質問権を行使する。宗教法人法では質問に際し、信教の自由を妨げないようにするなど慎重な運用を求めている。永岡桂子文科相は21日の会見で、「年内のできるだけ早い時期に(旧統一教会に)報告徴収・質問権を行使できるよう進めていきたい」と話している。

宗教法人法「質問権」専門家会議 次回会合

産経新聞は「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)を巡り、宗教法人法の『質問権』行使による調査に向けて権限行使の基準を検討する文化庁の専門家会議の初会合が25日、開かれた。11月8日の次回会合で、文化庁側が基準の枠組みを示し、異論がなければこの日のうちに方向性が固まる。宗教団体による組織的な刑事責任の明確性や民法の不法行為の存在などが行使基準に盛り込まれる見込み」(2022年10月25日配信)と報じた。

文化庁はすでに旧統一教会への質問内容などを検討している。会議の結論が出次第、示された基準に照らして準備を進め、宗教法人審議会に質問内容を諮問。年内に調査を実施する。明白な法令違反などが確認できれば、裁判所への解散命令請求が視野に入る。

文化庁は従来、解散命令請求には刑事責任の明白性が必要との解釈だったが、政府が「民法の不法行為も入り得る」と解釈を変更。この日の会合では、民法の不法行為も基準に入ることに異論はなかった一方、信教の自由への配慮や、違法行為の組織性、悪質性、継続性を踏まえた運用が必要との意見があったという。専門家会議は宗教家など19人で構成され、宗教法人審議会のメンバーとは同一。

宗教法人法「質問権」とは

日本経済新聞の記事によると、「オウム真理教による一連の事件後、宗教法人の運営面の透明化を図る狙いで95年12月に改正。所轄庁が宗教法人へ質問し、業務に関して報告を要求できる権限を設けた」(2022年10月18日配信)とのことで、宗教法人法における質問権とは「所轄庁が宗教法人へ質問し、業務に関して報告を要求できる権限」。

オウム真理教による一連の事件後、宗教法人の運営面の透明化を図る狙いで95年12月に改正。所轄庁が宗教法人へ質問し、業務に関して報告を要求できる権限を設けた。答えなかったり虚偽の報告をしたりした場合は10万円以下の過料を科すと規定。文化庁によると、調査は①収益を宗教法人以外で使用②宗教団体の要件を欠く③解散事由に該当する――疑いがある場合が想定され、事前に宗教法人審議会に諮問する必要がある。これまで行使されたことはない。

裁判所は「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」や「宗教団体の目的を著しく逸脱した行為」などがみられた場合、所轄庁や検察官、利害関係者からの請求または職権で宗教法人の解散を命じられる。過去に解散命令が出されたのはオウム真理教と、霊視商法詐欺事件を起こした明覚寺(和歌山県)の2件だ。

宗教法人法「質問権」条文

宗教法人法第78条の2(報告及び質問)には「所轄庁は、宗教法人について次の各号の一に該当する疑いがあると認めるときは、この法律を施行するため必要な限度において、当該宗教法人の業務又は事業の管理運営に関する事項に関し、当該宗教法人に対し報告を求め、又は当該職員に当該宗教法人の代表役員、責任役員その他の関係者に対し質問させることができる」と規定されている。

つまり、次のような事項に該当する認められる場合、所轄庁は(宗教法人法を施行するため必要な限度において)該当する宗教法人の業務または事業の管理運営に関する事項に関して宗教法人に対し報告を求め、または職員に宗教法人の代表役員、責任役員その他の関係者に対して質問させることができると規定されている。

 当該宗教法人が行う公益事業以外の事業について第6条第2項の規定に違反する事実があること。

*第6条第2項には「宗教法人は、その目的に反しない限り、公益事業以外の事業を行うことができる。この場合において、収益を生じたときは、これを当該宗教法人、当該宗教法人を包括する宗教団体又は当該宗教法人が援助する宗教法人若しくは公益事業のために使用しなければならない」と。

 第14条第1項または第39条第1項の規定による認証をした場合において、該当する宗教法人について第14条第1項第1号または第39条第1項第3号に掲げる要件を欠いていること。

*第14条第1項には「所轄庁は、前条の規定による認証の申請を受理した場合においては、その受理の日を附記した書面でその旨を当該申請者に通知した後、当該申請に係る事案が左に掲げる要件を備えているかどうかを審査し、これらの要件を備えていると認めたときはその規則を認証する旨の決定をし、これらの要件を備えていないと認めたとき又はその受理した規則及びその添附書類の記載によつてはこれらの要件を備えているかどうかを確認することができないときはその規則を認証することができない旨の決定をしなければならない。
一 当該団体が宗教団体であること。
二 当該規則がこの法律その他の法令の規定に適合していること。
三 当該設立の手続が第十二条の規定に従つてなされていること」と。

*第39条第1項には「所轄庁は、前条第一項の規定による認証の申請を受理した場合においては、その受理の日を附記した書面でその旨を当該宗教法人に通知した後、当該申請に係る事案が左に掲げる要件を備えているかどうかを審査し、第十四条第一項の規定に準じ当該合併の認証に関する決定をしなければならない。
一 当該合併の手続が第三十四条から第三十七条までの規定に従つてなされていること。
二 当該合併が第三十五条第一項又は第二項の規定に該当する場合には、それぞれその変更しようとする事項又は規則がこの法律その他の法令の規定に適合していること。
三 当該合併が第三十五条第二項の規定に該当する場合には、当該合併後成立する団体が宗教団体であること」と。

*第14条第1項第1号には「当該団体が宗教団体であること」と。また第39条第1項第3号には「当該合併が第三十五条第二項の規定に該当する場合には、当該合併後成立する団体が宗教団体であること」と。

 該当する宗教法人について第81条第1項第1号から第4号までの一に該当する事由があること。

*第81条第1項第1号には「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと」と。第2号には「第二条に規定する宗教団体の目的を著しく逸脱した行為をしたこと又は一年以上にわたつてその目的のための行為をしないこと」と。第3号には「当該宗教法人が第二条第一号に掲げる宗教団体である場合には、礼拝の施設が滅失し、やむを得ない事由がないのにその滅失後二年以上にわたつてその施設を備えないこと」と。第4号には「一年以上にわたつて代表役員及びその代務者を欠いていること」と。

宗教法人法
(報告及び質問)
第七十八条の二 所轄庁は、宗教法人について次の各号の一に該当する疑いがあると認めるときは、この法律を施行するため必要な限度において、当該宗教法人の業務又は事業の管理運営に関する事項に関し、当該宗教法人に対し報告を求め、又は当該職員に当該宗教法人の代表役員、責任役員その他の関係者に対し質問させることができる。この場合において、当該職員が質問するために当該宗教法人の施設に立ち入るときは、当該宗教法人の代表役員、責任役員その他の関係者の同意を得なければならない。
一 当該宗教法人が行う公益事業以外の事業について第六条第二項の規定に違反する事実があること。
二 第十四条第一項又は第三十九条第一項の規定による認証をした場合において、当該宗教法人について第十四条第一項第一号又は第三十九条第一項第三号に掲げる要件を欠いていること。
三 当該宗教法人について第八十一条第一項第一号から第四号までの一に該当する事由があること。
2 前項の規定により報告を求め、又は当該職員に質問させようとする場合においては、所轄庁は、当該所轄庁が文部科学大臣であるときはあらかじめ宗教法人審議会に諮問してその意見を聞き、当該所轄庁が都道府県知事であるときはあらかじめ文部科学大臣を通じて宗教法人審議会の意見を聞かなければならない。
3 前項の場合においては、文部科学大臣は、報告を求め、又は当該職員に質問させる事項及び理由を宗教法人審議会に示して、その意見を聞かなければならない。
4 所轄庁は、第一項の規定により報告を求め、又は当該職員に質問させる場合には、宗教法人の宗教上の特性及び慣習を尊重し、信教の自由を妨げることがないように特に留意しなければならない。
5 第一項の規定により質問する当該職員は、その身分を示す証明書を携帯し、宗教法人の代表役員、責任役員その他の関係者に提示しなければならない。
6 第一項の規定による権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。<「e-Gov法令検索」より抜粋>

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