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フリーランスの保護に関する衆議院選挙政党アンケート調査結果

フリーランスの保護に関するアンケート調査結果

今年(2021年)政府は「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」を公表したが、「安心して働く」には多くの課題が残っている。

そこで日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)は(第49回)衆議院議員選挙が行われるのに合わせ、各政党に対してフリーランスの保護に関する政策について政党アンケートを実施し、その調査結果をMIC公式サイトにて公表した。行いました。

公表された「フリーランスの保護に関するアンケート調査」結果によると、民主党、立憲民主党、国民民主党、公明党、日本共産党、日本維新の会、社会民主党、NHKと裁判してる党弁護士法72条違反で(NHK 党)、れいわ新選組の9党にアンケート調査を実施し、公明党、日本維新の会を除く7党から、10月19日までにファクス、メールによる回答があったとのこと。

フリーランスの権利保護やセーフティネット整備

フリーランスの保護に関するアンケート調査の問2は「今回の衆議院議員選挙に向けたマニフェストに『フリーランスの権利保護やセーフティネットの整備』が入っていますか。そのための政策が入っているかどうかも併せてお答えください」との質問。

この問いに対して自由民主党、立憲民主党、国民民主党、日本共産党、れいわ新選組の5党がマニフェストに「入っている」と答え、社会民主党、NHK党の2党が「趣旨には賛成だが、(マニフェストに)入っていない」と回答。

また、マニフェストに「入っている」とした5党が、その内容についても次のように回答している。

自由民主党
フリーランスとして安心して働ける環境を整備するため、事業者とフリーランスの取引について法制面の整備を早期に行います。

立憲民主党
雇用類似就業者の命と健康を守るため、労働者と同様に必要な労働関係法などを適用できるようにします。

国民民主党
・悪質クレームの被害から労働者を守るための 「悪質クレーム対策推進法」を制定します。
・同時に、 下請け保護制度、 賃金補塡制度などの中小企業・零細事業者対策を実施します。
・就活生やフリーランスとして働く人に対するセクハラも含め、 セクハラ行為を法律で禁止します。
・雇用のセーフティネット機能を高めつつ、 成長分野への人材移動と集積を進めるため、 職業訓練と生活支援給付を組み合わ
せた求職者支援制度を拡充した「求職者ベーシック・インカム制度(仮称)」を構築します。

日本共産党
権利保護のルールを作る。労災補償を拡充する。

れいわ新選組
ギグワーカーの労働条件の改善(れいわ労働政策)

2021総選挙政党アンケート―フリーランスの保護に関するアンケート調査結果―(PDFファイル)

雇用類似就業者を労働者と同様に労働関係法適用

「マニフェストにフリーランスの権利保護やセーフティネットの整備が入っていますか」との質問に対して、立憲民主党はマニフェストに入っているとし、その内容を「雇用類似就業者の命と健康を守るため、労働者と同様に必要な労働関係法などを適用できるようにします」と回答している。

「雇用類似就業者」とは厚労省検討会で用いられた言葉で「雇用によらない働き方だが実質的には雇用と変わらない働き方」の者のこと。また「労働者と同様に必要な労働関係法などを適用できるように」とは「労働者性拡大」を意味するとも理解できる。

しかし、立憲民主党が労働基準法などの労働法規における「労働者定義拡大」にまで言及しているかどうかは、確認しないと不明確。だが、この立憲民主党の回答は他の政党とは違い、最も評価できる。

建設アスベスト訴訟最高裁判決を踏まえた対応

労働政策審議会安全衛生分科会(第140回)が今年(2021年)10月11日に開催された。

議題は、

(1)事務所衛生基準規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令案要綱について
(2)建設アスベスト訴訟に係る最高裁判決を踏まえた対応について
(3)第13次労働災害防止計画の実施状況について
(4)その他。


議題2が「建設アスベスト訴訟に係る最高裁判決を踏まえた対応について」となっているが、その資料には次のように記載されている。

〇建設アスベスト訴訟では、過去に建設業に携わった労働者や一人親方等の石綿へのばく露を防止する措置が十分だったのかという点が争われたが、最高裁判決で規制が不十分だったと判断され国側が敗訴した争点について、現行法令で十分な措置が講じられているか検討し、不十分な場合は、判決を踏まえた見直しが必要となる。

○ 建設アスベスト訴訟の争点ごとの裁判所の判決と現行法令による対応状況の概要は以下のとおりであり、一人親方等の安全衛生対策、有害性の警告表示の義務付け、集じん機付き電動工具の使用義務付けについて、検討が必要と考えられる。(資料「建設アスベスト訴訟に関する最高裁判決等を踏まえた対応について」抜粋)

建設アスベスト訴訟に関する最高裁判決等を踏まえた対応について(PDFファイル)

労働政策審議会 (安全衛生分科会)(厚労省サイト)

「フリーランスの安全衛生規制」について

濱口桂一郎氏は「フリーランスの安全衛生規制」と題するブログ記事を書いている。

昨今注目を集めているフリーランス問題ですが、白熱する議論から零れ落ちがちな話題として安全衛生問題があります。もちろん、安全衛生と表裏の関係にある労災保険については近年特別加入が陸続と拡大しているのですが、労働安全衛生法の適用自体の議論は、フリーランス問題の枠組みではあまり取り上げられていないようです。

しかし一方、今年5月の建設アスベスト最高裁判決により、一人親方に対する安全衛生対策について国の権限不行使が違法と判断されたことにより、労働安全衛生法の適用範囲を一人親方に、あるいは一人親方に限らず下請事業主に拡大すべきではないかという議論が提起されてきます。

実はさっそく今週月曜日(10月11日)の労政審安全衛生分科会に「建設アスベスト訴訟に関する最高裁判決等を踏まえた対応について」という資料が提示されており、そこでは安全衛生法22条、57条に基づく省令の規定を労働者に限らず一人親方等にも拡大する改正をすべきかという議論が提起されているようです。

フリーランスの安全衛生規制(hamachanブログ(EU労働法政策雑記帳))

このブログ記事を読み、私のツイッターアカウントで資料「建設アスベスト訴訟に関する最高裁判決等を踏まえた対応について」に関することを10月18日に次のようにツイート。

先週の労働政策審議会・安全衛生分科会・資料「建設アスベスト訴訟に係る最高裁判決を踏まえた対応について」内容は フリーランス(個人事業主・雇用によらない働き方)の安全衛生法適用にもかかわる。
「建設アスベスト訴訟では労働者や一人親方(個人事業主・雇用によらない働き方)等の(つづく)
石綿へのばく露を防止する措置が最高裁判決で規制が不十分だったと判断され国側が敗訴した争点について、現行法令で十分な措置が講じられているか検討し、不十分な場合は、判決を踏まえた見直しが必要となる」

すると、北健一氏が次のようにコメント。

とても重要な論点ですね。MICセミナーでの講演で、鎌田耕一先生(厚労省・雇用類似検討会座長)も言及していました。仮に労働者性の範囲を広げないとしても、安全衛生と労災補償は広く働く人に及ぶようにしてほしいと思います。

参考:雇用類似検討会での水町勇一郎氏発言

厚生労働省「雇用類似の働き方に係る論点整理等に関する検討会」において水町勇一郎委員が、労働者性拡大にもふれるような発言をしている。

その水町委員の発言内容を私のブログ記事で紹介している。

雇用類似の働き方に係る論点整理等に関する検討会 水町委員発言(ブログ働き方改革関連法ノート)