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雇用調整助成金に関する岸田首相発言・国会質疑・厚労省部会委員意見

労働政策審議会・雇用保険部会(厚労省)

厚生労働省「労働政策審議会 職業安定分科会 雇用保険部会」が明日(2021年10月25日)に開催される。議題は「雇用保険制度について」などだが、次の資料が厚労省サイトに公開されている。

・資料1 これまでの議論の整理及び論点(基本手当及び基本手当に係る令和3年度末までの暫定措置等)
・資料2 これまでの議論の整理及び論点(雇用調整助成金・休業支援金等)
・資料3 第156回雇用保険部会で委員から頂いたご指摘に関する資料
・参考資料1 基本手当関係参考資料
・参考資料2 雇用調整助成金・休業支援金等関係参考資料

雇用調整助成金に関する岸田首相発言・国会質疑

・2021年10月14日 岸田文雄内閣総理大臣記者会見
非正規の方々などの雇用を守るため、助成率を引き上げている雇用調整助成金の特例について、来年3月まで延長いたします。

・2021年10月日 衆議院本会議質疑(抄)
石井啓一議員(公明党)
雇用の維持など、国民の生活を支えるための取組も重要です。コロナ禍において、生活の基盤である雇用を守るため、我が国では、雇用調整助成金の特例措置等にこれまで4兆円超を支出してまいりました。その結果、完全失業率は主要先進国の中で最も低い2.8%に抑えられております。特例措置は11月末までとなっておりますが、感染状況を踏まえて必要に応じ延長すべきであります。その際、雇用保険財政が枯渇することのないよう、必要な財源を一般会計から確保することが不可欠であります。(略)今後の雇用、生活支援策について、総理の答弁を求めます。

岸田文雄内閣総理大臣
今後の雇用、生活支援策についてお尋ねがありました。新型コロナから国民の暮らしを守り抜く、このことを最優先に、雇用調整助成金の特例措置による雇用維持の支援、緊急小口資金等の特例貸付けや住居確保給付金の支給などによる生活支援などの内容を盛り込んだ、3次にわたる補正予算を編成し、かつてない事業規模総額293兆円の経済対策を政府・与党が一丸となって行ってまいりました。
今後も、新型コロナ対応は喫緊かつ最優先の課題であり、雇用調整助成金を始め雇用保険のセーフティネットの機能が十分発揮できるよう、財政運営について適切に対応するとともに、生活支援についても、引き続き、先の見通しが立つように、しっかりと取り組んでいく必要があります。これらの点を含め、国民の切実な声を踏まえ、新型コロナで大きな影響を受ける方々を支援するため、速やかに総合的かつ大胆な経済対策を策定いたします。(参考資料2「雇用調整助成金・休業支援金等関係参考資料」抜粋<一部追記=「公明党」「文雄」>)

雇用調整助成金・休業支援金に関する委員意見

1 雇用調整助成金等について
・雇調金は本来経済的理由による雇用調整を対象としているが、コロナ禍における感染症対策のために社会経済活動を制限した中での国の雇用対策として極めて重要な役割を担った。雇調金が感染症対策による事業活動の縮小をカバーしたことを踏まえ、雇調金が対応すべき守備範囲や国が果たすべき役割について議論すべきではないか。

・現在の支給状況を踏まえると制度の持続可能性に懸念があり、感染症対策として一般財源で実施するものと失業予防対策として実施するものを分けて議論すべきではないか。

・制度の費用だけでなく、雇用が維持されたことの効果や、労働者の生活、企業の持続可能性、さらには社会全体への影響をどう評価するかという議論もすべきではないか。

・長引くコロナ禍において社会の安定に果たしている役割は大きく、特例措置の期限が延長されていること自体は妥当だが、財政状況が厳しい中で、収入確保策とセットで議論すべきではないか。また、事業主の共同連帯の二事業の保険料で対応できる範囲を大きく超えており、感染症対策としての性格が強いと思われることから、国費で負担すべきであり、補正予算も含めて、速やかに財源措置をすべきではないか。

・雇調金の特例措置について、被保険者以外も対象にしたことや提出書類の簡素化、支給限度日数の緩和等による複合的な効果があったし、セーフティネットとして十分機能したといえるのではないか。

・労働者のモチベーション低下や成長産業への労働移動を阻害しているという意見もあるが、現場で労働を分け合っていることから、必ずしもスキルやモチベーションが低下しているとは限らないのではないか。労働者を雇用し続けたいという企業側の思惑と、今の仕事を続けたいという労働者の意向がマッチしているからこそ雇調金が利用されているのではないか。労使の意向がマッチしていない場合においては、雇用吸収力のある成長産業への労働移動は、この制度の有無にかかわらず労働市場の需給の範囲内でこれまでも進んできたのではないか。

・足元の業況が悪化傾向にあるわけでは必ずしもない中で、雇調金の業況特例が支給決定総額に占める割合が高いことをどう見るべきか。

・経済は回復基調だがK字回復であり、飲食、宿泊、交通関係は大幅減収。足元の雇用維持のため、特例の当面維持をお願いしたい。

・今回はリーマン時の何倍もの規模で、これだけの期間続いており、産業の新陳代謝を遅らせている可能性は否めない。人手不足感は強まっており、経済回復のブレーキにならないよう、何らかの形で特例措置にメリハリをつけていく必要があり、エビデンスに基づいて、縮小を議論する段階に来ているのではないか。

・今後業種によっては失業が一時的に発生する可能性もあるが、それは雇用保険の本体で支えることが本筋であり、だからこそ本体の財政が盤石である必要があるのではないか。一企業での雇用維持に限定せず、全体としてセーフティネットが機能することが重要ではないか。

2 休業支援金等について
・雇用保険被保険者以外を対象とする給付金が7割を占めている。本来事業主が雇調金を活用して休業手当を支払うべきであり、休業支援金等の活用はあくまでやむを得ない場合に限られるべきではないか。

3 その他
・在籍型出向を通じて雇用維持していくことが求められており、中小企業に対するマッチング、ノウハウの支援をお願いしたい。(資料2「これまでの議論の整理及び論点(雇用調整助成金・休業支援金等)」抜粋)

第157回「労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会」資料(厚労省サイト)