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【論文レビュー】あなたはリーダーですか??

こんばんは、ゆあさです。

みなさん、ご自分のリーダーシップスタイルについて考えたことはありますか??

いろんなリーダーシップ理論がある中、
「私は変革型リーダーシップ!!」
「オレはオーセンティック!!!」
と知っている方も少ないかと思いますし、
自分自身がどのようなリーダーシップを発揮しているのか知る機会も少ないように思います。

そして、マネジャーに登用されたタイミングで、マネジャーとしての新たな役割にスムーズに適応できる方もいれば、そうではない方もたくさん。
不適応が続くことで、メンタルヘルスの問題を抱える方も多くいらっしゃいます。

今回は、リーダーとしてのアイデンティティ形成について,どのように形成されていくのかを調べようと思い、こちらの論文をレビューします。

Am I a leader?
Examining leader identity development over time.
(Darja Miscenko、Hannes Guenter、David V. Day)

The Leadership Quarterly(2017)

お付き合いいただけますと幸いです🙇‍♀️


30秒で要約を読む

リーダーシップ開発プログラムが、リーダーシップ・アイデンティティの発展に重要な影響を与えるという点について述べられています。

この論文は、リーダーシップ・アイデンティティの発展がどのように進行するかを7週間のリーダーシップ開発プログラムを通じて調査されました。

自己認識理論とアイデンティティ理論に基づき、リーダーシップスキルの変化がリーダーシップ・アイデンティティの変化と関連していることを仮定し、結果としてリーダーシップ・アイデンティティはJ字型の発展パターンを示すことが発見されました。


主要に出てくる用語の定義

  • リーダーシップ・アイデンティティ: 自分をリーダーとして認識する度合い。

  • リーダーシップスキル: リーダーとしての行動やスキルの総称。特にこの論文では「構造を始動する力(Initiating Structure)」と「配慮(Consideration)」に焦点を当てている。

  • 構造づくり(initiating structure):組織が確実な成果を上げられるように、仕事の枠組みとルールをつくり、メンバーの仕事を管理する行動

  • 配慮(consideration):メンバーを思いやり、励まし、人間関係を維持する行動

本論文のリサーチクエスチョン

本論文のリサーチクエスチョンは・・・
リーダーシップ・アイデンティティは、リーダーシップ開発プログラムを通じてどのように発展するのか、そしてその変化はリーダーシップスキルの発展とどのように関連しているのか?という点です。

リサーチクエスチョンの背景

リーダーシップ開発のプロセスにおいて、リーダーシップ・アイデンティティがどのように発展するかについての知見は限られており、特にその長期的な変化を調査する研究はほとんど存在しないとのことです。
先行研究では、リーダーシップ・アイデンティティがリーダーシップスキルや行動と密接に関連していると示唆されているが、具体的な変化のメカニズムについては十分に解明されていないという状況があるとのこと。

論文がよりどころにしている理論・概念

  1. 自己認識理論 (Bem, 1972): 個人は自分の行動を観察することによって自己認識を形成するという理論

  2. アイデンティティ理論 (Kegan, 1983; Stryker & Burke, 2000): 個人のアイデンティティは特定の役割に関連する意味を持ち、それが時間とともにどのように変化するかを説明する理論


研究デザイン

この研究は、7週間にわたるリーダーシップ開発プログラムに参加した98名の大学院生を対象に、彼らのリーダーシップスキルとリーダーシップ・アイデンティティの変化を追跡した縦断研究です。

研究方法

被験者は7週間のリーダーシップ開発プログラムに参加しました。
データ収集は7回にわたって行われ、各セッション後にアンケートを通じてリーダーシップスキルとリーダーシップ・アイデンティティを測定しています。

本論文から得られた示唆

この論文から得られた主要な示唆は、リーダーシップ開発プログラムがリーダーシップ・アイデンティティの発展に重要な影響を与えるという点です。
具体的には、以下の点が示唆されています。

1.リーダーシップ・アイデンティティの変化は非線形的である

リーダーシップ・アイデンティティは、リーダーシップ開発プログラムを通じてJ字型の曲線で発展することが観察されました。
初期には自己認識が弱まる時期があるものの、プログラムが進行するにつれて最終的には強化される傾向があります。
このことは、リーダーシップ開発が一時的なアイデンティティの不安定さを伴いながらも、最終的にはより強固なリーダーシップ・アイデンティティを形成することを示しています。

2.リーダーシップスキルとリーダーシップ・アイデンティティの相互作用

リーダーシップスキル、特に「構造づくり(Initiating Structure)」が強化されると、その後にリーダーシップ・アイデンティティが強化されることが明らかになりました。
これは、リーダーシップスキルがリーダーシップ・アイデンティティに直接的な影響を与えることを示しています。
一方で、「配慮(Consideration)」スキルの向上は、リーダーシップ・アイデンティティの弱化と関連しており、これはリーダーシップに対する伝統的な認識(リーダーシップは主に影響力や組織化に関するものであるという考え方)が影響している可能性があります。

3.リーダーシップ開発プログラムの設計に対する示唆

リーダーシップ開発プログラムは、参加者に新しいリーダーシップの意味を提示し、自己認識の変化を促進する重要な役割を果たします。
そのため、プログラムはリーダーシップの多様な側面を包括的にカバーし、参加者が自己認識を再構築できるようにすることが重要です。
特に、リーダーシップに関する暗黙の理論(Implicit Leadership Theories)に対処し、それがリーダーシップ・アイデンティティに与える影響を理解させることが、プログラムの効果を高める鍵となります。

4.リーダーシップ・アイデンティティの発展には時間がかかる

リーダーシップ・アイデンティティは、短期間ではなく、時間をかけて発展していくプロセスであることが強調されています。
このことは、リーダーシップ開発プログラムが持続的かつ長期的なものであるべきだという示唆を与えています。

総じて、この研究はリーダーシップ開発プログラムがどのようにリーダーシップ・アイデンティティの形成と強化に寄与するかを明らかにし、その設計に対する重要な洞察を提供しています。

この論文の強みと弱み

強み:

  • 縦断的デザインを用いて、リーダーシップ・アイデンティティの発展を詳細に追跡している点。

  • 潜在変化スコア分析を用いることで、リーダーシップスキルとリーダーシップ・アイデンティティの動的な関連性を明らかにしている点。

弱み:

  • データが自己報告に依存しているため、バイアスの可能性がある点。

  • 参加者が大学院生に限定されているため、一般化可能性に限界がある点。

本論文からの学んだこと

在学中の立教大学大学院リーダーシップ開発コースでは、人材開発・組織開発のリーダーシップ開発を学ぶと同時に、
「わたし自身のリーダーシップとは?」
と、常に問われているように思います。

そう思うと、格好の研究フィールドなのでは…⁉️と思ったり。笑

わたし自身、リーダーシップの勉強をするまでは、リーダーシップ=変革型リーダーシップやカリスマ型リーダーシップを連想していました。

そのような固定概念があると、
「配慮」スキルの向上で、リーダーシップ・アイデンティティの弱化につながるというのも、何となく体感値としては納得感があります。

ただ、サーバント・リーダーシップやLMX、インクルーシブ・リーダーシップなど、様々なリーダーシップの形を知っていれば、こういった「配慮」スキルもリーダーシップ・アイデンティティの強化に繋がりそうですよね。

そういった意味でも、暗黙のリーダーシップが要になってくるのかしら…
なんて、考えていました。

アカデミックな知見から「リーダーシップ」を捉えると、いろんなカテゴリーがあることが体系的に整理できたように思います。
リーダーシップ行動とかリーダーシップ・アイデンティティとか、一言でリーダーシップと言われるものには、色んなカテゴリーがあるのだなぁと学びになりました。

長々となりましまが、お付き合い頂きありがとうございました🙌✨

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