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【マウント】第9話「最恐の書き込み」

これは「チャット小説」として書いたものです。
そのためセリフ以外の感情等の表現を極力簡潔にしてあります。
セリフをもとに想像してお読みください(*vωv)

 私刑女子の隠れ家こと「ゲーム攻略 ホラゲ『雪の日』」スレッドに
 ある一文が書き込まれていた。


「あなたたちは殺人未遂を犯し、その証拠を撮られました。
 このスレッドのログには犯行計画をにおわせる文章が
 「ホラーゲームの攻略」を装って書き込まれています。
 これが特定の人間に対して行われた犯罪行為とリンクしていることは明白です。
 『じょしうら』規約
 『犯罪行為を促す、または犯罪行為に該当する内容を書き込んではいけない』への違反とみなし
 ここのスレッドにかかわった皆さんに制裁を行います。

 HN:管理人」


 HN:とはハンドルネーム。
 『じょしうら』メンバーは完全匿名掲示板。
 書き込んだ時HN:の後にランダムな英数字が表示される。
 固定ハンドルが表示されるのは管理人本人が書き込んだ時だけだった。


『ちょっ…これ…』
『ヤバ…管理人…』
『終わった…私たち…』
『制裁する者は制裁されるってこと…?』
『制裁から逃れる方法はないの!?』
『ある…でも、無理』
『藁にもすがらないと!教えて!』
『『被害者が許す』』
『…………マジ?』
『無理すぎ…』
『あんなことされて…許すわけない…』
『でも、やるしかない』
『私たち、お互い誰かも知らない』
『私は行く。YとMに謝る。許されなくても、正体がバレてもいい』
『黙ってても許されなくても管理人に制裁される』
『YとMを生徒会室に呼び出す。OKされたら日時を書き込む』
『来たい人は来て』


 ユキノとマサキのもとにその夜メールが届く。


ユキノ「え…?」
マサキ「なんだこれ…」


 マサキはユキノに電話する。


マサキ「メールが来た」
ユキノ「私のとこにも…ムネチカ クミコさんから…」
マサキ「同じだ…この名前…生徒会副会長だよな?」
ユキノ「うん…明日の放課後マサキ君と一緒に来てほしい。謝りたい。って…」
マサキ「こいつが犯人!?なんで急に!?」
ユキノ「動画…撮られたからでしょうか?行きますか…?」
マサキ「ユキノはどうしたい?罠かもしれないぜ?」
ユキノ「…話をしたいと言ってます。話し合いをしたいという相手を断れません。」
マサキ「じゃあ、俺も行く。俺はユキノを守るんだから。」
ユキノ「クス)ありがとう。じゃあ一緒に行きましょう。返信しますね。」
マサキ「ああ。俺もしとくよ。」


 二人はムネチカ副会長に返信する。
 すぐに「ありがとう」と返事が来た。




 翌日の放課後、二人は生徒会室の扉をたたく。
 ムネチカ副会長が中から開ける。


ムネチカ「どうぞ、入ってください。」


 中に入ると10人以上の女子生徒が立っていた。
 ユキノとマサキが歩み寄ると
 立っていた女生徒たちはいっせいに土下座した。


女生徒「ごめんなさい!私たちはユキノさんに嫌がらせをしました!」
女生徒「許されることじゃないことは分かっています!」
女生徒「心から反省しています!」
女生徒「もう2度としません!」
女生徒「本当にごめんなさい!」


 泣きながら訴える子もいた。


ムネチカ「ここにいるのは…ある匿名掲示板を通じて…
 ユキノさんに嫌がらせをしていた集団の一部です。」
マサキ「一部…?」
ムネチカ「全員なのか…私もわからないんです…
 完全匿名掲示板なので…お互い今日初めて顔を合わせました。」

マサキ(あの子…同級生の…あの子も知ってる…隣のクラスの子だ…
 あの子はユキノを階段で突き飛ばした子…
 あの子も…あの子も…結構知ってる子たち…)

ムネチカ「ここに来た人たちは…嫌がらせをしていた中でも…最低の人たちです」
マサキ(最低の人たち…?)
ユキノ「匿名掲示板とは『じょしうら』ですね?」
ムネチカ「!」
ユキノ「大丈夫です。マサキさんも『じょしうら』の存在は知っています。」
ムネチカ「なんで…」

ユキノ「皆さん顔を上げてください。そして椅子に座りましょう。
 『じょしうら』のことをマサキさんに教えたのは私です。
 そのせいで…あのキス写真が撮られました」
女生徒「!?」
ユキノ「全部お話しします。これは話し合いの場なんですよね?」
ムネチカ「はい。みなさん、座りましょう」


 ユキノは『じょしうら』でマサキの写真が多数あげられて
 トイレに行った回数や時間も書かれていることを
 盗撮とストーキングだと管理人に言って、やめさせるためにマサキに情報共有する許可をとったこと。
 そしてやめさせるためにモテない男になれ!と
 丸刈りにしろとか不潔にしろとかアホな提案をしてマサキを怒らせ
 しまいに「特定のカノジョが居ないのが悪い!今すぐカノジョを作れ!」と言って
 怒ったマサキに「じゃあお前がなれ!」と連れ出され
 わざと写真を撮られやすいところでキスされたことを話した。


マサキ「俺も悪かった。勝手なことばっか言いやがってってマジで頭に来てて…」
ユキノ「マサキさんはあの時
 『お前の理屈は殺人事件が起きたから、凶器の包丁を売ってる店が悪い。って言ってるのと同じだ』って言いました。
 そのとおりです…
 私はマサキさんをモテなくさせるんじゃなく…
 盗撮やストーカーをしてる人を探し出して注意しなきゃいけなかったのに…
 楽な方に走ったんです…」
ムネチカ「…………」

ユキノ「キス写真が掲載されて…みんな怒ってるのを見て…私は何をしてるんだろうって…………
 イジメが始まるだろうことも覚悟してました。
 イジメを肯定する気はありません。でも私は皆さんを傷つけました。
 償いの気持ちもあって…耐えていました。
 でも、耐えてる私を見て、マサキさんは「君を守る」と…」
マサキ「だって俺が腹立ててキスしたせいでこんなことになったんだ。
 ユキノも…俺に無理やりキスされて泣いてた…………
 責任を取らなきゃいけないだろ…」
ユキノ「これがカレシ(仮)とカノジョ(仮)として二人で行動するようになった顛末です…」

ムネチカ「そうだったんですか…私たちは仲良くしてる二人に嫉妬しまくって…
 ユキノさんにひどいことを…」
ユキノ「みんな…バカだったんです…」

マサキ「一つ聞きたい。なんで急に正体を現したんだ?
 俺が撮影したからか?」
ムネチカ「…………私たちは…………嫌がらせをしていた中でも…最低の人たちだと言いましたよね…………」
マサキ「ああ。」

ムネチカ「『じょしうら』の管理人から制裁宣言されたんです」
ユキノ「!」
ムネチカ「罪状は…ユキノさんに対する殺人未遂計画…
 階段から突き落とすのは…そのつもりがなくても死ぬことがある行為です。
 それも含め、今までのイジメ計画のログも掲示板に残っています。
 『じょしうら』規約
 『犯罪行為を促す、または犯罪行為に該当する内容を書き込んではいけない』への違反です…」
マサキ「…………」
ムネチカ「管理人の制裁を解くには、被害者が許すことだけです…
 だから…………ここにいる人たちは…………自分がさんざんひどいことをした挙句
 いざ自分に報いが来たからとうろたえて…………自己保身に走った人たちです…………」

マサキ(たしかに最低だけど…管理人の制裁は個人情報を盾に情報操作するんだよな?
 副会長なんて3年生だ…進学や就職に影響することをされるんだろう…
 うろたえて当然だ…頭も冷静になる冷や水だ…
 でもユキノにしたことは許せねえ…どうするんだ?ユキノ…)

ユキノ「…………私は…皆さんを許せません。
 本当に…怖かったですから…………」
女子たち「…………」
ユキノ「でも…………私にも非はありました。
 なので、条件を出します。」
ムネチカ「…………できることなら何でもします…………」
ユキノ「皆さんは、マサキさんのことが好きなんですよね?」
女生徒たち「…………はい」
ユキノ「なら、ちゃんと今ここで、彼に告白してください!」
女生徒たち「!」
マサキ「!?」


 女生徒たちは今まであれだけ残忍だったのに、顔を真っ赤にした。
 マサキに対する気持ちは本物だった。
 ムネチカは立ち上がってマサキに向かう。


ムネチカ「マサキさん!私はあなたのことが好きです!付き合ってください!」


 その告白を皮切りに、女子たちはみんな自分の想いをマサキにぶつけた。


女生徒「一目惚れでした!笑った顔がまぶしくて!あなたのことしか考えられないくらい好きです!」
女生徒「体育でサッカーをしてる姿がかっこよくて、それからずっと目で追うようになりました!」
女生徒「マサキさんのことが好きです!ホントにホントに大好きです!」


 マサキは立ち上がると頭を下げた。


マサキ「ごめんなさい。俺はイジメをするような人は大嫌いです。
 皆さんの誰ともお付き合いはできません。
 でも…………好きになってくれて、ありがとう。」


 マサキのまっすぐな言葉に、女子たちは泣き出した。
 フラれた悲しさと、マサキの優しさ、自分のしたことの後悔でぐちゃぐちゃになっていた。


ユキノ「その涙をもって、私は、あなたたちを許します。」
ムネチカ「!」


 ムネチカも涙を流していた。


ユキノ「皆さんのその泣き顔を写真に撮らせてください。
 それと一緒に管理人に許す旨を書いたDMを送ります。」
女子たち「…………はい…………」
ユキノ「マサキさん、彼女たちの写真を撮ってください」


 ユキノは自分のスマホをマサキに渡す。


マサキ「自分で撮らないのか?」
ユキノ「…………」
マサキ「…うまく撮れないのか…」
ユキノ「…………」


 ユキノは恥ずかしそうに頬を染めた。


マサキ「クス)しょうがねえな」


 マサキはみんなの写真を撮り、ユキノに渡した。


マサキ「ケータイで写真撮るくらいできるようになれよ…
 機械音痴にもほどがあるぜ」
ユキノ「う、うるさいです!これからがんばります!」
マサキ「ははは」


 女子たちは二人のその様子を見て「完敗だ」と痛感した。


<第10話に続く>





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