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#42「遅めの長い夏休み」

「〇〇アナは今週、遅めの夏休みをいただいています。」


夏なんてとっくに終わっているのに、なんで“夏休み”って言ってるんだろうな。

幼い頃、毎回そんなことを思っていた。

夏に休んでいるわけでもないのに、“夏休み”なんて言うなよ。

テレビ画面に向かって1人でツッコんでいた。



年を重ねるごとにいろいろなことがわかってきて、
「働き方の異常さが世間から認知されているからこそ、ちゃんと休みを取ってることをアピールしないといけないんだな」
という風に考えられるようになってからは、

夏に休んでいるわけでもないのに、“夏休み”なんて言うなよ。

尚更そう思うようになった。




遅めの長い夏休み


自分もその業界に足を踏み入れることになり、そして休みがなくてダウンした。

昨年の秋に休職してからというもの、現場の第一線からは離れてゆったりと仕事をさせてもらっている。

それを俯瞰で捉えたときに、
まさに自分も”遅めの夏休みをいただいている”と思った。



就活をしていた頃、セミナーなどで他の学生が、
「学生時代にやっておいた方がいいことはありますか?」
なんていう質問をよくしていた。

大体の社会人の先輩たちは、「学生時代にもっと遊べばよかった」と答える。

そのやりとりを毎回しょうもないと思いながら見ていた。


そんな私も社会人になり、ことあるごとに「学生の時にもっと遊んでおけばよかったな」と思う。

それは働くようになって自由な時間が減ったため、自由な時間があるうちにもっといろいろな経験をしておけばよかったという思いから湧き上がる感情だと思っていたが、よくよく考えてみると、会社の同期がちゃんと学生時代に遊んできたエピソードを持っているため、それがない自分の劣等感や後悔から湧き上がっているものだということに気づいた。




忙しくしていた“つもりの“学生時代


そういう自分は学生時代に何をやっていたのか。

会社に入って上司とも話したことがあるが、自分は学生時代に新型コロナウイルスの流行が直撃した世代であり、学生時代の大半を自由に行動できなかった。

と、大人たちには思われているらしい。

当の本人たち、少なくとも自分はそんな風には思っていない。

確かに、コロナ禍でさまざまなことに制限があったのは事実だが、その中でも楽しいことはあったし、ご時世を言い訳にせず何かしら工夫して取り組んだこともある。

国内外問わず旅行にはなかなか行けなかったが、自分の場合はご時世に関係なく旅行には行かなかったと思う。一緒に行くような友人もお金もなかった。



今回こんなことを書こうと思ったのは、大学生の4年間というものがよく「人生のうちの休暇」みたいに言われるが、それにずっと反論したかったから。

大学生活の中でとにかく自分は遊ばなかった。

その代わりに真面目に勉学に打ち込んでいたかと言われると、そうではなかった。

バイトを4つ以上かけ持ちして、大学の授業以外の時間はひたすら働いていた記憶しかない。

授業料や生活費を稼ぐためではなく、ただ無心で働いているのが楽しくて、そして給料明細を見るときの幸福感がたまらなくて、自分のカレンダーをバイトのシフトでひたすら埋めていた。

帰宅時間が遅かったり、起床が早かったりで、体力的に辛い時もあったが、決して大学の授業や課題もおろそかにすることなく、自分なりに頑張った。

他にも好きな深夜ラジオを聴いて番組にメールやハガキを送ったり、自分自身でもネットラジオを配信したり、YouTubeに動画をアップしたりもした。

どれも自分が好きなことであり、将来的にやりたいと思っていた今の仕事にもつながると思い、機材を使いこなすところから全て独学でノウハウを吸収していった。

社会人になって、現場にいた頃は何ひとつ活かされなかったこれらのノウハウも、現場を離れて今の仕事をさせてもらうようになって役に立っている。
普通に現場にいて馬車馬のように働いていてはできなかった貴重な経験もさせてもらった。


一緒にどこかに出かけたり、夜に飲み歩くような仲間もいなかった学生時代。
“いなかった”というよりかは、“作らなかった”、“できなかった”という方が正しいのかもしれない。

ずっとそのことに劣等感を感じていて、社会人になってその劣等感がより強くなったが、休職して先が見えない絶望の中でも、学生時代にひとりで積み上げてきたものが活かされて、少し報われた気がする。

「忙しくしていた“つもり”だった」だけだと悩んでいた時期もあったが、それはそれで間違っていなかったのだと思えるようになった。





この夏休みの成果はいつ出るのか?



学生時代、夏休み明けのテストが不安で仕方なかったが、同時に少し楽しみな部分もあった。
夏休みに頑張った分の成果が出ると思っていたからだ。

自分にとっては“夏休みではない”と思っていた大学時代の成果が、社会人になって思わぬ形で表れた。



実はこのテーマで書こうと思ったのは2週間ほど前。
次の異動先が決まり、少し道が開けたタイミングだったのだが、直後に異動が一旦見送りになった。

焦ってはいけないとわかっているが、先のことが全く見えなくて不安で仕方ない。


今のこの「遅めの長い夏休み」の成果はいつ出るのか?


夏に休んでいるわけでもないのに、“夏休み”なんて言うなよ。



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2023.03.05 作成

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