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不確かな存在

 昨年の秋、イベントの舞台裏のお手伝いをした。
谷川俊太郎さん。
その日のステージの終わりに、思い切って
「私も文月さんの講座で詩を書いてるんです!」
と話すと、本当に満面の笑みで
「そう、それはいいね」
私はこころ温かく、見送る車に手をふる。

その月の文月さんの講座でこの詩を朗読した。
わたしにとって詩人は心を揺らし、照らすひかりだ。


「不確かな存在」

自分はどこにいるのだろう
見えない存在価値にすこし怯える日

私はどこにいるのだろう
自分はここにいるのにとさけび泣きたい日

手のひらで掴もうとしても
実感にはならないあせり

誰かの心に刻まれる事で
確かなものに変わるだろう

誰かの心に刻まれて
確かなものに変わりたい

人は生まれてやがてだれもが死んでしまう
その中に意味が欲しいから 生きている意味

「自分が思うよりつよく、一人でも
だれかの心を揺らしている事もあるのだよ」

おだやかな優しさを携えた詩人は
にこやかに手のひらをさしだした


lyrics by 定行恭子

(2019.9.27)

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