定行恭子 *朗読家
昨年の秋、イベントの舞台裏のお手伝いをした。 谷川俊太郎さん。 その日のステージの終わりに、思い切って 「私も文月さんの講座で詩を書いてるんです!」 と話すと、本当に満面の笑みで 「そう、それはいいね」 私はこころ温かく、見送る車に手をふる。 その月の文月さんの講座でこの詩を朗読した。 わたしにとって詩人は心を揺らし、照らすひかりだ。 「不確かな存在」 自分はどこにいるのだろう 見えない存在価値にすこし怯える日 私はどこにいるのだろう 自分はここにいるのにとさけび泣
プラネタリウムを運んでいる 今日も 静かな祈りの狭間を いちばん星を輝かせるため いつからだったろう 空を見上げるようになったのは 悲しみで閉ざされた夜 闇につながる途方もない道 眠れずに ただ 夜を聴いている 朝焼けの眩しさに 気だるさを抱えたまま寄りかかる いったい どこへ向かえばいいのだろう 私のうえにも かつて 星は降りそそいでいた やさしさを携えて 導き出す答えのようなひかり 何も疑うことなく その光は ただ 輝いていた いつからだったろう 空が見えなく
僕がはじめてもらった1ダースのクレヨン そのクレヨンは色をぬると言葉を話すんだ みかんをオレンジ色にぬると笑い声がきこえる 水色の空をぬると風がちいさくささやく 草原のミドリからは羊の声が聞こえる なんだか面白くなってきて 僕はお母さんの顔を描いた 肌色をぬると僕を呼ぶ優しい声がひびく 赤い口紅をぬるとガミガミ叱られた 黒い森のよるは一羽の鳥のなき声が聞こえて なんだか とつぜん 一人になった 黄色の月だけがぼんやり光って 「おやすみなさい」と僕を包みこむ 雲のカケラを持た
コンテストで落ちた〜と思って悔しいときは、客観的に見てる自分がいる時。だいたい一生懸命すぎる人は柔らかさが足りなくなり、聞いている人にも伝わるもの。楽しめる人に敵うやわらかさはない。本番でどれだけ集中できるか...本選の結果はその集中力と審査員の好み、作品に大きく左右される。
【前橋ポエトリー・フェスティバル2019参加作品】 蒼い空の扉 ここに来る前に 少し泣いて来たんだ 大切な人が みな 私のそばから離れていって どうしようもない悲しみの渦のなか 曲がり角を曲がった道の先に 見えた小さなひかりに駆け出す ここは 小さな生命が溢れている たった一輪から 始まった物語かもしれない 揺れるメロディーが耳の奥で しっかりと時を刻んで いま この場所にたどり着いた 永遠があればいいのに… いつか見た蒼い空の扉を開ける日 思い出せ
はじめまして。 私は5歳の頃ピアノをはじめて、音と戯れて大きくなった。いつからか、心の中でもメロディは鳴り続け言葉にならないもどかしさや、どうしようもない苦しさを感じるようになった。 その頃の私は、気持ちを言葉にする術を持たなかったため、貪るように読んだ本と音楽と映画で心の乾きを潤すようになった。 しかし、それは結局、自分の感情に似た物への摺り替えに過ぎず満たされるというよりは、枯渇してさらに外へ外へと感情を埋める作業に没頭した。そして、同時に忘れてゆく...というあき