健やかなる時は今
(健康って、病気のツラさがあるからこそ、深く味わえる道理なの。皮肉なものよね)
『たーしかに確かに。ソレあるな~だけど、忘れちまうんだよ。元気になるとさ』
(それでまぁまぁ健康だと、ここはちょっと痩せたいとか、もっとお肌スベスベで、なーんて欲望に意識を絡めとられてしまうわ)
『やれやれ~病気にならないと健康のありがたみがわからない……細胞の働きに感謝するどころか、文句ばっか言ってるもんな』
☆☆☆
こんにちは!
フジミドリです♡
今日の私物語は健康について二巡目。
毎晩、守護の神霊に導かれて、私は眠りの中で幽界を漂います。
案内役との対話で、魂に纏わりつく想念を祓い、自由自在な境地へ進むためです。
精神世界が苦手なら、幻想小説としてお楽しみ頂ければ嬉しく思います。
では早速──
☆☆☆
今の私は、幽界で高校の水泳部にいた十七歳へ戻っている。若く健康そのものだ。
とはいえ、外見が気に入らない。
(あら、好きなように変えればいいわ)
『え。そんなことできるのか。マジ』
(マジで~す。ここはなんでもありだもの)
『うわ。ホントだ。変わっちまったぜ』
手足がスラリと伸び、日焼けした筋肉質の長身は、一流の水泳選手と言ってよさそうだ。顔つきも違う。
すると、私は水の中にいた。
☆☆☆
『うわ。なんだこの速さ。信じられん』
(競争相手が欲しいんじゃないの?)
案内役の少女が囁く。その声は泳ぎ続ける頭の中へ直に響いてくるようだった。
『たーしかに確かに』
(これならどうかしら)
『うおぉ~なんてこった』
(ふふ、金メダルだわ)
泳ぐ自分の姿が見えている。競技場の天井から俯瞰するようだ。50mプールはコースロープで仕切られ、8人の選手が覇を競う。
私はトップでゴール。世界記録。どよめく観客。鳴り響く拍手。込み上げる勝利の歓喜。
『最高の気分だぜ!』
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声に出した途端、風景が変わっている。
立食パーティーの会場で、私は大勢のファンに囲まれ賞賛を浴びる。ずらりと並ぶ世界中の料理に舌鼓を打つ。
酒も飲んだ。ほろ酔い気分が体の隅々にまで沁み込んでも、眠くはならない。気分を悪くすることもなかった。
際限なく飲み、そして食べる──
☆☆☆
(どう。満足したかな。金メダリスト)
『あ~満ち足りてる。このままでいいぜ』
(いつでもここへ来ればできるわよ)
『現実世界に戻るのが嫌になっちまう』
(あら、そうかしら。本当に?)
『うーん。でもないか。飽きるかも』
(何でもできる。何もしないと同じよ)
『なんかそれ、わかるよ。虚しいわ』
☆☆☆
どんなに速く泳いでも疲れない。
かつて私は、そんな体が欲しいと思ったものだ。けれども、いざそうなってみれば──
どれほど食べても満腹にならず。
延々と食べ続けられてしまう。
いくら飲んでも酔い潰れず際限なく飲める。こんな自分が望みではなかったのか。
一生、老いることがなく若々しいまま健康でいたい。叶わぬ望みだったはずなのに。
☆☆☆
『こうして叶ってみれば、なんてことないんだな。だから何って感じだぜ』
(それが実感できないから病気になって、健康ってどんなものか理解を深めるの)
『うーん。それなら、解っちまえばもう、病気になる必要なんてないんだな』
(ええそうよ。どんな状態だって自由に創れるんだもの。それが理解というものだわ)
『あはは~そんなの、医者に訊いたってわかるわけないぜ。医者だって病気になるぞ』
(当たり前よ。そもそもお医者さんが病気の状態を造ったわけじゃないでしょ)
☆☆☆
ここが本来の居場所──
起きている間、肉体次元に宿る自分は、映し出された幻想である。消えてしまうのだ。
そして幽界の私は自由に振舞える。
いつでも幽界へ戻って、食べまくり飲み尽くし、健やかさを謳歌すればいい。
☆☆☆
(決まってるからそのままでいいの)
『映画を観てるようなもんだな』
(幽界のあなたも同時に存在してるわ)
『ああ。起きてる時も感じられてきたよ』
(幽界の自分が気づけば、こびりついた思い込みは祓われてしまうのよ)
『水浴びした犬が、ブルブルって体を震わせるみたいに祓っちまえばいいんだな』
(でもね。起きてる間は、悟り澄まさなくていいの。悩んで足掻いて苦しんで。現実世界の悟りなんて、それこそ映像なんだわ)
『やれやれ~この世が地獄だったのか。納得だぜ。世界平和とか人類共栄なんて言うヤツは胡散臭いもんな。ブルブルって祓うよ』
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お読み頂き、ありがとうございます!
次回の私物語は10月22日午後3時です。
木曜朝8時、西遊記でイラストの朔川揺さんと創作談話お届け致します。
是非、いらして下さい♡
ではまた💚
ありがとうございます🎊