【救いたかったし救われたい命 そんな話 そして、女は怖いな、って話 】

タイトルのまんまです。
俺は弱い。

だから誰かに助けて欲しいと。
そう思っています。

女は怖いです。
そういう話も後半あります。

優しい女性の方が圧倒的に多いのは
当然わかってます(苦笑)

とても長い話です。
最後まで読んでくれた方はきっと、とても優しい人なんだと思います。

優しい友人に助けられているこの数日ではありますが、その方達にも、誰にも。
友人の自死の件については話せていませんでした。

今朝、仕事をしようと家を出て、弟と合流しようとした時に、ついに限界が来ました

泣いて、吐いて、動けなくなりました。
近所の保育園を見てしまったからです
送迎の母親を、見てしまったのが、トリガーになってしまいました

いつもより、ゆっくりした時間の出発
普段なら、見ることのなかったその風景
見たところでなにも思うことの無かった日常の風景で
感情がコントロール出来なくなりました

こんなことは、初めてでした。

共に働く親父と弟に、実家の家族に、こういうことで情けないが、今日は動けないと
仕事を休みました
これも、はじめてのことです

昨日は仕事をしていました
なんども、膝をつきたくなりましたが
家で一人でいるよりは、ずっと楽な気がしたので
無理してでも働こう、そう思っていたのに
今日は、身体より心が付いてきてくれませんでした

ずっと。
この1週間、10日ほど抱え込んでいた問題でした。

いや、もっと前から。
本当は、もう何年も何年も続く話なのかもしれないな、これを書いててそう思いました。

眠れないのも
1年で何度か、時折ものすごく落ち込んだような気持ちになるのも
根っこはすべて、今日ここに書くことにあるんじゃないか、そんな気がしました

昨夜も、心の限界が来てしまい。
絶対に負けたくない、その一心であの様な書き込みをしてしまいましたが、それでもやはり吐き出し切れるものでは無いのか、と。
そう思いました。

書き込んだ時には、かなり気持ちが楽になったような気がしていたのに、その次の日にこれです。
だめだなと、思いました。

なので、もっと
ちゃんと、全部吐き出してみよう
それがひとつ

もうひとつは、この、文章を書く、作るという作業が、すこし気持ちを落ち着かせてくれることに気づいたからです。

心優しい友人に、この数日、情けなくなるような暗く重い文章を何度も送ってしまいました。
あんなもの、読み続けてたら、相手までおかしくなると。我に返って謝りました。

気にしなくて大丈夫と、言ってくれました。
いつでも、いくらでも、吐き出してぶつけてくれていいんだよ、と。

今日生きてる理由のひとつは。
確実にその人のおかげだと思っています。
本当にありがとう。

けれど、この友人の自死や、それにまつわることについては、さすがにその方にも言えないし、誰かにピンポイントでぶつけるわけに行かないと思いました。

なので、ここで。
全てを話して整理したいと思います。
自分の、気持ちと、弱さを。

Xでも少し触れましたが、友人が亡くなったことに責任を感じ、自身を責める日々の中、俺個人にも、厳しい事がありました。

失恋です
ただの失恋かよ
そう言われたらその通りです

けれど、俺にとっては大きかった

それでもそれは本来、友人の死に比べれば。
とてもとても、ささいなことだと、頭では理解しているのです。

友人の件と繋がること、繋げてしまうことがあり。
それが自分の弱さや、弱さから来る妄想であったり、その妄想が自分の心に対しての自傷行為になっているのだという自覚もあるのですが、今この文章を書いているあいだも、その連鎖が止められずにいます。

ふたつのことは。
別々のことなのに。
俺の中でひとつのことになってしまっているのです。

きちんと吐き出して、整理しなければ
俺自身がもう、もたないと、そう思いました

仲間に、助けようとしてくれている友達に。
今の俺と同じような想いをさせてしまうのが
俺は怖いし、許せない。したくない。
けれども、抗う力が湧いてこないのです。

なので、この文章を書きながら。
自分の気持ちを整理しつつも。
なにがあったのか、どうしたかったのか。
どうすればいいのか。よかったのか。
考えたりしていきたいと思います。

とてもとても、長い話になると思います。
そんなこの文章を読んでくれたあなたに。
繰り返しになりますが、心から感謝します。

本当にありがとう。

亡くなった友人と出会ったのは、10年ほど前になると思います。
俺はずっと建築関係の職人をやっているのですが、現場で骨折してしまいました。

当然現場に出ることが出来なかったので、半分は生活のため、もう半分は、こういう時にしか体験できないだろうと、どうせなら今しかできない、やらないことをしようと、興味本位で、オフィス、デスクワークのアルバイトを探し、テレアポの営業の短期アルバイトをしていました。
人材派遣の斡旋してくれた業務だった気もしますが、その辺は記憶が曖昧です。

その時に出会ったのが奈緒美さんでした。
明るく、笑顔の絶えない、ユニークな方でした。
年齢は、俺よりも10個ほど下でした。

奈緒美さんは、この手のお仕事に慣れていたようで
そのフロアのサポートマネージャーのような役職を任されていました。

俺は尊敬しました。

おそらくあのフロアの中でも、年齢的には1番下の方であろう女の子が、その役割をこなし、周りの人間からも、性別年齢問わず好かれ、なによりも日々笑顔を絶やさないその姿に、俺は本当に感銘を受けたのを覚えています。

「オマエはさぁ、あのフロアのヒマワリみたいなかんじだよなあ」
「失礼な!アタイは薔薇よ!」

そんなやり取りしたのを覚えています。

実際は、奈緒美さんは太陽で、みんながそれに向かうヒマワリのようだ、と、おれは思っていました
本当に、みんな彼女が好きだったと思います

俺の勤務態度、成績は、おそらく本当に平凡なものだったと思うのですが、可もなく不可もなく、ほっとけばそれなりにやってくれる、そんな感じのものだったと思うのですが。

そんな俺に、数いるマネージャー陣の中で唯一、少なくとも、1日に1度は「渋谷さん、問題ないですか?」「今日もがんばりましょー!」などと、必ず笑顔で声をかけてくれていたことを今でも覚えています。

おはよーっす!
今日も一日頑張ってこー!
\\\ ٩( 'ω' )و ////

見覚えのある方もいると思いますが、この俺のXでの朝のお決まりの挨拶は、その影響があるのです。

毎日声をかけてくれることに、俺はすぐに気づきましたし、仲良くなった後に本人からも聞きましたが、それは彼女の職場での最低限のルールだったようです。本当に素晴らしい心配り、心構えだと思いました。

今の時代では考えられないことですが、当時働いていた職場は、数フロアおきに休憩フロアがあり、そこに食堂件ロビー、そして喫煙所が混在してありました。

俺の所属していたフロアには、世代的にだいぶ上か、少し下か、要するに同世代があまりいなかったことに加え、個人間では人見知りすることはほとんど無いのですが、出来上がっているグループに入っていくのは今も苦手で、そんな諸々のこともあり、1人で飯を食って、喫煙所でぼーっと過ごしていることが、多かったです。

「ヒャッヒャッヒャ!」

たまに、癖のある笑い声が聞こえてきて、誰かと思えばそれが奈緒美さんだった、それを見てみんながまた笑う。そんな光景も眺めていた記憶があります。

もちろん、たまに話したりする人は何人もいましたが、少なくとも今に至るまで、友人として残っているのは、奈緒美さんだけです。

正直なにがきっかけで仲良くなったのか。
お互いあまり覚えていませんでした。
そんなものなのかもしれないし、ひょっとしたら奈緒美さんは覚えていたのかもしれないですが、俺は本当に覚えていないのです。

少ない記憶の中、覚えているのは
ある日仕事を終えた夜、徒歩で駅まで向かう途中の信号待ちで
「しーぶーやーさーんーんんんん」
と、後ろから肩を叩かれて、振り返ると奈緒美さんが、笑顔で立っていた「おっつかれっす!」
そのあたりが、俺の中の始まりのようになっています。

それが、いつ彼女が俺の事を「ゆうさん」と呼ぶようになり、俺が彼女のことを「なぁちゃん」「オマエ」呼ばわりするようになったのか、それも全然覚えていません。

あの笑顔が、もう、無くなったことが。
見られなくなったことが、今も信じられません。

ひとつ、これは大切なことなのかもしれませんが。
おれと奈緒美さんの間に、恋愛というものはありませんでした。
それは多分、きっかけとか、タイミングとか。
色々あったのかもしれません。

今日に至るまで、俺の中の奈緒美さんは素敵な可愛い妹、のような感覚が1番強いのです。
それが、そのことが。全ての失敗、俺の罪と言われれば。そうなのかもしれない。
けれど彼女も、俺のことは「チョー兄!って感じよね!ゆうさんはさ!」と、言っていましたので、お互いにそんな感覚だったのではないでしょうか。
 
これも、俺がそう思いたいだけなのかもしれません。

個人的にやり取りをするようになったきっかけは、覚えています。

俺は確か3~4ヶ月の期間限定の契約だったので、延長も進められましたが、現場仕事の方が楽しいし、面白いなと、率直にそう思い、現場に戻ることを決めていました。
誰かを引き留めたり、延長とか、契約社員に、など、そんな場面は俺は見たことがなかったので、ある程度はやれたんだなと、その満足感だけで充分だなと。未練は、無いようにも思っていました。

そして、最後の日。
お疲れ様でした、お世話になりましたと周りの方に伝え、いつでも戻ってきてねと言われました。
あれは社交辞令なのかもしれませんが、嬉しく思ったのを覚えています。

ロッカーで私物の整理をして、帰ろうとエレベーターを降り、ビルから出ようとしたそのとき。
ビルの出入口の前で、大勢の人が歩く中、そのど真ん中で、俺を見つけた途端に腰に手を当て「あらわれたな!しぶやゆうさく!」と、仁王立ちしている奈緒美さんがそこにいました。

なんだこいつは、と、思いました。
笑ってしまいました。
でもそのときはじめて、この子とは、なんだか切れたくないな、そう思ったのも覚えています。
あれが恋だったのかは、わかりません。

「わたしに挨拶もなく帰るとはいい度胸ですね」そんなことを言われた気がします

そして駅まで一緒に歩きました。 

お世話になりました。奈緒美さんには、助けられたと思っています、そういう人は、多いと思いますよ。ありがとうございました。

そんな挨拶をしたと思います。

「ストップストップ!」
そう言われました。
そして、ニヤニヤしながら言われたのが、奈緒美さんと「友人」になったスタートだったと思います。

「連絡先交換しましょうよ!まさか断ったりしないですよねぇ?」

間違いないです。それが、スタートです。

不思議でした。
おれは先述の通り、特に誰かと仲良くするわけでもなく、拒絶する訳でも無く、決められた期間、のんびり、真面目に、体験、経験を重ねて、去る。
その感覚でしたし、そうなったと思いました。

だから当然奈緒美さんとも、私的な会話みたいなことはほとんどした事がなかったです。

けれど、あの子は覚えていたのです。
おれが、忘れていただけで。
でも、言われてすぐ思い出しました。

「話したじゃないですか、深夜のロッカー室で、ふたりきりで」
「あのさぁ、響きがなんかやましい関係性に聞こえるよそれ」
「アッヒャッヒャ!たしかに!」

職場のロッカー室というのは、更衣室ではなく、本当にロッカー室、要するに業務フロアに持ち込んでは行けないもの、携帯であるとか、私物関係を置く場所、だったので、男女の区別がないエリアでした。

いつも結構人がいる、それはあたりまえで、退勤出勤のタイミングはみんな同じなので大抵ごちゃごちゃ人で溢れているのでした。

とある日、おれは腹痛におそわれ、業務終了後、しばらくトイレにこもりました。
その後にロッカー室に行ったので、退勤の人の流れはすでに落ち着いた後でした。
だれもいないと思っていたのです。

ロッカーを開けた時

「わ!!!」

と、大声で驚かされました
振り向くと、奈緒美さんでした

「ヒャッヒャッヒャ!」と、満足そうに大きな口をあけて笑っていました。

フロアの閉め作業の当番だったらしく、最後の一人だと思っていたらしかったです。
そこに誰か入ってきた。
誰かと思ったら俺で、完全に油断してると思ったので我慢できなかった、と。
ひとしきり笑った後に。

「この時間少し好きなんですよわたし」

そう言いながら、ロッカー室の窓から見える札幌の夜景を眺め、静かに言いました。

その、窓に映る奈緒美さんの顔に、表情に。
俺が違和感を覚えたのを、おれはその話を聞いて思い出しました。

「大丈夫ですか?なんか、疲れてない?」

声をかけた時、奈緒美さんがハッとして振り返りました。
1秒か、2秒か。もっと短かったかもしれない。
その表情も、覚えています。

「疲れ知らずの私に!何を言うんですか!しぶやさんこそお大事にですよ!」

いつもの笑顔でそう話して、駅までその日も一緒に歩いたと思います。
何を話したのかは覚えてなくて、なんかこの子も色々大変なんだろうなぁ、そんなことを思った記憶があります。

そして帰り際、これは、完全に忘れていたのですが
俺が言ったそうです

「奈緒美さんさぁ」
「なんでしょう!」
「奈緒美さんも、人を頼っていいんだからね」

言ったことも忘れていたので、奈緒美さんがなんて答えたのか、それは覚えていませんが。

奈緒美さんは後日、友人して話す長い年月の中で数回、この時のことを振り返りました

「それがはじまりだよ、ゆうさん!誰にもバレてなかったのが、バレた!でもさ、本当、バレた相手がゆうさんで、良かったと思ってるけどね」

連絡先を交換しました。けど、正直俺は、実際に連絡取り合ったりすることはそんなに無いだろうと思っていました。
なんせ当時の俺はメール嫌い、電話苦手、そういう人間だったからです。
よくテレアポなんて経験しようと思ったな。我ながらそう思う程度には、嫌っていました。というより、めんどくさいと思っていたのです。

それが、奈緒美さんとは、なぜか続きました。
というより、奈緒美さんが根気強かったし、なにより、吐き出す場所をずっと求めていたんだなということに、俺も気づいたから。
流石にそれを無視したり、後回しにする俺ではなかったです。

色んなことを聞きました。

子供がいること。
10代で産んだので、来年小学生になるんだということ。
シングルマザーであること。

旦那はギャンブル尽くしで借金まで抱え、生活費すらままならくなり、別居、離婚したこと。
それが1年と少し前になること。
地元は他県であること。
けれど両親は他界していて、実家というものは無いということ。

それでも、息子が小学校に上がるタイミングで、地元に帰ろうと思っている、ということ。
理由は、妹がいて、心配しているから。
一緒に暮らして頑張ろうと言ってくれているから。この暮らしに無理が来ると思ったら、その言葉に甘えて、帰ろうと思っているということ。

母親の、母親と父親の勝手で。
息子に友達と別れるようなことはさせられないと思っているということ。
だからもう少し、頑張ろうと思ってるんだ、ということ。

色んな話をしてくれる奈緒美さんは
ヒマワリでも、太陽でもありませんでした。
今にも折れそうな1本の枯れ木。
とてもあやうく、とても儚い。
俺はそう思いました。

なので、できる限り声をかけました。
息子とも話しました。元気のいい男の子でした。
たまに会って、遊んだり、ゲームしたり。
いつからか、親子で俺を「ゆうさん」と呼ぶようになっていました。

ゆうさんは、ずっと友達だから。
必ず遊びに行くからさ。泣くなよ、男だろ?
たくさん食って、強くなって。
母ちゃんを助けてやってくれな。

地元に帰ると決めたと連絡をもらった夜。
一緒にびっくりドンキーに行きました。
ゆうさんと、公園で遊べなくなるの、やだ。
泣く息子に、俺は言いました。
奈緒美さんも、泣いていた。

食事を終え、夜の狸小路を歩きました。
3人手を繋いで。

このまま、引き止めるべきじゃないのか。
俺の家に来るか?そう言えばいいんじゃないのか?
どこかで、そんなことを思っていたのは事実です
でも、それは愛情より、同情になると。

それは頑張る奈緒美さんに失礼なことなんだと。
弱みにつけ込む真似はしちゃいけないと。
俺はそう思いました。
たくさん考えて、悩んで決めたのを、俺は多分、この世でいちばんよく知っていたから。

後悔しています。
同情でもなんでも、助けられたならそれで良かったんじゃないかと。
せめて、奈緒美さんに、その未来を、選択肢を提示するくらいのことはすべきだったんじゃないか、と。

俺にはトラウマがあります。
女性と、恋愛に関するトラウマです。
そのトラウマが出来た直後の時期でした。

そして、それはあの頃はまだ、そのトラウマを奈緒美さんに話したことがなかった。
誰にも話せなかったのもありますが。

言えば、この子は俺に何も話さなくなる、話しずらくなる、そう思ったからです。
優しい子だったから。

たぶん、あの子は俺に似てた。

強がって。隠して。
周りを笑わせて。大丈夫、自分は大丈夫と。
言い聞かせて。自分を保って、壊れていく。
だから、気づいたんだと思います。
あの子の、弱さに。

なんにせよ

俺は自分の弱さに負けて踏み出せなかったのです
俺の弱さが奈緒美さんを、さらに苦しい世界に送ってしまった

札幌に、ノルベサという建物があり、そこに観覧車があります。あれに乗りたい!と、奈緒美さんの息子が言いました。

一緒に乗って、昇降口で写真を撮りました。

カードにしてもらいました。
とても高かったので奈緒美さんは遠慮しましたが。
息子が欲しいと言っていたし、札幌での最後の思い出は、楽しいものであって欲しかった。
それを形にして、たまに見て、思い出して欲しかったからです。俺がいることも。

それが、3人で笑顔で並ぶ、最後になるなんて
当然、思ってもみなかった。

俺は多分、あの観覧車には二度と乗れないし、直視も出来ないでしょう。
よく行く模型店、まんだらけ、駿河屋
全部入ってる場所なのに、俺にはもう、近づける気がしません

他県に帰った奈緒美さんからも、定期的に連絡を貰いました
息子のやんちゃぶり、妹の自己中さ
職場の愚痴、ちょっと気になる人がいてさ!

そんな話を聞くたびに
元気でよかった!
嬉しく思いました。

「何笑ってんのさ!あたしゃしんどいって話してるんだよゆうさん!?」
「わりーわりー」
「かーちゃんだれと話してるのー?ゆうさん?おれもはなしたい!」
「いーからまずその辺片付けろい!!」

変わらない奈緒美さんから
変わらず連絡がくるのが、俺は嬉しかったのです
ぼく、って言ってた息子が、俺、って言うようになったのに気づいて、成長を感じて嬉しくなったりしていました。

同居する妹さんとも、たまに話すようになりました
「姉がよくゆうさんの話をするんです」
「姉と甥が元気に帰ってくれたのは、ゆうさんのお陰と思っています」
そう言ってくれました。

その後ろで「あんた、なにはなしてんの?」と、奈緒美さんの声が聞こえてきました
「あんたの悪口にきまってんじゃん!」「はぁ!?何言ったの!?」なんてワチャワチャしたのを聞きながら、うるせぇなあ、と。
微笑ましいなあ、と。仲の良い姉妹なんだなあ。と。思って安心していました。

君たちなら、大丈夫。
きっと大丈夫。
そう思ったし、何度も、何度も伝えました。

2週間に1度くらい連絡がきて。
それがひと月に1度になり。
数ヶ月前に1度になっていきました。

便りがないのは元気ってこと。
そんなふうに思うようにしていたし
たまに連絡がくれば、やっぱりワイワイ楽しくやっているようだったので、安心ししていました。

きっと。
あの状態なら、本当に大丈夫だったんだと。
俺は思っています。

妹さんに彼氏が出来ました。
一緒暮らしたいと思っているが、それは彼氏と2人でという話でした。

気持ちは理解できるし、自然なことです。
妹さんには妹さんの幸せがあり、物語がある。

奈緒美さんも、もちろん、心良く妹を送り出す姉でした。仕事も生活も安定してきているし、1人でもやっていける採算はあると。
多くは無いけど貯金もできてるし、大丈夫と。
私の人生を、あんたに背負わせるつもりは元々無かったし、充分感謝していると。

幸せになんなよ!と。良い男みつけて、いいなー!
と。本心は寂しかったに決まっているのですが、あのオフィスで見せていたような笑顔で、妹を祝福していたんだろうなと。そう思います。

きっと、不安もあったはずなのに。

妹さんから託されました。

「ゆうさん、時折でいいので、姉を気にかけてやってくれませんか」と。

言われるまでもねぇ!
というか、気にかけてなかった時なんて、ない。
これからも、ない。安心してよ。幸せにね。

そんなことを話しました。

それからまた月日は流れ、奈緒美さんと定期的に話したり、連絡をとる日々が続きました。

ある日、はじめて。
泣いていました。

息子と喧嘩したと。
「いなくなったのが、とうちゃんじゃなくて、かあちゃんならよかったのに!!」

そう言われたと。

ズキズキと胸が痛みました。
息子は、悪くない。幼い子に、それは!!と、言って聞かせられることではないように思えました。
それはだめだよ、と。それくらいは言うかもですが。責められないな、と。

「みんな、お父さんも、お母さんも、いるはずなのに。なんでいないのって。
そんなこと言われたら。謝ることしか出来ないよわたし。」

はじめて。はじめて。
あんなに泣いていました。
すぐに行ける距離なら、迷わず行きましたが、あまりに遠かった。

おれは職人をやっていると言いました。
実家の家業です。なので、会社勤めとかではありません。
これが人からどう思われるのか、わかりませんが。

周りが全部他人の会社員なら
何を言ってでも、サボって、かけつけたろう。
そう思います。それくらい、危ういと思いました。

父親と弟が大変になる
そう思うと予定のあった日曜日すら、仕事だと言われたら俺は休むとは言いません

今ですら精神的なこと、現代的な病や個性に対して理解の乏しいところがある、頑固で古いタイプの父親に、こういう事情で、と話したところで、理解して貰えるとも思えませんでした。

それに、この先こういうことがある度に、かけつける、やって来ることは、それは絶対無理だとわかっていたからです。

何を言っても言い訳になる
それもわかってます

おれは言葉で慰めるしかできなかった。
たまに、描いた絵や、お菓子をおくってやれるくらいで。
なかなか会いに行くことが出来なかった。
実際、札幌から地元に帰った奈緒美さんに直接会ったのは、数回しかないのです。

息子さんにとっての、札幌のおじいちゃんに、2人で会いに来たときです。
空港からその家まで送り迎えするのが俺でした。
元旦那の話は聞きませんでした。
会う時は、綺麗で元気な奈緒美さんと、元気いっぱいな息子でした。

とても安心したのも覚えてたし。
仲良くてなによりだ、と思っていたのも覚えていたので。

いつか伝わると。
奈緒美さんの頑張りや、愛情はいつか伝わるからと。
人生ではじめて、真剣に、必死に人を慰めました。
いつか見た、枯れ枝のような奈緒美さんが、頭をよぎってしまったからです。

「くっそ、あのクソガキめ!」

奈緒美さんがゴソゴソしだして、写真が送られてきました
息子の寝顔にラクガキをしてました

「しかも油性」

とんでもねえ母ちゃんだわ!
とうちゃん恋しくなっても仕方ねぇわ!
そう言ったら、ひでー!ゆうさんまで!と、笑ってくれました。

「ありがとう。がんばるね、わたし。
絶対まけない、強いかあちゃんになるから」

「おまえは十分つよいかあちゃんだよ
頑張りすぎなんだよ、ばか。」

そんな会話をした夜がありました。

また、しばらく月日が流れました。

「良い出会いがあったよ」

奈緒美さんから、LINEが来ました。

「ほう、良かったじゃん!」
心底そう思う反面、最初の旦那のような人じゃないだろうな?そう思いました。

疲れて、優しくされて、妥協したとか。
ないよな?大丈夫かな?と。
失礼とは思いつつも、正直にそう聞きました。

「えーとね、ゆうさんみたいな人。たくさん話聞いてくれるよ。心を助けてくれる。息子とも仲良くしてくれてるよ。歳上なのも同じだね。でもね、ゆうさんより、イケメン」

最後のいるか!?と言ったような思ったようなそんな記憶がありますが、そうか、おれは奈緒美さんの心を助けてやれてたんだな、それは嬉しいな、素直にそう思いましたし、彼女のそばに、俺のような存在ができることを、おれはずっと願っていたので、本当によかったと思いました。

距離というのは何もかも無力にする瞬間があり、越えられない壁になることがあると、それは今も時折思う事です。
奈緒美さんが泣いた夜、弱っているのがわかってるのに、なにもしてやれない日々で痛感していたからです。

だから安心したし、嬉しかったのです
そして、これからは奈緒美さんと話すことも少なく、いつかは、なくなっていくのかもな、なんて少し寂しくも思っていたのですが。

そんなことはどうでもいい
あの子の幸せより優先されるものはない。
そう思って「結婚式には呼べよな」そう言いました

その後もたまに連絡は来ましたが
やはり頻度は少なくなりました
それは当然と思っていたし、自分の手から離れた感覚はありましたが、それは喪失感のような、悲しい感覚では無かったので、気にはなりませんでした。

たまにあの笑い声と、笑顔を
親子と妹でわーわーやってるのを聞いていた
それを思い出して、少し笑って。
俺も頑張ろうと、日々を暮らしていました

「ゆうさんみたいな人」

その言葉に、なぜあんなに安心してしまったのか。
それは、俺が俺を知っているから、絶対にあの子を、人を傷つけるようなことはしないからと知っていたからです。

ある日奈緒美さんから、LINEが来ていました

「ゆうさん、わたしもういやだよ」

すぐに電話しましたが、出ません。
何度もしました。
何度目かに出た奈緒美さんは泣いていました。

彼氏がいなくなっちゃったと。
お金もずいぶんなくなっちゃったと。
またやっちゃった、と。

自己責任だ、ばか!と。
俺には言えませんでした。
だって「ゆうさんみたいな人」だから
そう思ったからこの子はその相手を信用した。

仲良くやっていたそうです。
ずっと仲良く。
結婚したいね、話していたそうです。
その辺は、たまに惚気として聞いたことがありました。

だから俺も安心していた。

そしてある日、子供が出来たそうです。

そこから彼氏が変わったそうです。
産むなと。結婚は、まだしたくない、と。
そう言われたそうです。

1人で息子を育ててきた奈緒美さんです。
悩みに悩んだそうです。

まだ幼い息子と、新しい命。
この男が本当に逃げるのなら
というより、もう今の段階で信用しちゃいけないし
あてにもできない。
わたし1人でやっていくのを考えなければいけない。

そう思い、悩み。
それでも。
その男と話し合いを続けたそうです。

「今はまだ結婚したくないだけ、いつかはしたいよ。でもそれを信じてくれないオマエと、一緒になんて居られないだろ。信用してないのは、おまえだろ。
子供はまた作れるし。なんで今産まなきゃだめなの?1人でも大変なのに。」

そんなことを言われたそうです。
隣にいたら、目の前にいたら。
そのクズを八つ裂きにしてやったのに。
そう思いました。怒りに震えたのを覚えています。

奈緒美さんの心はここで1度折れました。
新しい命に、たくさんたくさん謝って。
ごめんね。でも、幸せにする自信が無いよと。
ごめんねと。

産むのを諦める選択をしたそうです。

結局男はいなくなりました。
お金も何も出さずに。いなくなったそうです。
無知で無力な俺は何もしてやれず。

明確な殺意と。
罪悪感が残りました。

けれど俺のことはどうでもよかった。
奈緒美さんの明日が全てでした。

妹さんと連絡を取りました。
奈緒美さんには、妹には絶対話さないで、そう言われたのに。

俺は迷いなく、約束を破りました。
話を聞いたその日に破りました。

それが、奈緒美さんにとって
本当に望まないことなのはわかっていました
幸せな妹に迷惑をかけられない
心配をかけたくない

聞かなくても、そうだろうと思いました
俺もきっと、そう思うから

けれど、俺はそばにいないから。
行けないし、居続けられないから。
今近くに行ける人間が、必要だと思ったから

妹さんは、怒って、泣いてました。
ありがとうございますと。
すぐに姉の所へ向かいます、と。

それからしばらく。
奈緒美さんから連絡は来ませんでした。

けれど、毎日顔を見に行っていた妹さんから連絡を貰っていました

少しずつ、回復しているみたいです。

少し笑ったりする時間も長くなってきてるようになりました。

ゆうさんがわたしに、その日のうちに話したことは、あまりよく思ってないようです。

そんな話を聞きました。

逆の立場なら同じことしたでしょう?と話しても
今はまだ、聞く耳がないようです、けれど
また連絡する日も来ると思いますので、心配するとは思いますが、今はそっとしてあげてください。

そう言われました

別に怒ってもいいし嫌われてもいいから
ただ奈緒美さんが生きているなら、笑える日々を取り戻せるなら、それでいいと思っていたので

妹さんから来るその安否確認のようなLINEでおれは満足していました

また時間が経って

「ゆうさん、心配かけてほんとうにごめん」

奈緒美さんから連絡がきました。
気にするなと、先にも述べたようなことを伝え、奈緒美さんと、息子、妹が笑えるなら、おれはなんでもいいんだよ、どんな役目でもいいんだ、と。
話しました。

「ゆうさんも、嘘つくのか、って。優しい嘘なのに。わかってるのに。わからなくなって。ごめんなさい。」

そんなことを言ってました。
気にするなと何度も言い。

また、少しづつ話すようになりました。

「私からしたら、アイツと出会う前の生活に戻っただけだし、まあ、大丈夫よ」

時間が経ち、そういうことを言うようになって、少しづつまた俺も、安心ししていきました。

そんなある日
妹さんからLINEがきました。

「甥の葬儀に参列してもらえますか」

震える手で、電話して聞きました。
当然、妹さんは泣いていました。

姉はあれから、心配になるくらい働いていました
心が大丈夫でも、身体壊すよって。何度言っても。
大丈夫、私負けないから、と。

あの、ばかやろう。
そう思いました。

ある日息子と公園に出かけていたそうです。
奈緒美さんはベンチで息子が遊ぶのを眺めていたそうです。
そして、疲れていたのでしょう。眠ってしまった。

事故の音で、目が覚めたそうです。
公園の周りを自転車でレースして遊んでいた息子が、トラックに跳ねられたそうです。
ヘルメットも、眠る奈緒美さんの隣りに置きっぱなしになっていたそうです。

奈緒美さんは、壊れました。
彼女はなにもかも、拒絶しました。
自分を責め続けました。

死にたい。
終わりたい。

そればかり、それしか言いませんでした。
それでも、LINEが届く限り、声が届く時は声で
俺なりに励まし続けました

けど、救えなかった。
おれは、救えなかったんです。

奈緒美さんから。
最後に来たLINEです。

ゆうさん
生きる意味も目的も自分のせいで失ったよ
大切な息子の未来も、私が奪った
なんでこうなっちゃったのかな
わたし、どこでまちがったのかな
たくさん、頑張ったよね?
もう、わらえないよ
じぶんを、ゆるせないよ

ゆうさん、ごめんね
ゆうさん、たくさんありがとう
ゆうさん、だいすきでした

すぐに何度も電話しました
出ませんでした

妹にも電話しました
夜中に、何度も何度も

妹が家に行っても、奈緒美さんは居なかったそうです

たのむから
たのむから

それしか俺は思えなかった。
思うことしか出来なくて。
なにも、なにもできなかった。

数日後。
訃報が、届きました。

おれは自分が許せない。
死んだあいつも許せない。

あいつを不幸にした連中を、ゆるせない
そいつらが、笑って今日を生きるのを
俺は許せない

でもそいつらに
じゃあお前が、幸せにしてやればよかったろ
そう言われたら俺は何も言えないだろう

殴ることは出来ても
殺すことは出来ても
きっとそれは、ただの八つ当たりなんだって

そんな俺が許せない

救えたかもしれない
それは、色んな場面、タイミングで
手を取れたかもしれないのに

あのとき、ちょっと一緒に頑張ってみるか?
そう言うだけで、なにもかも変わっていたかもしれないのに

女性にたくさん裏切られてきました
一定の距離、それは心、気持ちの話ですが
近づくのが怖くなってしまった

友達としてなら
なんでもできる
するから、それ以上は、こわいから 
線を引いていました

怖い、たったそれだけで
何もしなかった、できなかった
逃げて閉ざして、避けてきた
見て見ぬふりをしてきた

そんな俺が許せない

奈緒美さんを心配する日々の中

そんな弱虫な俺にも安らぎがありました

心配と不安で
いつもどこか落ち着かない
眠れない日々を過ごしていた時に

仲良くしてくれた女性がいました

俺のコンプレックスを聞いても優しく受け止めてくれました
俺のトラウマを聞いた時、たくさん一緒に泣いてくれました

はじめて、トラウマを人に話しました
話せたことそれ自体が、奇跡だと思いました

共に、話し、遊び、笑い合う日々
過ごす時間を経て

ずっと、そばにいてくれると、言ってくれました
トラウマが出来てから十数年、はじめてそれを溶かしてくれた人でした

あっという間にです
それも、理由は俺にはわからないけれど

ある日その子が、運命の人だと言ってくれました
おれも、心からそう思いました
そうか、なにもかも、越えていける理由はそれなのかと、馬鹿みたいに思って喜んでいました
色んな偶然、一致が、それを強く確信させていきました

この人と、一緒になりたい、なろう
そう思いました
相手も、そう言ってくれました

あの子や、その妹、友達がいたから
俺は俺を保てていました
そして、たくさん、笑えました

今のこの俺を、毎日笑わせてくれる彼女が
本当にすごいと思いました
嬉しかったし、救われていました
俺の宝物だと思っていました

そして貰った元気や、力を
おれは奈緒美さんに届けたかったし
届けようとしました

電話に出なくても
LINEに返信が無くても
めげずに、折れずに
励まし続けました

俺からのLINEを見ている時
すこし笑顔になることがあるみたいだと
妹さんから聞きました

もっと笑え
頑張って笑えよ、と
そしていつか、また連絡してこいよと
俺は毎日、奈緒美さんと、妹さんを励まし続けました

だけど救えなかった

奈緒美さんはいなくなりました
救えなかったんです

そして訃報が届いた数日後
俺は最愛の人に、急に徹底的に拒絶され
去られてしまいました

理由は、今もわかりません
いなくなる数日前、いや、その日の朝まで、いつものその子でした

少なくとも、俺はそう思っていました

けど、俺が甘えていたんだと今は思います
俺の弱さ、小ささからはみ出したなにかを感じ取って、背負わせてしまってたんだと
耐えきれなかったあの子を俺は責められない

でも多分、これは俺の妄想なんです

ただ遊ばれていた
結果他の男を選んで、捨てられた
飽きられて、捨てられた
面倒くさくなって、捨てられた
多分そのどれかが、いちばん真実に近いんです

情けなさに吐き気がする

俺がキレずに耐えているのは
君の妹が、俺を助けてくれているから
ただそれだけなんだからなと
それだけは、言いたい

同じ人間とは思えない
また、トラウマができちゃったなと
そう思っています

俺はいつもこうだから
だから、恋愛なんてしたくなかったのに
そんなふうにしか、思えない

奈緒美さんのことも、話せばよかったのかと
素直に1人じゃ不安だと言えばよかったのかと

背負わせられないと
これは俺の問題なんだから
そう思っていました

俺が元気じゃないと悲しいんだからね
そう言ってくれてたから
この子の前では、元気でいなくちゃならないと

強がって、間違えた
真実はもう、わからないけれど
なにも、もう、言ってくれないから

おれは
ずっとずっと
トラウマを抱えたあの頃から
なにもかも間違えて
なにもかも失いました

奈緒美さんの息子を失った喪失感と
比較するようなことではない
それはわかっています

俺が奈緒美さんを失ったことと合わせたって

比べることでは無い
そもそも比べるという行為が間違っている
それも分かっているけれど

けれど、あいつは、奈緒美さんは
こんな気持ちの中、頑張っていたのか
こんな、真っ暗な世界を、ひとりで

唯一の光、希望も、突然失って
その悲しみを抱えながら、過ごしたのか

そう思ったら
負けたアイツを
諦めたアイツを

おれは怒れない

訃報を受け取って
許せないと思いました
優しい妹を泣かせたことがです

わかってるのか
妹は、世界に肉親がいなくなったんだぞ
たくさん、泣いてるんだぞって
そう思って、許せなかったのに

今自分が
喪失感と無力感に潰されて
負けていく日々の中で
諦めそうになっている自分と出会って

おれは、おれも
楽になりたいと思っている

くたばったところに
奈緒美さんがいるなら
それでいいんじゃないかって

叱りあって
謝りあって
もう、何も考えないで
のんびりできるなら

もう、それでいいんじゃないかって

そう思ってしまってる自分が許せないし
その自分が怖くて仕方ない

負けたくないのに

力が出ない
立ち上がれない

手を取って欲しい人も
何も言わずに消えてしまって

こんなことしかない世界なら
生きているのはたしかに辛いよな 
って、思ってしまう

けれど
それでも

俺を助けようとしてる人がいる
心配してくれてる人がいる

こんなのは間違えてるのかもしれないけれど

その人たちを裏切れない
俺が今日を生きている理由は、それだけなんです

あの人たちを泣かせられない
裏切れない、心配かけたくない

それだけで生きている

俺が奈緒美さんに「生きて」と思っていた時
理由なんてなんでもいいと思っていた
なにか死ねない理由があるなら、それはなんだっていいと

生きる理由なんて無くてもいいんだと 
死ねない理由があるなら、死ぬなって 
そう思って泣いていました

自分のために生きるのは
今の俺には無理だから

友達を言い訳にしている
きっとそれでいいって
言ってくれると、勝手に甘えてる

そんな情けない俺も
本当にいやで
許せない

こんなに弱いから、何も救えないんだ
なにもつかかみ取れないんだって
そう思ってしまうんです

どうしたら、立ち直れるのか分からないんです

死にたくないのに
生きたくない

たすけが、ほしい。

絶対、負けたくないんです。










さいごに。

なぁちゃん
本当にごめんな
辛かったね 
苦しかったね
たくさん、SOS出してくれてたのかな
おれ、その時気づけてたのかな

おまえが、おれが、もうすこし素直で
もうすこしわがままで
もうすこし勇気があったら
おれが、もっと、強かったら

「たらとか、ればとか、そういうの少ない人生にしたいよな」って話してたの覚えてるか?
おまえも、おれも、今となってはそればかりだよな。

本当にごめんな。
俺がきっと、いちばんおまえを救えた

おまえの気持ちにも、どこかきづいていたのに
でもそれは、どこまでいっても
兄貴分、妹分、それは越えないし、越えられないって思ってたんだよ

それを越えて、上手くいかなかった時
俺のトラウマを聞いたお前は
罪悪感を持つってわかってたから

きまずくなって、俺に頼れなくなるって
そう思ったから、おれは、それなら
今のまま、おまえと、れおんを幸せにしてくれる人ができるまでを、見届けられたら
それでいいと思ってたし、そうしようって、思ってたんだよ

そう、言えばよかったのかな
そもそも、上手くいかない未来を、怖がった
やっぱりそれは俺の弱さだよな、ごめん

それにしても、おまえさ
だいすきなんて
俺に向かって、どんだけ酔ってたって言ったこと無かったろう

死ぬ前に言うくらいなら
もっと早く言えっつぅんだよ
遅すぎるんだよ、ばかやろう

でもきっと、そう言われても
弱ってるからだって、決めつけて
逃げる言い訳にしてたんだろうな 俺は

その結果
馬鹿みたいにさ
また、自分勝手な女に泣かされてるよ

また大口開けて笑ってくれよ 
たのむから。俺を笑ってくれ
そしたらすげぇ、楽なのにさ

なんでいないんだよ。
信じられねぇよおまえ。

ゆっくりやすめよ。
れおんを、たくさん抱きしめてやれよ。



れおん

おまえも、ばかだぞ。
よくなかったな。
ちゃんと、ルールまもれっていったろ。

間違ってもいいけど、かあちゃんが怒れることしかするな 
泣かせるなよ。
そうやくそくしたろ?

二度と、かあちゃん泣かすなよ
まーちゃんも、泣いてたからな。
会ったらまず、ちゃんと謝ること。

ゆうさんは、もう怒ってないから大丈夫。
ただ、寂しいよ。
おまえに、男は簡単に泣くなって言ったのに。
俺最近泣いてばかりだ。だめだな。

かあちゃんと一緒にいられてるか?
ゆうさん、かあちゃんまもってやれなくて
本当にごめんな。

かあちゃん、おまえいなくて、さみしかったんだってよ。
だからもう、ゆるしてやってくれな。

まーちゃんに聞いたよ。

お墓があるんだってな。

ゆうさん、会いに行くから
おまえに自慢しようと思って買ったベイブレード
たくさん持っていくからさ。

そのときは、かあちゃん、無理やりでも連れてきてくれな。
ぜったいぜったい、逃がすなよな。

少し怒るかもしれないけど。

また3人か、まーちゃんも入れて4人かな。
少しだけ、一緒に穏やかな時間過ごそうな。

2人とも、弱い俺でごめん
俺が死んだら

おまえらも、悲しいよな
きっと、怒るよな
まーちゃんも悲しむし

ゆうさんの友達も、怒るよな
悲しむし、泣いちゃうかもしれないよな

ゆうさんの、家族も、仲間も 
悲しむよな

生きる理由はわかんないけど
おまえ達と、大切な人達のために

悲しませたくない
それだけを、今は死なない理由にさせて欲しいよ

会いたい
会いたいけど
まだ会いに行くわけにはいかない

なぁちゃん、女って難しいな

いつかわたしがゆうさんの恋バナ聞いてあげますよ
そのかわり毒舌だから覚悟してくださいね
って言ってたじゃんか

今の俺見たら、なんて言うのかな?
ゲラゲラ笑うか?また、あの変な笑い方で。

おまえのせいでもあるんだからな
って、俺は怒るからな。
やつあたりだけどな。ただの。

そんなことも、もうできないんだぞ。

たくさん、聞いて欲しい話あるのに
おまえが元気になったら
たくさん話そうって思ってたのに

いなくなるのは、ないだろう

ずっとずっと
10年そこいら、俺ばかり聞いてさ
俺が聞いて欲しい時にいなくなってるなんて

そんなのってないぞおまえ
そんなの、ずるすぎるだろ

そっちに行ったら
死ぬほど聞かせてやるからな

おれが、どんだけ楽しく生きたかをさ
恋バナはもう、さすがに無理だと思うけど

いいなー、って
おまえを後悔させてやるから

まあ、女だけが人生じゃねぇからな
これもおまえ、めっちゃ笑いそうだけど

笑ってろよ
2人で笑ってみてろ

ゆうさん、変わらないねぇって
ずっと言って、思って、見てろ

そうだそうだ

俺の友達、世話になった人
何人かそっちにいるからさ
みんな、素敵な人だから
そいつらと仲良く、俺のこと見ながら笑ってろよ

れおん、誰が何言ったか
ちゃんとメモしておくんだぞ

ゲロ吐いて、泣きながらでも。
絶対に前に進むの諦めないから。

助けてもらいながら
情けなくても
死にはしない、約束したし
約束するからさ

がんばるよ、おれ。
負けたくないんだ

みんなのために

いまはそうやって
生きるからさ



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