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【小説】SNSの悪夢

マンションから出て、女が走っている、立花は付けるために家から出て走った、家に居るといつもジョギングの格好だから、走っても不思議じゃない。

たぶん仕事に行くんだろう、そう考えていても女に付いて行く、今に自分の仕事なのだ。

小走りの女に近づき過ぎない様に、ゆっくりとペースを取って走ってゆく、仕事に行くのに走るんだな。

もっと早く家を出たらいいのに、自分だったらと自分に置き換えてみる、他人を非難する気はないが、こんな事だから文句ばかり言いたくなるんだ。

立花は、何時の間にか自分が人を非難する側になっているのには、気付かないでいた。

明らかな目標を見つめていた時期には考えていなかったのに、目標が失われると、他に目が行ってしまう。

本来、人間は冷静に自分を見つめる目を持たない、他人と比較して確認することは有っても、自分自身を見据えるのは出来ない。

出来ないのではなく、したくないと言って良いのかも知れない、見つめ直すのは覚悟が居るのだ。

『よし、入って行った。』ここに居てSNSに発信しているのを確認する、その上で問題行動を見つけて出していこう。

ゴミの分別をして無いとか、指定の日に出してないでも何でもいい、人間は何かで問題を起こす。

それは大きいことかも知れないし、小さいことかも知れない、分らないが何にも問題なく暮らしている人間は居ない。

人は何かで誰かに迷惑を掛けているのものだ、人間が暮らしていくと云うのは迷惑の擦り合わせなのだ。

実際、この女はSNSで迷惑投稿を繰り返している、でもそれだけじゃ弱い、現実的に問題がある所を見つけて、投稿してやりたい。

中に有る無料の喫茶コーナーに行って、自販機でコーヒーを出す、コーヒーは贅沢に豆を挽いて飲みたいが、自販機のコーヒーしか飲めない時期も有ったのだと思い返す。

家で飲むつもりで買ったコーヒーメーカーも処分した、楽しみも無く仕事をしてやっと手に入れた寛げる我が家なんて、直ぐに失うんだ。

コーヒーを飲みながら、あの女がレジに入って仕事をしているのを見ていた。

何だかコメツキバッタみたいに頭を下げている、これまでは気付かなかったが、あそこに居る女性は皆頭を下げる。

そう指導されているのだろう、いらっしゃいませ、ありがとうございます、その都度頭を下げる。

並んでいるレジは頭を下げる人形が展示されて居る様にも見える、感情の無い人形が並んで挨拶をしている。

スーパーは何故全部セルフレジにしないんだろう。

ボンヤリとそう考えていた。


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